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中国対抗の「グローバルNATO」東方面はもつのか?
中国対抗の「グローバルNATO」東方面はもつのか?
Sputnik 日本
マドリッドのNATOサミットでは新戦略が採択された。これは主に政治的宣言ではあるものの、その要綱にはNATOの秘密の軍事戦略が策定されている。 2022年7月4日, Sputnik 日本
2022-07-04T22:01+0900
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新戦略の要項からは軍事計画の性格が読み取れる。日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドのNATO加盟は現段階では表明されていないが、これらの諸国のある種の役割は要項にすでに記載されている。NATOの敵国NATOの新戦略は、冷戦終結後初めて、「ロシア連邦はNATOの安全、欧州大西洋地域の平和と安定に対する最大かつ直接的な脅威」として、ロシアを主な敵国に据えた。NATO指導部は、ロシアは地中海から北大西洋に至る広大な地域に軍事的影響力を拡大しようとしていると定義づけている。もう一つの敵国である中国も、NATOの利益に挑戦を投げかける野心的なパワーポリティックスの国として認識され、具体的には「中国とロシアの戦略的パートナーシップの深化と相互強化は、国際法に基づく世界秩序を損ない、我々の価値と利益の崩壊を図るものである」と記載された。 このことからNATOの新戦略では、欧州大西洋とアジア太平洋という世界の重要な地域で共に活動する2つの敵が存在することになる。NATOの戦略は本質的にはグローバルなものになる。このことはNATO新戦略第45パラグラフにも「インド太平洋地域の発展傾向は欧州大西洋地域の安全保障に直接影響を与える可能性があり、NATOにとって重要である」と記された。戦略はこの地域のNATOパートナーとの対話と協力の強化を約束しており、これはもちろん軍事的な協力も意味する。NATOは以前にも、声明、パートナーシップや協力関係というカモフラージュを用い、様々な国を軍事活動に引き入れてきた。日本はロシアと中国に同時に敵対?NATO新戦略では「抑止と防御」というフレーズが最も頻繁に繰り返されており、これは戦略上、主にロシアと中国を指している。しかし、NATOの指導者たちが最重要かつ最優先事項はロシアの脅威と捉えていることを考えると、欧州加盟国が中国の封じ込めのために大きな戦力を投入できる可能性は低い。この課題は、他の選択肢がないため、NATOの「パートナー」、正確にはアジア太平洋地域の同盟国、すなわち日本ををはじめとして、マドリッドサミットに招待されたアジ4か国に委ねられている。まさにここに、今、日本にとって極めて重大な意味を持ち始めている問題が始まっている。日本は中国に対する「カウンターウェイト」の役割の主役となりつつあるのだが、実際はそんな役割は果たせそうにない。このことは、以下の記した、同地域の全体のパワーバランスから導き出される。この表で北朝鮮が中国の同盟国扱いされているのは、北朝鮮には中立を保つ選択肢がなく、軍事衝突が起きれば中国に加わらざるを得ないからだ。米国の欄にはアジア太平洋地域に常駐する部隊しか記されておらず、その筆頭が米国第7艦隊となっている。航空機は両陣営の近代的なタイプのみが考慮され、日本、韓国の航空機運搬船は空母としてカウントされている。表から、アジアにおけるNATO同盟国や同地域の駐留米軍を合わせても、中国より弱くなり、中国抑止はすでに不可能となったことがわかる。特に兵力(4分の1以下)、戦車(35%)、航空機(37%)の欄はかなり劣っている。ここで念頭に置かねばならないのは、韓国は北朝鮮という主な敵が存在しているために海外派兵は不可能だという点だ。韓国軍が弱体化すれば、敗北のリスクになる。オーストラリアとニュージーランドはあまりにも弱い上に、軍隊は遠方に配備されている。しかも同地域の駐留米軍も限定的である以上、中国に対抗できる国は日本しかいない。だが、その日本が中国に対して軍事的にいかに激しく劣っているかは一目瞭然だ。そして、ロシアと中国だが、NATOの指導者はこの2国は共同行動をとると睨んでいる。以上のような事情から、日本は太平洋地域でもロシアを抑止せざるを得なくなると予想できる。ただしロシアはこの地域には相当な兵力と航空機を展開して、潜在的な同盟国を強化することができるだろう。日本の安全保障政策の大失敗NATO加盟を狙う日本の意気込みは直接的、または間接的に非常に非自明的結果をもたらすことになった。岸田首相がかつての自衛隊政策を嫌ったのは、このためだ。この政策では、ロシアにも中国にも日本と武力衝突する深刻な理由はなく、小さな意見の相違は交渉で解決されていた。ところが今度はその岸田首相自身が日本を、以前は想像もできなかったような、驚くべき立場に追い込んだ。NATOの新戦略は、現在の地域情勢に当てはめると、日本に対して、ロシアと中国と同時に、かつ実質的に単独で軍事的対決を義務付けている。一方、ロシアと中国には、日本が事実上敵対的な軍事陣営に加わったがゆえに、日本と武力衝突を行う理由が出来てしまった。こうなるともう、これは日本の安全保障政策の大失敗としか言いようがない。
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中国対抗の「グローバルNATO」東方面はもつのか?
