【解説】日本の艦艇は約5年後に敵のミサイルを識別できるようになる

© AFP 2023 / Joe Davilaミサイル
ミサイル - Sputnik 日本, 1920, 03.01.2023
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日本の防衛省は2023年度予算の概算要求で、計画中のミサイル防衛艦の詳細を一部公表した。このミサイル防衛艦は日本が2020年に断念したイージス・アショアの代替策となるものだ。2022年8月には決定していたが、このたび詳細が明らかになった。
防衛省は2隻を建造し、2027年と2028年に就役させる計画だ。全長210メートル、全幅40メートル、基準排水量2万トンという大型の艦艇で、64の垂直発射装置とヘリコプター格納庫を搭載する。この新しいミサイル防衛艦は海上自衛隊最大の艦艇となる予定だ。
ちなみに、プロジェクト自体は日本ではなく、アメリカによるものであり、アメリカも同様の艦艇を自国艦隊のために建造しようとしている。

長距離識別レーダー

このミサイル防衛艦は、日本が現在保有するものよりも優れたものになる。このプロジェクトのメインは長距離識別レーダー(LRDR)と呼ばれるAN/SPY-7(V)1レーダーである。日本は2018年にイージス・アショア2基分としてこのレーダーを調達する予定だった。このレーダーは、アメリカと同盟国のミサイル防衛強化の重要要素とされており、ハワイに新たに設置される監視ステーションへの配備のほか、カナダ海軍とスペイン海軍の新艦艇への搭載が想定されている。
レーダーはかなり大型であるが、相当の排水量を持つ艦艇には搭載可能だ。艦橋の上のピラミッド型の上部構造に搭載される。
既存のAN/SPY-1D(V)レーダーと比較した場合の主な優位性は、約4000kmの距離で弾道ミサイルの弾頭を探知できることである。一方、既存のレーダーの探知距離はわずか370kmである。そのため、AN/SPY-7(V)1レーダーを搭載した艦艇は、ミサイル攻撃の早期警戒にも、SM-3ブロックIIA-Bミサイルの全射程1200kmをフルに使用した目標迎撃にも使えることになる。北朝鮮のミサイル迎撃が現実のものとなるのである。
これらの艦艇は、平時には宇宙空間の監視に使用できる。探知距離は、送信方法次第で7000〜12500kmにもなる。
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解決できない問題

しかし、このプロジェクトには課題がある。
まず第一に、このレーダーは現時点では1基しか存在しないという点だ。アラスカに設置され、2022年8月に試験が行われたものの、まだ実戦配備はされていない。艦艇搭載型は現在開発中で、プロジェクト完了までに数年かかるという。現在、日本のイージス武器システム(AWS)ベースラインJ7.Bで、新しいレーダーとソフトウェアの統合が行われている。目標の期日までにレーダーが完成するかどうかは、大きな疑問だ。
第二に、ミサイルを何基持てるのかという問題がある。弾道ミサイルは、探知するだけでなく、何かで迎撃しなくてはならない。ここで深刻な問題が発生する。例えば、2021年のSM-3ブロックIIAミサイルの発注数はわずか7基であり、実際に納入されたのは3基のみだった。当初は2024年までに同型のミサイルを54基納入する予定だったが、この目標は達成されなかった。ある程度安定したミサイル防衛を行うためには、このようなミサイルが数百基必要だが、アメリカの軍需産業がそのような発注に対応できるとは考えにくい。つまり、日本の艦艇が搭載するSM-3ブロックIIA-Bミサイルは、せいぜい1隻あたり3〜4基、あるいはそれ以下ということになる。これではもちろん防衛には少なすぎる。
第三に、日本はミサイル開発に5年程度かかると、親切にも敵対する国に教えている点だ。中国と北朝鮮には、迎撃を回避できるより高性能な弾道ミサイルと弾頭を開発・実験・実戦配備するための時間があるのだ。また、ミサイルをソーセージのごとく生産する北朝鮮は、日本のミサイル防衛を飽和攻撃で突破するために数百発のさまざまな型の弾道ミサイルを簡単に製造することができる。北朝鮮にとって、ミサイル戦力の開発は、外交や軍事政治上の多くの問題を解決できる、絶対的な優先事項である。このためなら、北朝鮮は力も資金も惜しまない。
数十発のミサイルを一斉発射すれば、必ず標的に到達する。日本の艦艇は3〜4発、あるいは10発程度の弾頭なら撃ち落とすことができるだろうが、残りは標的に命中することになる。北朝鮮は、すべてのミサイルに核弾頭を搭載する必要はない。核弾頭とほぼ同じ重さの400kgの鋼鉄の塊が秒速約3kmで標的に命中すれば、破壊の際にTNT4トン以上に相当するエネルギーを放出する。一種の人工隕石のようなものだ。これが製油所やLNG基地、発電所などに命中すれば、大規模な破壊を引き起こし、これらの施設は機能を喪失する。しかも、ミサイル防衛を突破する方法はこれだけではないのだ。
第四に、戦術的なアプローチとして、最初に新型ミサイル防衛艦を沈めた後、迎撃を恐れることなく、ミサイルを一斉発射することが可能である。日本の防衛省が発表した情報によると、新型艦には、敵の艦艇や航空機からの攻撃から防御するための対艦・対空ミサイルが搭載されるという。しかし、ミサイル防衛艦そのものは他の艦艇や航空機、潜水艦で守らなければならない。その喪失は戦争での敗北を意味する。
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要するに、たとえ新型ミサイル防衛艦が建造され、装備や人員も整い、実戦配備されたとしても、敵のミサイル攻撃を確実に撃退することは期待できない。数個の弾頭を迎撃することができ、敵のミサイルの軌道を追跡して計算し、着弾地点に「弾頭が飛行中。隠れられそうなところに隠れろ」と警告を出すことができる程度だ。
防衛省の美しいプレゼンテーションの中にあるのは、今のところ、これだけだ。アメリカが再び計画遂行を頓挫させなければ、ミサイル防衛艦は5年後に建造される予定で、実戦配備されるのは、おそらく2030年になるだろう。それまでは、日本はミサイル攻撃に対してほとんど無防備なのである。
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