【視点】出生率向上の必須条件は、明日に自信を持てること

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4月1日、日本は子ども政策の中心機関となる「こども家庭庁」の設立を正式発表した。同庁は首相直属の機関であり、主に出生率を向上させるための戦略を策定する。日本の少子化問題は深刻だが、ロシアもまた、そこまで深刻ではないものの、同じ問題を抱えている。

「こどもまんなか」時代

こども家庭庁の発足にあたり、小倉將信こども政策担当大臣は「子どもの利益を第一に考えて政策を実践することで、日本全体が子どもや子育てに優しい社会になる『こどもまんなか元年』を、こども家庭庁主導のもとで実現できる年にしたい」と述べた。
日本政府は、給付金を増額するなど、より多くの子どもを持つよう促す試みを進めているが、日本の出生率は8年連続で低下し続けている。2022年の出生数は80万人の大台を割り込み、過去最低となった。専門家は出生数低下の要因として、高い生活費、物価高騰、都市部での育児支援不足を指摘する。子育てを助けてくれる親族から遠く離れ、大都市に住む夫婦が直面する問題だ。政府は、家族が地方に移住するための費用を負担する用意さえある。
一方、日本の若い女性は、十分な経済力のある男性と結婚できないことが原因で子どもを持たないケースが多く、だからといってシングルマザーになろうという人は少ない。日本は世界第3位の経済大国と言われているが、高い生活費と賃金の伸び悩みが相まって、多くの若者は、たとえ給付金があっても、家庭を持ちたいと思わなくなっている。また、日本だけの問題ではないが、若者が男女を問わず、意識的にこどもを持たない決断をすることも要因の一つである。
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財政政策で人口増加を起こせるか?

日本政府はこの問題を非常に懸念している。というのも、この状況が経済に打撃を与えているからだ。すでに多くの分野で労働力不足が叫ばれている。2023年度のこども家庭庁の当初予算は4.8兆円であり、2022年度第2次補正予算を加えると、5.2兆円となる。
日本政府は、経済的支援、保育サービス、柔軟な働き方の導入という3つの柱を頼りに、少子化対策に取り組むとしている。また、岸田首相は将来的な「子ども予算倍増」に向けた大枠を6月までに発表すると約束している。

日本は最下位、ロシアは中位。出生数が多い国ランキング

World Population Review」によると、人口1000人あたりの出生数で、日本は190カ国中、下から3番目。日本の数値は8人である。上位2カ国はアンゴラ(43.7人)とナイジェリア(43.6人)。中国、ノルウェー、アメリカ、イギリス、スウェーデン、オーストラリアは相対的に良い数値で、12人強。 ロシアは人口1000人あたり10.7人で、ランキングの真ん中に位置している。世界的な少子化は経済成長の鈍化を生んでいる。少子化の原因には、子育て費用が高いこと、家庭を持つよりキャリアを優先すること、平均初婚年齢が上がっていることがあると、専門家は上記の数字を説明している。
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経済的支援では、新たな子どもを産むインセンティブにならない

統計によると、2022年にロシアで生まれた子どもの数は1,306,162人で、2021年比で6.9%減少した。また、2023年に出生率が上がるような前提条件もないと専門家は言う。この問題とそれに対する取り組みを見ると、ロシアと日本には多くの共通点があると話すのは、人口移民地域開発研究所の審議会会長で、ロシア安全保障会議付属科学評議会のメンバーでもあるユーリー・クルプノフ氏である。同氏はスプートニクに次のように語った。
「共通点は多いのですが、違うのは、日本ではこの問題が最大の問題として扱われている点です。もちろん、国によって特殊性はありますが、数字だけで言えば、日本の統計では出生率は女性一人あたり1.38人で、ロシアは1.4人なので、大差ありません。単純に人口を維持するには、女性一人あたり2.15人の出生が必要です。
つまり、各家庭に最低でも2.5人の子どもがいなくてはならないのです。この数字は、今はロシアでも日本でも達成不可能です。両国とも、家庭と子どもへの支援を基本に、出生率を上げるためのプログラムや計画、戦略を策定していますが、経済的支援(ロシアでは「母親基金」と呼ばれている)は、子どものいる家庭を支援するツールではあっても、新たな子どもを産むためのインセンティブにはなりません。ついでに言うと、私は一律の子ども手当には反対です。というのも、ある人にとっては大幅な収入増になるかもしれませんが、裕福な家庭にとってはちょっとしたボーナス程度にしかならないからです」
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日本ではパラサイト・シングル、ロシアではシングルマザー

ユーリー・クルプノフ氏によれば、問題は家族制度の危機であり、ロシアや日本だけの問題ではなく、グローバルな社会文化的問題だという。クルプノフ氏は、出産を促すだけでなく、結婚も促さなければならない時期にきていると考える。
「先進国で起こっている少子化は、世界史上初めて、飢饉や疫病、経済破綻によらない出生率の低下です。もちろん、経済状況は第2子、第3子の出生には影響を与えますが、むしろ出生率が高いのは、医療が行き届かず、乳幼児死亡率も高い最貧国です。ロシアや日本では、多かれ少なかれ快適な環境にある若者自身が、家庭を持つことや、子どもを産むことを拒んでいます。日本にはパラサイト・シングルという言葉があります。これは結婚しないだけでなく、異性との関係も持たない30歳以下の若者たちのことです。
ロシアには別の問題があります。母親の40%がシングルマザーなのです。内縁関係にあたる「市民婚」も出産を妨げる要因となっています。籍を入れず、「市民婚」と称して同棲している人が多くいますが、これは法律に則った結婚と同等ではありません。実際、結婚が減ると出生数は減り、結婚が増えると出生数も増えるという法則があります。
さらに、いわゆる「チャイルドフリー」と呼ばれる概念もあり、キャリアに支障をきたす、自由が制限される、多額のお金がかかる、そもそも子育ては大変だなどの理由から、意識的に子どもを持たない決断をする人々がいます。これは、消費社会の大きな問題であり、世界的な問題です」

出生率向上の必須条件は、明日に自信を持てること

ロシアと日本の現在の出生率では、今の世代の人口を維持することはできず、それはすなわち労働力の減少につながるとユーリー・クルプノフ氏は言う。
「少子化による人口減少を受けて、ロシアも日本も外国人労働者を誘致せざるを得なくなっています。ロシアには、伝統的に出生率が高い旧ソ連のアジア諸国からの移民が、ロシアでも出生率を上げてくれるはずだという考え方があります。しかし、第一に、彼らは家族にとって不利な状況が生じれば、いつでも母国に戻ってしまいます。
さらに、第二に、ロシアで生まれた移民二世は、結婚しない、子どもを持たない、離婚が多い、シングルマザーが多い、という現在の傾向を踏襲するはずです。かつてロシアや日本にあった家父長的な大家族の制度を復活させることはできませんが、3〜4人の子どもがいる家族をあらゆる方法で支援し、宣伝し、育成することが必要です。こうすればうまく行くという普遍的な処方箋はどの国にもありません。しかし、出生率を上げるための必須条件は、人々が明日に自信を持てることだと思います」
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