【解説】フィリピンを軍事的悲劇に引き込む日本

© AP Photo / Bullit Marquezフィリピン空軍C-130H
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日本は軍事同盟国の数を拡大しようとしている。2022年12月には、日本と英国の間で軍事協定に署名が行われることになっている。またフィリピンとの間では、防衛協定の文書策定のための事前協定が始まった。英国との軍事協定の内容は、概して、太平洋における演習や作戦において、英国の艦隊、空軍、陸軍部隊が、自由に日本にある基地を使用することができるようにすることを目的としたものである。また日本は、英国企業との協力の枠内で、新型次期戦闘機FXの開発を完了することを検討している。一方、フィリピンとの協定の内容は、より興味深いものとなっている。というのも、きわめて興味深い結果をもたらす可能性があるからである。

フィリピンは非常に弱い

フィリピンとの防衛協定は、中国の抑止を見込んだものである。というのも、日本とフィリピンにとって、中国以外に想定される敵はいないからだ。しかしフィリピンの陸軍、海軍、空軍は非常に弱い。フィリピン空軍には軽攻撃機FA-50PHが装備されている。これは韓国製の高等訓練機で、かなり悪くないものである。FA-50PHは無誘導ミサイル、空対空ミサイルAIM-9、空対地ミサイル、その他の爆弾を搭載することができる。この軽攻撃機はMini-F-16とも呼ばれている。しかしフィリピン空軍にその戦闘機は全部で12機しかない。中国人民解放軍の空軍と比べると、フィリピンには空軍は事実上、存在しないも同然である。
一方、フィリピンの海軍は公式的に非常に規模が大きく、82隻の艦艇がある。しかし、そのうちフリゲート艦は2隻、コルベットは1隻しかない。フリゲート艦はすべて新しく、2020年と2021年にフィリピン海軍に配備されたものである。ちなみにこれはそれほど大きくない船である。
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フィリピン海軍の旗艦は、ホセ・リサール級フリゲートで、排水量2600トン、速力は最大で28ノット出すことができる。艦船には76ミリ砲、対艦ミサイル、魚雷が装備されているが、対空システムは非常に弱い。空からの攻撃から守ってくれるのは、携帯式防空ミサイルシステムと同様のものである無人ミサイルランチャーSimbad-RC、2基だけである。レーダーもなければ、長距離および高速対空ミサイルもない。ちなみに、コルベット艦「コンラッド・ヤップ」にも、そのような対空ミサイルはない。コルベット艦は、沿岸の防衛と潜水艦との戦いを目的としたものである。

それ以外はすべて海軍のもの

フィリピンは、小さな船、そして沿岸防衛と海上の国境警備のためのボートを有している。フィリピン海軍は、本質的に、敵の空軍の標的となっている。フィリピン軍は正式には人員が多いとされており、その人員数は10万1000人に上る。しかし、装備は非常に悪い。戦車もない。もっとも重い装甲戦闘車両は、米製のM113装甲兵員輸送車のいくつかの改良型である。軍全体にあるのは296の榴弾砲だけで、しかもそれらは米製のM101、M102、イタリアのMod.56など、すべて型式の古いものとなっている。
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事実上、フィリピン軍は歩兵師団で軽度に装備されている。そこで、もしもフィリピン軍を、主な敵であるパルチザンではなく、中国人民解放軍と比較すると以下のことが明らかになる。フィリピンは中国を抑止できないだけでなく、中国軍がもし侵攻してきた場合に、防衛すらできないのである。
技術的なレベルを含めた中国人民解放軍の完全な優位性は、万が一衝突が起こった場合に、フィリピンの空軍にも、海軍にも、陸軍にも、勝利のチャンスはまったくないことを意味する。ここで湧き上がってくる疑問は、ではなぜ日本は、自らが中国から守ってやらねばならないような弱い同盟国を必要としているのかということである。

重要な空軍基地

フィリピンの大いなる価値はその空軍基地にある。フィリピン島の有利な地理的条件を鑑み、ここでの大規模な空軍基地の建設に対しては、関東軍の時代から大きな関心が示されていた。その後、空軍基地の開発に積極的に取り組んだのは、米空軍であり、米軍は朝鮮戦争とベトナム戦争で大いにこれを活用した。
フィリピンはルソン島に10つ、ビサヤ諸島に4つ、ミンダナオ島に3つの空軍基地を有している。中でも目立った存在であるのがマニラから64キロの地点にあるクラーク空軍基地である。この基地の建設は1942年に日本が始めたものである。現在、基地は長さ3200メートルの滑走路と37平方キロメートルの広さを持つ大きさとなっている。また基地を拡張するために、さらに600平方キロメートルが確保されている。
もう一つの大規模な基地はセサル・バサ空軍基地だが、敷地面積はやや小さく、滑走路の長さは2800メートル。軽攻撃機「FA-50PH」を保有するフィリピン空軍第5戦闘航空団の本拠地となっている。
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これらの空軍基地には印象深い歴史がある。しかし、基地の開発は1991年6月5日にピナツボ火山の噴火により中断された。クラーク空軍基地は火山灰に覆われ、泥流による損傷を受けた。セサルバサ空軍基地にも同様に、厚い火山灰が積もり、多くの建物が倒壊した。火山灰は1977年に購入した25機のF-8「クルセイダー」戦闘機にも損傷を与え、結局、戦闘機は退役し、スクラップにするしかない状態となった。この火山によって、フィリピンのほぼすべての基地―主にマニラ湾より北の火山に近い地域にあるもの―に被害が出た。
そこで1991年、米国は深刻な被害を受けた空軍基地の貸借を中止し、ほぼすべての部隊をフィリピンから撤退させたのである。
フィリピン空軍は、この数十年で、大規模な空軍基地の被害をいくらか修復することができた。しかし、あらゆることから判断して、基地は以前の状態には戻っていない。しかも、ピナツボ火山は今も活動を続けている。2021年にも、地震活動の活発化が認められ、地面の揺れも観測された。
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しかし、現在の情勢によって、再びフィリピンの空軍基地に注目が集まっている。
まず第一に、中国との間で軍事紛争が起きれば、フィリピンの空軍基地はきわめて価値のあるものになる。というのも、南シナ海の上空で空軍が活動することができるからである。現在、この海域は、沖縄の嘉手納基地の陸軍航空部隊ではほとんどカバーされていない。F-35 とF-16は十分な射程距離を持っておらず、またF-15はかなり老朽化しており、その戦闘能力には疑問がある。
第二に、嘉手納基地だけに日米の空軍が集中していることにより、ミサイル攻撃に対して、非常に脆弱な状態となっている。戦争が勃発した際に、最初の数時間ですべての航空機を失わないためには、航空機を分散する必要がある。クラーク空軍基地はこの問題を解決するものなのである。そして第三に、フィリピンの空軍基地は、台湾以東およびフィリピン北部の広大な海域を、沖縄・フィリピン間を往復する形で監視することが可能になるのである。
これらすべてが、フィリピンを防衛協定に引き入れようとするためのかなり重要な根拠である。フィリピンの空軍基地は、この地域における日米の空軍の状況をやや改良するものとなる。
もっとも、フィリピン自身にとっては、こうした協定は悲劇的な結果をもたらす可能性がある。というのも、空軍基地を占拠する目的で中国が直接、軍事侵攻してくる可能性があり、フィリピン自身はこれに対抗することができないからである。
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