https://sputniknews.jp/20230429/15840000.html
【ルポ】モスクワ国際映画祭受賞作品「この日々が凪いだら」常間地監督と主演俳優に聞く、自分たちの映画がロシアの観客に伝わった喜び 選考の決め手は?
【ルポ】モスクワ国際映画祭受賞作品「この日々が凪いだら」常間地監督と主演俳優に聞く、自分たちの映画がロシアの観客に伝わった喜び 選考の決め手は?
Sputnik 日本
... 2023年4月29日, Sputnik 日本
2023-04-29T09:04+0900
2023-04-29T09:04+0900
2023-04-29T09:04+0900
オピニオン
社会
文化
露日関係
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/07e7/04/1d/15839487_0:327:2730:1864_1920x0_80_0_0_2ff4884b19f77f748d76bdf8ac7df6d2.jpg
現在25歳の常間地さんは、映画撮影開始時には21歳という若さだった。もともとは多摩美術大学で演劇を学び俳優として活動していたが、映画の作り手側の視点をより理解したいという気持ちから、映画美学校にも1年間ダブルスクールで通った。実践的な課題にチャレンジするうち、作り手としての面白さにどんどん気づいていった。常間地さんは「(俳優か監督かという)明確に分かれ道があったわけではなく、進んでいたら今、ここにいるという感覚です」と振り返る。自身初の長編映画がコンペに選出されたと知り、常間地さんは、ロシア訪問を決断した。著名な映画祭に呼ばれてレッドカーペットを歩くのは、多くの映画人の憧れだ。若くしてその夢を叶えた常間地さんに、あらためて映画祭の意義を聞いてみた。「この日々が凪いだら」の脚本は監督自らが手がけ、役のイメージに合う人にオファーした。常間地さんと主演のサトウさんは、5年前に舞台で共演したことがきっかけで出会い、縁があり多くの時間をかけて作品を作り上げてきた。サトウさんも、自分でモスクワのお客さんの反応を見てみたいという気持ちで、ロシアにやって来た。サトウさんは、俳優としての自分には「本当に足りない部分が多い」と謙虚だ。「映画祭に来て、努力する基準が決まったというか、少しわかってきました。たくさんの作品に出るというよりも、コミュニケーションを取って、時間をかけてものづくりができる人と、作品を作り続けられたら幸せだと思います。心と身体がきちんと使われた作品を世に残していければ」と今後の抱負を話す。常間地さんにモスクワ滞在の感想を聞いてみた。「町と人」というテーマを重視する監督にとって、モスクワはインスピレーションを掻き立ててくれる場所だ。筆者は、モスクワ国際映画祭招待作品選考委員会メンバーのひとり、ニーナ・コチェリャエワさんに、映画選定の方法と、なぜこの映画を選んだのか話を聞いた。コチェリャエワさんはアジア地域の参加映画の選考にあたった。次回の常間地監督の長編は、孤独な女子高校生が主人公で、「記憶の音色」がつなぐ愛の物語だ。気が早いが、モスクワでいつか鑑賞できる日が来ることを待ちたい。関連ニュース
https://sputniknews.jp/20230428/15825755.html
Sputnik 日本
feedback.jp@sputniknews.com
+74956456601
MIA „Rossiya Segodnya“
2023
徳山 あすか
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/703/00/7030049_1221:210:2734:1722_100x100_80_0_0_5796415ffb2e68b4f94b15ab20b3f111.jpg
徳山 あすか
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/703/00/7030049_1221:210:2734:1722_100x100_80_0_0_5796415ffb2e68b4f94b15ab20b3f111.jpg
ニュース
jp_JP
Sputnik 日本
feedback.jp@sputniknews.com
+74956456601
MIA „Rossiya Segodnya“
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/07e7/04/1d/15839487_0:0:2730:2048_1920x0_80_0_0_ceb841e68584ab0af88ac725f55d532d.jpgSputnik 日本
feedback.jp@sputniknews.com
+74956456601
MIA „Rossiya Segodnya“
徳山 あすか
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/703/00/7030049_1221:210:2734:1722_100x100_80_0_0_5796415ffb2e68b4f94b15ab20b3f111.jpg
オピニオン, 社会, 文化, 露日関係
【ルポ】モスクワ国際映画祭受賞作品「この日々が凪いだら」常間地監督と主演俳優に聞く、自分たちの映画がロシアの観客に伝わった喜び 選考の決め手は?
