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開催されなかったかもしれないオリンピック:東京2021を振り返る
開催されなかったかもしれないオリンピック:東京2021を振り返る
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開会式の瞬間まで、開催できないのではないかと思われた日本での夏季五輪は、2021年のもっとも大きな出来事の一つとなった。 2021年12月2日, Sputnik 日本
2021-12-02T19:18+0900
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2021-12-02T19:58+0900
ワクチン戦争、新たな変異株、オリンピックに新首相 スプートニクが1年を総括
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開会式の瞬間まで、開催できないのではないかと思われた日本での夏季五輪は、2021年のもっとも大きな出来事の一つとなった。今大会の最大の成果は、新型コロナウイルスの感染拡大やそれに伴うさまざまな困難にもかかわらず、最終的に開催できたということに尽きるだろう。競技は厳格な感染予防対策の下で行われ、ほぼ無観客での開催となった。しかしそれ以外の点では、勝利したときの喜び、負けたときの悔しさ、驚くべき記録、大きなスキャンダルなど、すべては通常の大会と変わらなかった。抗議行動と菅前首相の支持率への影響2021年春の時点で実施された世論調査では、回答者の43%が大会の中止を求め、40%が1年の延期を支持すると答えた。ソーシャルネットワーク上には、政府や国際オリンピック委員会(IOC)に対する批判のコメントが相次ぎ、五輪のスポンサーが、政府に対し、中止や延期を要請する事態にもなった。外国人選手らが日本を訪れることにより新型コロナの感染状況が悪化するのではないかという懸念と、中小ビジネスが大きな影響を受けた制限措置や緊急事態宣言により、人々の間には大きな不満が噴出し、それは抗議行動の形となって現れた。五輪の開催期間中、感染者数は記録的なものとなりつつも(8月5日の東京の新規感染者数は5,042人となった)、幸い、状況の悪化は免れたが、総じて、状況は厳しい管理下に置かれていた。菅前首相は懸命な努力をしたが、結局はキャリアを犠牲にすることとなった。不適切問題スキャンダルはオリンピック開催前から始まった。まずは、女性に関する不適切な発言により、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長が辞任に追い込まれた。これに続き、大会の開閉会式の演出を担当していたクリエイティブ・ディレクターの佐々木宏氏が、女性タレントの容姿を侮辱するような「オリンピッグ」という駄洒落のキャラクターを考案し、これも社会から批判にさらされた。さらに、開会式の楽曲の作曲を担当することになっていたミュージシャンの小山田圭吾氏が、かつてのインタビューの中で同級生や障がい者に対するいじめについて告白していたことが判明し、社会からの非難を浴び、辞任を発表した。女子選手たちのドラマベラルーシの陸上代表クリスティーナ・ツィマノウスカヤ選手は、コーチ陣から参加を取りやめるよう言われ、帰国させると通告された。その理由は、ドーピング検査のサンプルがなく、失格となった他の選手に代わってリレーに出場するよう求められたツィマノウスカヤ選手がこれを拒否したためだとされる。空港で、ツィマノウスカヤ選手は航空機への搭乗を拒否し、日本の警察と国際オリンピック委員会に支援を求め、欧州のいずれかの国への政治亡命を希望する意思を明らかにした。ロシアひいては世界の新体操の「スター」、ディーナ・アヴェリナ選手は、予選を1位で通過しながらも、個人総合で銀メダルに終わった。金メダルに輝いたのはイスラエルのリノイ・アシュラム選手だったが、アシュラム選手はリボンの演技で手具を落下するという大きなミスを犯したことから、ロシア代表チームはこの結果に猛抗議した。しかし、国際新体操連盟はいかなる偏見も不正もなかったとの声明を表した。またニュージーランドのウェイトリフティングのローレル・ハバード選手も大きな議論を呼んだ。ローレル・ハバード選手は、35歳まで出生名ギャビン・ハバードとして、男性選手として競技を行っていた。しかし2012年に性別を変更し、東京五輪では女性選手として出場した。この五輪大会では最下位となったが(ストレスのせいだったのではないかとも言われる)、初のトランスジェンダー選手として歴史に名を残すこととなった。