【解説】政治的友好「再開」の見通し 自民党の萩生田政調会長が台湾訪問へ

萩生田政調会長 - Sputnik 日本, 1920, 10.12.2022
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自民党の萩生田光一政調会長が今月10~12日の日程で台湾を訪問する。萩生田氏は、台湾の蔡英文総統と会談する予定。また日本と台湾のハイレベルでの交流を確立したり、中国に政治的シグナルを送る考え。自民党の三役が訪台するのは野党時代を除き19年ぶり。2003年に麻生太郎政調会長(当時)が台湾を訪問している。
スプートニクは、日本と、公式的な外交関係を樹立していない台湾との間にはどういう対話が成り立つかについて、専門家らに見解を伺った。
11月末には台湾の游錫堃立法院長が日本を訪れた。台湾メディアは、議員レベルでの交流「再開」が訪問の目的だと報じた。游氏は、萩生田氏や麻生自民党副総裁とそれぞれ会談した。

日台関係

日本と台湾の間に外交関係はなく、日本は台湾を正式に承認していない。例えば、日本の駐在武官を台湾に派遣することができない。日本は特定の任務を遂行するために退職した自衛官を派遣しなければならない。正式な外交関係がないため、日本と台湾は日本台湾交流協会と台湾日本関係協会を通じて互いにそれぞれの権益を保護している。国際交流は、日本の超党派議員連盟やその他の議会組織を通じても行われている。
台湾は現在、14ヵ国と正式な外交関係を持っており、そのうち13ヵ国は国連加盟国(14ヵ国目は国連非加盟国のバチカン)。一方、台湾と貿易、経済、政治的な結びつきを持っている国ははるかに多い。事実上、台湾はその「経済文化代表処」を通じて世界の大多数の国と関係を構築している。

安倍晋三氏と台湾

3月中旬、蔡英文氏は日本の安倍晋三元首相と会談した。会談では、日本が主導的な役割を果たしている台湾の「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP、TPP11)」への加入が主要テーマとなった。会談は、日本と台湾の交流を進める超党派議員連盟「日華議員懇談会」が開催した。安倍氏は同連盟の顧問を務めていた。
7月、安倍氏が凶弾に倒れた。安倍氏の死去を受け、蔡氏は「安倍元首相は台湾にとって揺るぎない友人だった」とのコメントを発表した。
蔡氏は安倍氏について「台湾の忠実な支持者であり、何度も台湾への支援を表明し、台湾のために多くのことを成し遂げた」と強調した。
安倍氏は、日台関係の緊密化を目指した。同氏は日米関係、日米台関係、または日米豪印4ヵ国が安全保障などを協議する枠組み「Quad(クアッド)」のいずれもさらに強固なものにならなければならないと述べていた。台湾への軍事侵攻計画を中国が放棄せざるを得ない状況をつくり出すことが重要であり、そのためには地域の同盟国がしかるべき能力を構築し、その方向で決意を示す必要があるとしていた。
中国外務省の汪文斌報道官 - Sputnik 日本, 1920, 24.05.2022
中国外務省、クアッドに「小さなグループを作って対立をあおらないよう求める」
安倍氏は、日本は米国との同盟関係の枠内で自国の防衛力や抑止力を強化する必要があると指摘していた。同氏は、同盟国が中国の習近平国家主席の台湾統一への取り組みを過小評価していると指摘していた。安倍氏は、中国の台湾侵攻は「日本に対する重大な危険を引き起こす」と述べていた。

日本代表団の訪台:時系列

2022年5月自民党青年局のメンバーが、台湾を訪問した。小倉将信局長が代表団の団長を務めた。高官による相互往来・交流を促す米国の「台湾旅行法」の日本版について協議した。
青年局は長年にわたり日本と台湾の窓口の役割を担い、協力や交流を深めてきた。また歴代の青年局長には、安倍晋三元首相や岸田文雄現首相など、自民党の主要政治家が名を連ねている。
2022年7月。元防衛相の石破茂氏と浜田靖一氏(現防衛相)が団長を務める超党派国会議員団が4日間の日程で台湾を訪問した。
日本の超党派国会議員団は、蔡総統や副総統らと会談した。会談では、地域の安全保障問題に特別な注意が払われた。
2022年8月。同月下旬、超党派議員連盟「日華議員懇談会」の古屋圭司会長を団長とする議員団一行が3日間の日程で台湾を訪問した。8月上旬には米国のペロシ下院議長が訪台し、中国は台湾周辺で演習を実施した。
2022年10月。古屋会長を団長とする「日華議員懇談会」の議員団およそ20人が10月10日の中華民国(台湾)の建国記念日にあたる「双十節」に合わせて再び訪台した。古屋会長は蔡総統との会談で、日本と台湾は自由や民主主義の価値を共有しており「信頼のおける最高のパートナーだ」と強調した。
2022年12月 萩生田氏の訪問の他に、自民党の世耕弘成参院幹事長ら約10人の議員団も同月末に台湾を訪問する意向。

