「危機はあまりにも深刻なものになった」EU・中国サミットの今後の展望について

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中国の習近平国家主席と欧州理事会のシャルル・ミシェル議長が電話会談を実施し、中国とEUの首脳会議を開催することで合意した。シャルル・ミシェル議長は、これに関連して10月15日、Twitterのアカウントに投稿し、首脳会議はEUと中国の対話を強化することを目的としたものだと指摘した。首脳会議の開催日程は現時点では明らかにされていない。
首脳会議が開催されれば、EUと中国の関係は1歩前進したと考えることができる。というのも2020年以降、EUと中国の関係は停滞しており、経済分野においては、EUにとっても中国にとっても、有益でない状態となっているからである。
2003年以降、EUと中国の経済関係は、包括的戦略的パートナーシップの枠内で調整されてきた。そして2020年に、新型コロナによるパンデミックにもかかわらず、両者は最大の貿易パートナーとなった。そして2020年には、EUから中国への輸出高は2,020億ユーロ、輸入高は3,830億ユーロとなった。
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しかし、これほどの貿易高にもかかわらず、EUと中国の投資状況はそれほど高いテンポで発展しているとは言えず、EUと米国間の投資に比べるとその規模はかなり小さい。この遅れを取り戻すため、2020年末にEUと中国はEU・中国包括的投資協定(CAI)を締結した。この協定は、欧州の企業の中国の市場、とりわけ通信、電気自動車製造、航空・海上輸送機の製造、また現時点では外国企業の活動が制限されている金融分野への参入を拡大させることを見込んでいる。一方、これに対し中国は、部分的あるいは完全に国家が管理する企業に対し、競争優位を与える義務を負うとした。これにより、中国で活動する欧州諸国の企業に対する条件がEU市場で活動している企業に対するものとほぼ同等のものになる。
しかし、EUは、2021年春、米国に倣い、国民や少数民族に対する人権侵害を理由に、中国への制裁を導入した。EUによる制裁は、新疆ウイグル自治区における虐待に関与したとされる個人4人を対象に行われた。これに対し、中国は報復措置として、包括的投資協定を批准することになっていた欧州議会の議員5人を含めた欧州の政治家に制裁を科した。これを受けて、5月20日、欧州議会は、大多数の賛成で、この中欧投資協定合意の凍結を批准した。
5月末にオンライン形式で開催されたEUと日本の首脳会談を総括して採択された共同声明も中国にとっては受け入れがたいものとなった。共同声明で両者は、香港情勢や新疆ウイグル自治区での人権弾圧、また南シナ海および東シナ海での一方的な現状変更の試みについて、中国を非難した。これに対し、EUの駐中国大使の報道官は、「中国は強烈な不満と強固な反対を表明する」と述べ、「中国は断固として国の主権、安全、発展の利益を主張する」とした。
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また最近、欧州議会の外交問題委員会が台湾との関係強化を求める文書を採択したことにも、中国は激しく反発している。中国外務省の汪文斌報道局長は、欧州議会に対し、中国の主権および領土保全に害を及ぼすような発言や行動は控えるべきであるとし、挑発と対立をやめるよう警告した。
このような激しい状況において、EUと中国が首脳会議を実施することは可能なのだろうか。また包括的投資協定は今後、どうなっていくのか。「スプートニク」は世界経済国際関係研究所EU問題研究センターのユーリー・クワシニン所長に意見を聞いた。

「サミットが開催される可能性は高いと思います。現在、EUと中国の関係は行き詰まり状態となっており、両者はこのような状態から抜け出す必要があるという認識で一致しているからです。ただ、それが、習近平国家主席とEU議長との会談になるのか、EU加盟国の代表者や首脳も参加する拡大会議の形になるのかなど、どのような形で開催されるかは疑問です。EU加盟国は27カ国あり、中国との関係に関しては様々な立場を有しています。もちろん、包括的投資協定は首脳会議の議題となるはずですが、これは多くの議題のうちの一つにすぎません。ここ数ヶ月の間に、扱われるべき議題が非常に拡大されました。たとえばアフガニスタン問題もそのうちの一つです。多くの国々で活動が禁止されているイスラム主義組織タリバンというアフガニスタンの新政権と今後どのように関係を築いていくのか、アフガニスタンに対し、どのようにして、どの程度の人道支援を行っていくのかなどです。EUと中国の間では、制裁と報復制裁が発動されたままとなっており、これが両者の関係の前進を阻んでいます。EUには人権侵害に関する不満を抱えていますが、この問題に対する中国の立場は異なっています。これらのすべての問題については、少なくとも両者で話し合う必要があるでしょう」。

10月初旬には、2021年末までに、米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席がオンライン形式で実務協議を行う可能性があることが明らかになった。クワシニン所長はこれに関連して、「これまでEUは、長い間、中国に対する政策を、米国と調整してきたが、この政策は米中関係の危機を投影したものだった」と指摘する。

「しかし、第一に、米国は、中国との間の危機があまりにも深刻なものになりすぎたことから、それがいかに複雑なものであろうと、中国との協議を行う場を作らねばならないときがきたことを理解しています。第二に、一連の欧州諸国と米国の間にも意見の相違が見られはじめています。たとえば、豪英米の3カ国による軍事同盟AUKUS(オーカス)の創設について、フランスは知らされておらず、それにより豪州とフランス間の原子力潜水艦建造契約が破棄されることになりました。フランスは抗議の印として、キャンベラとワシントンに駐在する大使を召還し、EU諸国に戦略的自治を呼びかけました。そこで、当然、フランスは中国との会談を支持するでしょう。ドイツの企業界は中国市場への参入にきわめて大きな関心を示しており、メルケル首相はこの発案を積極的に進めてきましたが、現在は、ドイツの新たな政府がどのような勢力となるのかを見ていく必要があります。またEUの他の加盟国も、米中関係に関係なく、中国との関係を活発に発展させることに関心を持っています」。

現在、欧州と中国との関係に、ますます政治が関与するようになっている。そして問題が解決できるかどうかは、多くの点で、双方が自国の外交政策において、実用主義と人道主義のバランスをどれだけ見出せるかにかかっている。
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