2022年7月4日, 22:01 (更新: 2022年7月5日, 16:27) マドリッドのNATOサミットでは新戦略が採択された。これは主に政治的宣言ではあるものの、その要綱にはNATOの秘密の軍事戦略が策定されている。
新戦略の要項からは軍事計画の性格が読み取れる。日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドのNATO加盟は現段階では表明されていないが、これらの諸国のある種の役割は要項にすでに記載されている。
NATOの
新戦略は、冷戦終結後初めて、「ロシア連邦はNATOの安全、欧州大西洋地域の平和と安定に対する最大かつ直接的な脅威」として、ロシアを主な敵国に据えた。NATO指導部は、ロシアは地中海から北大西洋に至る広大な地域に軍事的影響力を拡大しようとしていると定義づけている。
もう一つの敵国である中国も、NATOの利益に挑戦を投げかける野心的なパワーポリティックスの国として認識され、具体的には「中国とロシアの戦略的パートナーシップの深化と相互強化は、国際法に基づく世界秩序を損ない、我々の価値と利益の崩壊を図るものである」と記載された。 このことからNATOの新戦略では、欧州大西洋とアジア太平洋という世界の重要な地域で共に活動する2つの敵が存在することになる。
NATOの戦略は本質的にはグローバルなものになる。このことはNATO新戦略第45パラグラフにも「インド太平洋地域の発展傾向は欧州大西洋地域の安全保障に直接影響を与える可能性があり、NATOにとって重要である」と記された。戦略はこの地域のNATOパートナーとの対話と協力の強化を約束しており、これはもちろん軍事的な協力も意味する。NATOは以前にも、声明、パートナーシップや協力関係というカモフラージュを用い、様々な国を軍事活動に引き入れてきた。
NATO新戦略では「抑止と防御」というフレーズが最も頻繁に繰り返されており、これは戦略上、主にロシアと中国を指している。
しかし、NATOの指導者たちが最重要かつ最優先事項はロシアの脅威と捉えていることを考えると、欧州加盟国が中国の封じ込めのために大きな戦力を投入できる可能性は低い。この課題は、他の選択肢がないため、NATOの「パートナー」、正確にはアジア太平洋地域の同盟国、すなわち日本ををはじめとして、マドリッド
サミットに招待されたアジ4か国に委ねられている。
まさにここに、今、日本にとって極めて重大な意味を持ち始めている問題が始まっている。日本は中国に対する「カウンターウェイト」の役割の主役となりつつあるのだが、実際はそんな役割は果たせそうにない。
このことは、以下の記した、同地域の全体のパワーバランスから導き出される。
中国・北朝鮮 日本
| 中国 | 北朝鮮 | 合計 | 日本 |
兵力 | 2035000 | 1270000 | 3305000 | 247000 |
戦車 | 6740 | 3500 | 10240 | 1004 |
装甲車 | 3800 | 3100 | 6900 | 1015 |
航空機 | 1928 | 54 | 1982 | 240 |
航空母艦 | 2 | - | 2 | 2 |
駆逐艦 | 38 | - | 38 | 38 |
フリゲート艦 | 49 | - | 49 | 8 |
コルベット | 72 | 23 | 95 | 22 |
上陸用舟艇 | 77 | - | 77 | 11 |
潜水艦 | 68 | 100 | 168 | 26 |
韓国・オーストラリア・ニュージーラン・米国
韓国 | オーストラリア | ニュージーランド | 米国 (アジア太平洋地域) | 合計 |
420000 | 59100 | 9500 | 73400 | 809000 |
2500 | 144 | - | - | 3648 |
2700 | 713 | 200 | - | 4628 |
267 | 74 | - | 140 | 721 |
2 | - | - | 1 | 4 |
12 | - | - | 10 | 60 |
14 | 8 | 2 | - | 32 |
10 | 8 | - | - | 40 |
13 | 3 | - | 5 | 32 |
19 | 6 | - | 3 | 54 |
この表で北朝鮮が中国の同盟国扱いされているのは、北朝鮮には中立を保つ選択肢がなく、軍事衝突が起きれば中国に加わらざるを得ないからだ。米国の欄にはアジア太平洋地域に常駐する部隊しか記されておらず、その筆頭が米国第7艦隊となっている。航空機は両陣営の近代的なタイプのみが考慮され、日本、韓国の航空機運搬船は空母としてカウントされている。
表から、アジアにおけるNATO同盟国や同地域の駐留米軍を合わせても、中国より弱くなり、中国抑止はすでに不可能となったことがわかる。特に兵力(4分の1以下)、戦車(35%)、航空機(37%)の欄はかなり劣っている。
ここで念頭に置かねばならないのは、韓国は北朝鮮という主な敵が存在しているために海外派兵は不可能だという点だ。韓国軍が弱体化すれば、敗北のリスクになる。オーストラリアとニュージーランドはあまりにも弱い上に、軍隊は遠方に配備されている。しかも同地域の駐留米軍も限定的である以上、中国に対抗できる国は日本しかいない。
だが、その日本が中国に対して軍事的にいかに激しく劣っているかは一目瞭然だ。
そして、ロシアと中国だが、NATOの指導者はこの2国は共同行動をとると睨んでいる。以上のような事情から、日本は太平洋地域でもロシアを抑止せざるを得なくなると予想できる。ただしロシアはこの地域には相当な兵力と航空機を展開して、潜在的な同盟国を強化することができるだろう。
NATO加盟を狙う日本の意気込みは直接的、または間接的に非常に非自明的結果をもたらすことになった。
岸田首相がかつての自衛隊政策を嫌ったのは、このためだ。この政策では、ロシアにも中国にも日本と武力衝突する深刻な理由はなく、小さな意見の相違は交渉で解決されていた。
ところが今度はその岸田首相自身が日本を、以前は想像もできなかったような、驚くべき立場に追い込んだ。NATOの新戦略は、現在の地域情勢に当てはめると、日本に対して、ロシアと中国と同時に、かつ実質的に単独で軍事的対決を義務付けている。一方、ロシアと中国には、日本が事実上敵対的な軍事陣営に加わったがゆえに、日本と武力衝突を行う理由が出来てしまった。
こうなるともう、これは日本の安全保障政策の大失敗としか言いようがない。