新たな現実 ペロシ議長の台湾訪問で中国の政策がどう変わるか、日本への影響は

© AP Photo / Taiwan Presidential Office会談で肩を並べるナンシー・ペロシ米下院議長と蔡英文総統
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ペロシ米下院議長の台湾訪問はわずか20時間の短いものだったが、中米関係の新たな悩みの種を生み出した。その波紋は当該地域の米国のパートナー諸国、例えば日本にも及んでいる。中国はどう反応するか、中国と台湾の間で軍事紛争は起こり得るか、緊張の状況が他国をどう巻き込むか。スプートニク通信がまとめた。

関係悪化へ

ペロシ議長が台湾を訪問する可能性があるとの報道を受け、中米関係により一層の緊張が走った。中国は米国に対し「一つの中国」原則について念押し。この原則によると台湾は何の主権ももたないため、ペロシ議長の台湾訪問を中国は自国主権の侵害であるとみなした。
中国防衛省報道官は7月26日、「米国側が独自路線を進むと主張するならば、中国軍は手をこまねいたままおとなしくはしていない。言うまでもなく、外的勢力によるいかなる介入、『独立台湾』という分離主義的な目論見を阻止するため断固とした措置を取り、また国家主権と領土保全を断固として守る」と立場を表明した。
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太平洋上での新たな演習は戦争への新たな一歩か?
また中国外務省は「米国は、中国の安全保障が損なわれた場合に、その代償を払わねばならない」と強調した。

前例のない状況

中国の反応は待つまでもなかた。中国軍は8月4日に台湾周辺海域および上空で演習を開始。演習は実弾射撃を伴い、台湾から北、南西、南東方面の海域および上空で実施される。演習の一環として中国はすでに台湾海峡における射撃も行った。
スプートニク通信特派員は、近いうちに状況がどう進展するか、モスクワ国立研究大学経済高等学院東洋学部学長であるアンドレイ・ニヤゾフ歴史学博士候補に話を聞いた。
「専門家の間では様々な意見が出ています。軍事的報復はすでに起こっています。というのも、中国は8月4日から7日にかけて6つの領域で前例のない実弾演習を発表しているからです。これはある意味、新たな現実であり、これほどの規模とこれほど台湾に近い距離の演習は、今までありませんでした。これは台湾島の完全封鎖のシミュレーションです。報復であり、米国の深刻な懸念となっています」
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ニヤゾフ氏は、中国の世論は国家が作るラインに沿って進んでいると強調する。国民は主に台湾与党と米国政府の行動に憤慨している。しかも中国のインターネットの世界では、かなり過激なユーザーがいて、今すぐにでも、彼らが言うところの「台湾解放」作戦を開始するよう呼び掛けている。

中国のミサイルが日本の排他的経済水域に 偶然か意図的か

中国軍が演習で発射した5発の弾道ミサイルが4日、日本の排他的経済水域に着水した。
「ミサイルが日本の排他的経済水域に着水したことが偶然か意図的かは何とも言えません。岸田首相はすでに記者会見で、日本を威嚇するための中国による意図的な行動であると考えを表明しましたが、実際にどうだったかは我々にはわかりません。中国側はこの件についてコメントしていません。一方で理解しておかねばならないのは、日本側は米国の政策に従って動くということです。中日の外相会談が中止されたのは偶然ではありません。ペロシ議長の台湾訪問が、ただでさえ複雑な中日関係に悪影響をおよぼす可能性はあります」
ニヤゾフ氏は、もう一つの中日関係の問題は、日本が台湾問題に関する自身の動きを本格的に米国と調整しようとしていることだと指摘する。同氏によると、これを背景に中日関係が改善することはないという。
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中国と米国:今後どうなる?

ニヤゾフ氏は、数多くの複雑な問題の中で、まさに台湾問題は中米関係の新たな悩みの種となったと強調する。
「中国の政治の特殊性を知っていますが、中国は決してすべてのカードを一度にテーブルに広げることはないと言えます。内政および対外情勢を考えると、中国は今、厳しい歴史的時代にあります。中国幹部は最大限、慎重に事を運ぶよう努めていますが、一方で、愛国主義的な世論に反応しないわけにはいかない、他方で、重要な党大会を控え、入念に一歩一歩を確かめています。我々はさらに状況が今後動くのを目にすると思います。習近平氏は、鼻先をこつかれて相手が無事で済むような政治家ではありません。この危機が今後どうなるか、もっと詳しく見ていくこともできますが、いずれにしても、これが中国・台湾間、あるいは中米間の衝突や深刻化につながらないという望みもあります」
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