ドイツの女子アニカ・シュロイ選手は近代五種女子で首位に立っていた。しかし、馬術で馬がシュロイ選手の指示に従わず、いくつかの障害を跳ばなかったため、シュロイ選手は馬を操ろうと泣きながら鞭で馬を打った。最終的にシュロイ選手は金メダルを逃し、涙ながらに会場を後にした。そしてこのことは動物虐待問題として大きな波紋を呼んだ。これを受け、国際近代五種連合(UIPM)は、2024年のパリ五輪の前に、馬術競技を自転車競技に変更すると決定した。残念なスタジアム建築家の隈研吾氏が東京五輪のために特別に設計した国立競技場は、最大80,000人を収容することができるものであったが、結局、外国人はもちろん、日本人の観客も受け入れることはできなかった。開閉会式ですら、観客席には国際オリンピック委員会や各国オリンピック委員会の関係者など1,000人ほどが座っただけであった。五輪大会には、209カ国から1万1,000人以上の選手が参加した。出場選手の中で最年少は、12歳の卓球のシリア代表、ヘンド・ザザ選手。オリンピックでのデビューは結果を出すことはできなかったが、これからの活躍が期待される。最年少の金メダリストは13歳のスケートボードの西矢椛選手。東京五輪から新競技となったスケートボードの女子ストリートで金メダルを獲得した。一方、出場選手の中で最年長だったのは、馬術のオーストラリア代表、66歳のメリー・ハンナ選手で、東京五輪が6回目の五輪出場となった。環境と経済今回、東京五輪が掲げた大きなテーマの一つが「環境」であった。このテーマは、選手村のベッドやメダルにも反映され、選手たちのベッドは、リサイクル可能な段ボールで作られた。これに関しては、数多くのジョークが飛び出したが、実際には段ボールは非常に頑丈で、アイルランドの体操選手は、ベッドの上で飛び跳ねる動画をインターネットに投稿し、このことを証明した。他の選手たちも同様の「テスト」を行った。一方、今大会のメダルもリサイクル金属で作られた。2017年に、全国各地から携帯電話や小型家電の回収を開始し、2年間で実に携帯電話だけでも600万を超えた。そこからおよそ30キロの金、数トンの銀と銅が作られたとのこと。ほぼ2年前には国外からの外国人の入国をほぼ制限し、コロナによって疲弊した日本であったが、自らの力を信じるエネルギッシュでオープンな21世紀の日本の勝利として思い描かれた東京五輪をなんとか開催にこぎつけることができた。リスクや不安を抱え、多くの国民からの反対を押し切り、きわめて異例の形でなりながらも開催を決めた日本政府には感謝すべきではないだろうか。今回の日本の経験が、2022年の北京冬季五輪、2024年のパリ夏季五輪にも活かされ、これらの大会が満員の観客とマスクなしで開催されるよう期待したい。
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開会式の瞬間まで、開催できないのではないかと思われた
日本での夏季五輪は、2021年のもっとも大きな出来事の一つとなった。
今大会の最大の成果は、新型コロナウイルスの感染拡大やそれに伴うさまざまな困難にもかかわらず、最終的に開催できたということに尽きるだろう。競技は厳格な感染予防対策の下で行われ、
ほぼ無観客での開催となった。しかしそれ以外の点では、勝利したときの喜び、負けたときの悔しさ、驚くべき記録、大きなスキャンダルなど、すべては通常の大会と変わらなかった。
2021年春の時点で実施された世論調査では、回答者の43%が大会の中止を求め、40%が1年の延期を支持すると答えた。ソーシャルネットワーク上には、政府や国際オリンピック委員会(IOC)に対する批判のコメントが相次ぎ、五輪のスポンサーが、政府に対し、
中止や延期を要請する事態にもなった。
外国人選手らが日本を訪れることにより新型コロナの感染状況が悪化するのではないかという懸念と、中小ビジネスが大きな影響を受けた制限措置や緊急事態宣言により、人々の間には大きな不満が噴出し、それは
抗議行動の形となって現れた。
五輪の開催期間中、感染者数は記録的なものとなりつつも(8月5日の東京の新規感染者数は5,042人となった)、幸い、状況の悪化は免れたが、総じて、状況は厳しい管理下に置かれていた。菅前首相は懸命な努力をしたが、結局はキャリアを犠牲にすることとなった。
スキャンダルはオリンピック開催前から始まった。まずは、女性に関する不適切な発言により、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長が辞任に
追い込まれた。