日台関係 専門家らは過去の歴史と今後の展望をどう見るか

歴史博士で、ロシア科学アカデミー教授、同アカデミー付属世界経済国際関係大学、アジア太平洋調査センターのアレクサンドル・ロマノフ所長は、現時点では日本と台湾の外交関係は一切ありえないとし、その理由について、かつて台湾を植民地化した日本こそが、現在の状況を作った間接的な張本人だからだとして、次のように語っている。
「日本は時として自国の過去の過ちや、それが現況にどう影響しているか、最終的にそれが日中関係の展望にどれほど明確に表れうるのか、はっきり理解できていない。なぜなら、もし日本のマスコミが2つのデモクラシー(日本と台湾)の友情を書き立てるとすれば、中国はこれを、日本がまた昔の自国の地位(植民地の支配者)と、台湾でのかつての威光を取り戻そうとしているとみなすことは間違いないからだ。なぜなら、台湾があれだけ長い間、日本帝国の属国でなければ、おそらく現在のような中国との『分断』はなかっただろうからだ」
台湾と中国の国旗 - Sputnik 日本, 1920, 17.10.2022
台湾は主権や民主主義の問題で譲歩するつもりはない=台湾総統府
ロマノフ氏は、日本が米国の対外政策に隙間なく組み込まれていることも現在の日本の政策に影響していると見ている。これは日中関係に何の益ももたらさない。
「なぜなら米中の軍事紛争となった場合、日本もこの『喧嘩に首を突っ込まざるを得なくなる』からだ」

日本は台湾への影響力を復活

政治学のウラジーミル・ヴィノグラードフ博士は、日本が台湾に対してより積極的な姿勢をとるようになってから、もう10年以上が経過していると見ているが、台湾において日本の影響力が復活しているといっても、これは歴史的なマイナス面だけでなく、経済的なプラス面もあると考えている。
「日本は台湾にとっては影響力と威信のある地域のリーダーだ。台湾で初めて民主的に選ばれた総統は、日本が植民地時代に台湾を近代化したことに謝意まで表している。だから、台湾国民は普通の生活の場面でも未だに日本人や日本的なものに対して尊敬と敬愛の念を抱いている」
ヴィノグラードフ氏は、日本の台湾における評価はかなり肯定的で、それが世論を形成し、台湾で米国の路線を追求するためのよい土壌になっていると指摘する。

歴史的に深い根

ロシア科学アカデミー、極東支部、日本研究センター(中国・現代アジア研究所)のヴァレリー・キスタノフ所長は日本は米国の「忠臣」だと規定している。それは、米国が台湾との公式的な関係を「断ち」、中国本土と国交を結んだとき、日本もこれに倣ったからだ。1972年以降、日本と台湾の間には正式な外交関係はない。 にもかかわらず、日本の台湾への影響力は根強く残っている。それは何よりもまず経済的な影響で、日本が台湾に大規模な投資を行っているからだ。 事実としては両国の関係は存在している。それは植民地時代に始まって、日本は台湾に「深く根を下ろしていた」からに他ならない。
「台湾が(小さな島国であるにもかかわらず)日本にとって第4の貿易相手国であることは偶然ではない。...そして、高官の台湾訪問は、この事実に対して日本が実際上とる姿勢と外交戦略の上で台湾を非常に重要視していることを示している」
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日本をも傷つける米中の「棘」

「戦後の数十年間、台湾は米中関係の『見えない棘』だった。しかし、今、この『棘』が表面に顔を出し始め、両国関係に痛みを与えている」キスタノフ氏はこう語る。
キスタノフ氏が指摘するように、これはペロシ氏の訪台時に特に顕著に表れた。中国は台湾付近に11発の弾道ミサイルを発射し、そのうち5発は日本の経済水域に着弾してしまった。この事実は日本にあまりにも大きな憂慮を呼んだ。台湾をめぐる緊張は高まるばかりで、米国と協調行動をとる日本の政界をも悩ませている。
キスタノフ氏がさらに見逃してはならない重要な事実として指摘する点は、台湾に日本のロビー活動があることだ。
「日本のロビー活動で一番目立つ石破茂氏は、自民党員で日本政界の『重鎮』(元防衛大臣)で、『親台湾路線』で活躍する人物だ。 そのため、日本には台湾と連絡をとる議員間グループがある。萩生田氏の訪問はその路線を引き継ぐもので、これが中国の苛立ちを呼ぶことは間違いない」
このように、「台湾問題」は地域の地政学上の最先端にますます現れるようになっている。しかも、問題はまさに日本の安全保障にとって重要な要素になりつつある。これが先に防衛白書でも触れられたわけだ。
台湾ファクターは今もこれから先も変わらず、日中関係を不安定化させる重大な要因であり続けるだろう。そして、今回の日本の高官の訪問は、米国がこの地域で懸命に煽る「地政学的地域紛争」の「炎」をさらに「あおる」ことになる。
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