世界四大映画祭のひとつ、第45回モスクワ国際映画祭が4月27日に閉幕した。日本からはメインコンペティション部門に「この日々が凪いだら」が選出され、ダブル主演をつとめた瀬戸かほさんが最優秀女優賞を獲得した。映画祭会期中、モスクワに滞在した常間地裕(つねまち・ゆたか)監督と、主役の宮嶋大翔を演じたサトウヒロキさんに、どんな気持ちでロシア訪問を決めたのか、映画祭に参加した感想や、今後の抱負について話を聞いた。
現在25歳の常間地さんは、映画撮影開始時には21歳という若さだった。もともとは多摩美術大学で演劇を学び俳優として活動していたが、映画の作り手側の視点をより理解したいという気持ちから、映画美学校にも1年間ダブルスクールで通った。実践的な課題にチャレンジするうち、作り手としての面白さにどんどん気づいていった。常間地さんは「(俳優か監督かという)明確に分かれ道があったわけではなく、進んでいたら今、ここにいるという感覚です」と振り返る。
自身初の長編映画がコンペに選出されたと知り、常間地さんは、ロシア訪問を決断した。
「この映画は、日本の変化の中にいる若者たちの日常を描いた物語です。この作品が、国も文化も言語も違う人たちにどう届くのだろう、その反応を知りたいという、純粋にその気持ちでやって来ました。初の一般上映が終わったとき、お客さんが声をかけてくれ、(言葉がスムーズに伝わらない中でも)なんとか思いを伝えようとしてくれました。『センシティブ』(繊細)という言葉が何回か聞こえて、自分たちが大事にしていた部分を汲み取ってくれた、ちゃんと伝わっていたんだ、自分たちの映画が届いたんだと思ってすごく嬉しかったです。上映が終わって会場で拍手が起こった時は、感動しました。」
著名な映画祭に呼ばれてレッドカーペットを歩くのは、多くの映画人の憧れだ。若くしてその夢を叶えた常間地さんに、あらためて映画祭の意義を聞いてみた。
「映画祭は、一人でも多くの方に見てもらうために必要な場所。この場を通すことで、作品がより広がるきっかけになります。そして、映画はみんなで作っているものですが、自分の作品や世界、自分の作りたいもの、信じているものを認めてもらえたという事実が、これから先映画を作るにあたって、とても自信になります。『あなたの映画の世界、視点を、そのまま続けていいんだよ』と、背中を押してくれる場所だなと思いますね。」
「この日々が凪いだら」の脚本は監督自らが手がけ、役のイメージに合う人にオファーした。常間地さんと主演のサトウさんは、5年前に舞台で共演したことがきっかけで出会い、縁があり多くの時間をかけて作品を作り上げてきた。サトウさんも、自分でモスクワのお客さんの反応を見てみたいという気持ちで、ロシアにやって来た。
「最初は夢を見ているようで、実感がありませんでした。でも、映画を大きなスクリーンで見て、お客さんが感想を直接伝えてくれ、言語や文化を超えてこの映画が届いていけることを実感して、その日は安心してよく眠れました。お客さんの中に、自分の父親のことや生活のこと、友達のことをとても考えた、と言ってくれた人がいたのが、印象に残っています。自分もそういったことで悩んだりもするので、そういう部分は共通しているんだなと感じました。
僕としては芸術や音楽作品など、表現するものに対して『評価』は必要ないと思っています。ただ、映画祭というのはひとつの基準であり、基準をつくることで、より良い作品が生まれやすくなり、作品の届く範囲も広がっていくと思います。特定の映画祭での評価が絶対ではありませんが、ひとつの基準があることで、そこを目指したり、また次のチャンスに繋がる、そういうものだと思っています。」
サトウさんは、俳優としての自分には「本当に足りない部分が多い」と謙虚だ。「映画祭に来て、努力する基準が決まったというか、少しわかってきました。たくさんの作品に出るというよりも、コミュニケーションを取って、時間をかけてものづくりができる人と、作品を作り続けられたら幸せだと思います。心と身体がきちんと使われた作品を世に残していければ」と今後の抱負を話す。
常間地さんにモスクワ滞在の感想を聞いてみた。「町と人」というテーマを重視する監督にとって、モスクワはインスピレーションを掻き立ててくれる場所だ。
「どこも新鮮で、建物や緑を見ているだけで楽しいです。話には聞いていましたが、地下鉄のエスカレーターが本当に速いです(笑)劇場もたくさんあり、芸術が身近な場所だと感じました。叶うことならこの町で、この町に生きている人たちの物語を撮ってみたいです。公園のベンチや並木道、オープンテラス、路地裏も含めて面白いです。自分の中でモスクワは、ちゃんと『生活』がある町だと感じました。町歩きしながら作品が撮れるんじゃないかと思います。」
筆者は、
モスクワ国際映画祭招待作品選考委員会メンバーのひとり、ニーナ・コチェリャエワさんに、映画選定の方法と、なぜこの映画を選んだのか話を聞いた。コチェリャエワさんはアジア地域の参加映画の選考にあたった。
「選び方は人によって違います。2、3分見ると、最後まで見る価値があるかないかは分かるものですが、私はいつも最初から最後まで見ることにしています。というのは、1回だけ、私の同僚がある映画の最初の10分と最後の10分を見て、選ぶ価値なしと判断したことがありました。しかし他の映画祭でその映画を見たら、非常に調和が取れていたんです。間を飛ばしたりしないで全部見るのは、その経験をふまえているからです。
私は2019年に日本を訪問しました。なぜこの映画を推薦したかというと、日本の文化、日本の精神、そのものが映し出されていると思ったからです。日本の現代社会の雰囲気を小説や詩のように反映しています。これをモスクワで見せることは重要であると思いました。この映画祭は伝統的に、若い才能を見出すことに重きを置いています。この方針は今後も続けられるべきです。この映画祭は後に世界レベルの巨匠となる人を輩出してきました。若い人にチャンスと機会を与え、そしてその後、どうキャリアを発展させていくかを見ていきたい。世界の映画界のもっと大きい舞台で活躍して、その才能を世界で最初に認めたのはモスクワ国際映画祭だったということになってくれたら嬉しいです。」
次回の常間地監督の長編は、孤独な女子高校生が主人公で、「記憶の音色」がつなぐ愛の物語だ。気が早いが、モスクワでいつか鑑賞できる日が来ることを待ちたい。