これに続き、大会の開閉会式の演出を担当していたクリエイティブ・ディレクターの佐々木宏氏が、女性タレントの容姿を侮辱するような「オリンピッグ」という駄洒落のキャラクターを考案し、これも社会から批判にさらされた。さらに、開会式の楽曲の作曲を担当することになっていたミュージシャンの小山田圭吾氏が、かつてのインタビューの中で同級生や障がい者に対するいじめについて告白していたことが判明し、社会からの非難を浴び、辞任を発表した。
ベラルーシの陸上代表
クリスティーナ・ツィマノウスカヤ選手は、コーチ陣から参加を取りやめるよう言われ、帰国させると通告された。
その理由は、ドーピング検査のサンプルがなく、失格となった他の選手に代わってリレーに出場するよう求められたツィマノウスカヤ選手がこれを拒否したためだとされる。空港で、ツィマノウスカヤ選手は航空機への搭乗を拒否し、日本の警察と国際オリンピック委員会に支援を求め、欧州のいずれかの国への政治亡命を希望する意思を明らかにした。
ロシアひいては世界の新体操の「スター」、ディーナ・アヴェリナ選手は、予選を1位で通過しながらも、個人総合で銀メダルに終わった。金メダルに輝いたのはイスラエルのリノイ・アシュラム選手だったが、アシュラム選手はリボンの演技で手具を落下するという大きなミスを犯したことから、ロシア代表チームはこの結果に猛抗議した。しかし、国際新体操連盟はいかなる偏見も不正もなかったとの声明を表した。
またニュージーランドのウェイトリフティングのローレル・ハバード選手も大きな議論を呼んだ。ローレル・ハバード選手は、35歳まで出生名ギャビン・ハバードとして、男性選手として競技を行っていた。しかし2012年に性別を変更し、東京五輪では女性選手として出場した。この五輪大会では最下位となったが(ストレスのせいだったのではないかとも言われる)、初のトランスジェンダー選手として歴史に名を残すこととなった。
ドイツの女子アニカ・シュロイ選手は近代五種女子で首位に立っていた。しかし、馬術で馬がシュロイ選手の指示に従わず、いくつかの障害を跳ばなかったため、シュロイ選手は馬を操ろうと泣きながら鞭で馬を打った。最終的にシュロイ選手は金メダルを逃し、涙ながらに会場を後にした。そしてこのことは動物虐待問題として大きな波紋を呼んだ。これを受け、国際近代五種連合(UIPM)は、2024年のパリ五輪の前に、馬術競技を自転車競技に変更すると決定した。
建築家の隈研吾氏が東京五輪のために特別に設計した国立競技場は、最大80,000人を収容することができるものであったが、結局、外国人はもちろん、日本人の観客も受け入れることはできなかった。開閉会式ですら、観客席には国際オリンピック委員会や各国オリンピック委員会の関係者など1,000人ほどが座っただけであった。
五輪大会には、209カ国から1万1,000人以上の選手が参加した。出場選手の中で最年少は、12歳の卓球のシリア代表、ヘンド・ザザ選手。オリンピックでのデビューは結果を出すことはできなかったが、これからの活躍が期待される。最年少の金メダリストは13歳のスケートボードの西矢椛選手。東京五輪から新競技となったスケートボードの女子ストリートで金メダルを獲得した。一方、出場選手の中で最年長だったのは、馬術のオーストラリア代表、66歳のメリー・ハンナ選手で、東京五輪が6回目の五輪出場となった。
今回、東京五輪が掲げた大きなテーマの一つが「環境」であった。このテーマは、選手村のベッドやメダルにも反映され、選手たちのベッドは、リサイクル可能な段ボールで作られた。これに関しては、数多くのジョークが飛び出したが、実際には段ボールは非常に頑丈で、アイルランドの体操選手は、ベッドの上で飛び跳ねる動画をインターネットに投稿し、このことを証明した。他の選手たちも同様の「テスト」を行った。一方、今大会のメダルもリサイクル金属で作られた。2017年に、全国各地から携帯電話や小型家電の回収を開始し、2年間で実に携帯電話だけでも600万を超えた。そこからおよそ30キロの金、数トンの銀と銅が作られたとのこと。
ほぼ2年前には国外からの外国人の入国をほぼ制限し、コロナによって疲弊した日本であったが、自らの力を信じるエネルギッシュでオープンな21世紀の日本の勝利として思い描かれた東京五輪をなんとか開催にこぎつけることができた。リスクや不安を抱え、多くの国民からの反対を押し切り、きわめて異例の形でなりながらも開催を決めた日本政府には感謝すべきではないだろうか。今回の日本の経験が、2022年の北京冬季五輪、2024年のパリ夏季五輪にも活かされ、これらの大会が満員の観客とマスクなしで開催されるよう期待したい。