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【視点】ロシア産原油に対する「上限価格」設定のリスクと影響
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12月5日、更なる対ロシア制裁が発動された。それはEU諸国へのロシア産原油の禁輸と海上輸送で第3国に運ばれる原油価格の上限の設定である。欧州連合(EU)と先進7カ国(G7)は、その価格を1バレル60ドルにすることで合意した。 2022年12月9日, Sputnik 日本
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これに対し、ロシアは上限価格を設定する国には原油を輸出しない姿勢を明らかにした。アナリストらは、市場からロシア産の原油が部分的に締め出されることにより、市場での原油の供給不足とさらなる価格高騰が起こる一方で、ロシアの収入源を断つという西側の主な課題が遂行されることはないだろうとの懸念を示している。またこの日、日本政府は上限価格設定の効用性について疑問を呈した。「スプートニク」はロシア政府付属金融大学のボリス・ヘイフェッツ教授に現在の状況についてお話を伺った。「上限価格」とはヘイフェッツ氏によれば、「上限価格」(プライスキャップ)は輸出されるロシア産原油の販売価格を制限するものである。EUとG7はその価格を1バレル60ドルと設定した。「上限価格」は変動性で、2023年の1月半ばから、2ヶ月に1度見直される計画となっている。またこれと同時に、設定された上限を下回った価格での取引を除いて、輸入を禁じていない国に供給されるロシア産原油の輸送と保険に対する禁止も導入される。ロシア産原油の最終価格が「上限価格」を超えた場合、タンカーによる輸送は禁止され、保険契約もできなくなる。しかし、保険をかけずに原油を海上輸送することは禁じられている。一方、この「上限価格」のメカニズムは、パイプライン経由でハンガリー、チェコ、スロバキアに供給されるロシア産原油は対象外となっている。また米国はこれより先、ブルガリア、クロアチア、そして海への出口を持たないEU加盟国への供給は許可するとした。このほか、石油・天然ガス開発事業「サハリン2」については、日本に調達されることを条件に、2023年の9月23日まで供給が許可される。今回の「上限価格」の導入の目的とは一体どのようなものなのか。またその目的は達成されるのだろうか?「上限価格」設定に賛同する国々は、このメカニズムについて、ウクライナにおける特別軍事作戦の資金源となりうるロシアの収入を制限しつつ、ロシア産原油を市場に残す手段だと考えている。つまり、発案国は、ロシアは「上限価格」のレベルで原油の供給を継続することはできるが、原油の輸出によるロシアの収入は減少するだろうと見ているのである。これについてボリス・ヘイフェツ氏は次のように述べている。「上限価格」の設定は輸入国にとってどのようなリスクを持つのか?12月5日、松野博一官房長官は記者会見を開いた中で、OPECプラスが現行の減産規模の維持を決定したことについて、世界の原油価格が高いレベルにとどまる可能性があるとの考えを明らかにしている。松野官房長官は、「OPECプラスは4日に開いた会合で、10月の会合で決めた日量200万バレルの減産を維持することで合意した。ロシア産原油の生産動向などを考慮すれば、需給のタイト化や不透明さが増し、原油価格の高止まりにもつながりかねない」と指摘した。一方、これについて、ヘイフェッツ氏は「世界の原油価格は値上がりする可能性もあれば、値下がりする可能性もある」と指摘する。様子見の立場をとるOPEC市場の原油を大幅に減少させる西側による新たな対ロシア制裁が今後どのような影響を及ぼすのかはっきりしない中、OPECプラスは世界経済に対する原油供給の生産目標を維持するとしている。この決定は、「価格上限」政策が発表される1日前の日曜日、閣僚協議で下されたものである。その協議の結果、日量200万バレルまでという現在の減産計画を維持することが決まった。OPECプラスは次は2月1日に合同閣僚監視委員会の枠内で会議を開き、全閣僚会合を6月3日から4日にかけて開く計画である。ヘイフェッツ氏は、「OPECプラスは様子見の立場を取り、発動された制限がどのような効果を発揮するのか確認しようとしていることは明らかだ」と指摘している。
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【視点】ロシア産原油に対する「上限価格」設定のリスクと影響
2022年12月9日, 21:55 (更新: 2022年12月10日, 16:31) 12月5日、更なる対ロシア制裁が発動された。それはEU諸国へのロシア産原油の禁輸と海上輸送で第3国に運ばれる原油価格の上限の設定である。欧州連合(EU)と先進7カ国(G7)は、その価格を1バレル60ドルにすることで合意した。
これに対し、ロシアは上限価格を設定する国には原油を輸出しない姿勢を明らかにした。
アナリストらは、市場からロシア産の原油が部分的に締め出されることにより、市場での原油の供給不足とさらなる価格高騰が起こる一方で、ロシアの収入源を断つという西側の主な課題が遂行されることはないだろうとの懸念を示している。
またこの日、日本政府は上限価格設定の効用性について疑問を呈した。
「スプートニク」はロシア政府付属金融大学のボリス・ヘイフェッツ教授に現在の状況についてお話を伺った。
ヘイフェッツ氏によれば、「上限価格」(プライスキャップ)は輸出されるロシア産原油の販売価格を制限するものである。
EUとG7はその価格を1バレル60ドルと設定した。「上限価格」は変動性で、2023年の1月半ばから、2ヶ月に1度見直される計画となっている。またこれと同時に、設定された上限を下回った価格での取引を除いて、輸入を禁じていない国に供給されるロシア産原油の輸送と保険に対する禁止も導入される。ロシア産原油の最終価格が「上限価格」を超えた場合、タンカーによる輸送は禁止され、保険契約もできなくなる。しかし、保険をかけずに原油を海上輸送することは禁じられている。
一方、この「上限価格」のメカニズムは、パイプライン経由でハンガリー、チェコ、スロバキアに供給されるロシア産原油は対象外となっている。
また米国はこれより先、ブルガリア、クロアチア、そして海への出口を持たないEU加盟国への供給は許可するとした。
このほか、石油・天然ガス開発事業「サハリン2」については、日本に調達されることを条件に、2023年の9月23日まで供給が許可される。
今回の「上限価格」の導入の目的とは一体どのようなものなのか。またその目的は達成されるのだろうか?
「上限価格」設定に賛同する国々は、このメカニズムについて、ウクライナにおける特別軍事作戦の資金源となりうるロシアの収入を制限しつつ、ロシア産原油を市場に残す手段だと考えている。
つまり、発案国は、ロシアは「上限価格」のレベルで原油の供給を継続することはできるが、原油の輸出によるロシアの収入は減少するだろうと見ているのである。
これについてボリス・ヘイフェツ氏は次のように述べている。
「1バレル60ドルという価格は、ロシアの代表的な油種であるウラル原油の過去5年の平均価格です。そこでこの『上限』の価格は、ロシア産原油を今後も国際市場に輸出するためのほぼ最高値で設定されたものといえます。この額はロシアにとってまったく悲劇的なものではありません。ただ問題は別のところにあります。ロシアが国家主権の問題に対する強制や介入を許すことはないということです。元エネルギー大臣であるノバク副首相は最近、価格上限の水準にかかわらず、原油に対する制限は受け入れられないと述べています。これがロシア産原油の今後の供給にどのような影響を及ぼすのかは現時点では不透明です。しかし、いずれにせよ、世界の原油取引に対する非市場的な介入という前例が他の輸出国にも普及していくかもしれないという危険性を孕んでいます」。
「上限価格」の設定は輸入国にとってどのようなリスクを持つのか?
12月5日、松野博一官房長官は
記者会見を開いた中で、OPECプラスが現行の減産規模の維持を決定したことについて、世界の原油価格が高いレベルにとどまる可能性があるとの考えを明らかにしている。
松野官房長官は、「OPECプラスは4日に開いた会合で、10月の会合で決めた日量200万バレルの減産を維持することで合意した。ロシア産原油の生産動向などを考慮すれば、需給のタイト化や不透明さが増し、原油価格の高止まりにもつながりかねない」と指摘した。
一方、これについて、ヘイフェッツ氏は「世界の原油価格は値上がりする可能性もあれば、値下がりする可能性もある」と指摘する。
「もし中国が経済発展のテンポが落ちることによって、原油の消費を削減すれば、価格が下落することもあります。そうなれば、ロシアは原油を減産する可能性もあり、そうなれば世界市場の石油不足を招き、エネルギー資源の輸入国の経済に否定的な影響を及ぼし、燃料やガソリンの価格も上昇することで消費者にも打撃を与えることとなります。
つまり、ここで大きな影響力を持つのがインドと中国です。この2カ国は現在、ロシア産原油の大規模な輸入国となりました。西側諸国がロシア産原油の禁輸を決めた後、ロシアはこうした国への輸出によって、損失を補填しようとしています。現在までのところ、彼らはロシア産原油を最大1バレル30ドルもの割引で購入してきました。もし、この国々が上限価格の設定に参加すれば、ロシアは供給を停止する可能性もあります。そこで大きな問題となってくるのが、2023年に中国とインドはロシアの原油を輸入するかどうかという点です。もちろん、もしロシアが中東やアフリカの油種と比較して、割引価格で供給してくれるなら、彼らにとっては、ロシア産原油を買う方が得です。しかし、どちらの国にも、石油加工企業が解決しなければならない問題があります。
一つは、ロシアの西の港からアジアに原油を輸送するための船の不足。
もう一つは、保険の問題です。どちらの国も二次制裁を恐れているのです。
一方、日本について言えば、わたしが知る限り、『サハリン2』の石油は『上限価格』の合意から除外されています。日本のエネルギー安全保障がその理由です。もっとも、この供給は、日本が輸入する原油全体のわずか3.6%ほどではありますが、しかし、もし世界の原油価格が高騰すれば、日本も被害を受けることになります。」
市場の原油を大幅に減少させる西側による新たな対ロシア制裁が今後どのような影響を及ぼすのかはっきりしない中、OPECプラスは世界経済に対する原油供給の生産目標を維持するとしている。この決定は、「価格上限」政策が発表される1日前の日曜日、閣僚協議で下されたものである。その協議の結果、日量200万バレルまでという現在の減産計画を維持することが決まった。
OPECプラスは次は2月1日に合同閣僚監視委員会の枠内で
会議を開き、全閣僚会合を6月3日から4日にかけて開く計画である。
ヘイフェッツ氏は、「OPECプラスは様子見の立場を取り、発動された制限がどのような効果を発揮するのか確認しようとしていることは明らかだ」と指摘している。