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【視点】日本の自衛隊をとりまく状況 志願者はいるのに、採用されない
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... 2023年5月10日, Sputnik 日本
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2022年11月の時点で、自衛隊の隊員数は23万3300人で、全体の6%、つまり1万4000人の不足と評価されている。2018年のデータによれば、自衛隊の人員数は24万7100人となるべきであるところ、勤務しているのは22万6700人で、およそ2万人不足した状態であった。人員不足は自衛隊の戦闘能力を低下させ、将来的には、複数の部隊で、司令官や兵器、装備、営舎はあっても、勤務する自衛官がいなくなってしまうという脅威を生んでいる。そのような部隊は、必要に迫られても、戦うことができない。自衛隊で働ける人材はあるこうした入隊状況の悪化により、その原因追求のための話し合いが行われている。日本のメディアでは、その主な原因は人口動態問題と出生率の低下であるという意見が散見される。確かに日本の人口は減少しつつある。しかし、この問題に関しては、この結論に同意することはできない。というのも、2018年、18歳から26歳までの人口はおよそ1100万人で、そのうちの550万人が男性であった。その後、自衛隊の採用年齢が26歳から32歳までと拡大され、応募できる人の数がやや増加した。550万人の男性から、9200人を自衛官として採用するのが難しい原因は、一体どこにあるのか。しかも、自衛隊はかなり積極的に女性自衛官も採用しているのである。また2020年以降、防衛省は幹部の定年を延長した。たとえば、1佐はそれまで56歳だったのが、2021年からは57歳に延長されている。今、挙げたような措置を併せれば、自衛官の採用にそれほど大きな問題はないように思われる。召集をかければ、日本は200〜300万人規模の軍を創設する可能性がある。一方、大日本帝国軍の人員は1941年に175万人、1945年には610万人であったが、1941年の人口は7270万人で現在の57.9%だった。自衛隊入隊は大学入試のようなもの「防衛白書」には、自衛隊員の応募と採用に関する詳細なデータが掲載されている。そのデータは、応募・採用の区分、部隊の種類に分けて、応募人数、採用人数が示されているが、なぜか合計数は書かれていない。一方、2019年から2021年にかけての同じデータは、驚くべきことに、すべての区分の合計が示されているのである。つまり、2019年に採用されたのは、応募した人のうちの16.3%、2020年は17.6%、そして2021年は15.6%というわけである。自衛隊での勤務、あるいは防衛大学校などへの進学を志望している100人のうち、実際に自衛隊に入隊できるのは平均でわずか16人なのである。これは、自衛隊入隊の倍率がかなり厳しいものであり、平均で84%もの応募者が、自衛官の候補に採用されないということを意味する。言い換えれば、自衛隊に入るのは簡単ではなく、その倍率は難関大学と同様、6.3倍だということだ。たとえば、世界最高の大学で上位10位に入る東京大学の倍率は2022年、3.2倍であった。防衛省は社会に対し、自衛官の採用になぜこれほど厳しい選抜を行うのか説明する必要があるだろう。体力的な面での状態が十分でないというのが理由だというかもしれない。しかし、規則正しい食事と自衛隊員としての生活、定期的な訓練で、体力は大幅に向上させることができる。あるいは、志願者にはしかるべき学歴が備わっていないというかもしれない。しかし、自衛隊には、きわめて複雑なものを含め、さまざまな専門性の進んだ教育システムがあり、入隊してから学ぶことができるのである。何しろ毎年、8万人以上が自衛隊への入隊を希望しているのだ。候補生への条件を少し下げれば、人員不足を補うことができるはずだが、それが行われていないのである。2022年の予測を見ると、志望者数は増加している。つまり、日本の中には自衛隊への入隊を望む人はいるのに、入れないという状況となっているのである。これが導き出せる唯一の結論である。これは日本の防衛力の低下なのかもう1点、指摘しておきたいことは、近年、岸田文雄首相は日本と中国との対立を招くような防衛政策を取っている点である。日本は中国抑止を目的としたさまざまな協定に参加している。しかし、もし地域で紛争が起こった場合、中国人民解放軍と事実上、1対1で対峙することになるのはまさに自衛隊なのである。台湾軍は、勝つ見込みもなく、自国を守るのに必死であり、韓国軍は、増強しつつある北朝鮮軍との戦いにかかりきりになる。地域には米軍部隊は少なく、これが増強される可能性は、少なくとも、今すぐはない。そこで、自衛隊は、人員数が10倍で、兵器や装備でも圧倒的に優勢な中国軍と激突する可能性があるということである。こうした状況で、自衛隊への採用条件を厳しくし、人員不足を招いていることは、日本の防衛力の低下とみなすことができる。そして疑問は一つ、それは何のためなのかということである。
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【視点】日本の自衛隊をとりまく状況 志願者はいるのに、採用されない
2023年5月10日, 19:40 (更新: 2023年5月11日, 16:23) 2023年4月末、2022会計年度の自衛官の募集・採用状況が発表されたが、その内容はきわめて芳しくないものとなっている。9245人の採用が予定されていたが、実際に採用されたのはおよそ4300人で、これは計画の46.5%となっている。おそらく、これは2018会計年度に記録された、計画の72%という数字を大幅に下回るものであり、これ以上、状況が悪くなることは考えにくいほどである。そしてこれはいうまでもなく、日本の防衛にとっての深刻な損失である。
2022年11月の時点で、
自衛隊の隊員数は23万3300人で、全体の6%、つまり1万4000人の不足と評価されている。2018年のデータによれば、自衛隊の人員数は24万7100人となるべきであるところ、勤務しているのは22万6700人で、およそ2万人不足した状態であった。人員不足は自衛隊の戦闘能力を低下させ、将来的には、複数の部隊で、司令官や兵器、装備、営舎はあっても、勤務する自衛官がいなくなってしまうという脅威を生んでいる。そのような部隊は、必要に迫られても、戦うことができない。
こうした入隊状況の悪化により、その原因追求のための話し合いが行われている。日本のメディアでは、その主な原因は人口動態問題と出生率の低下であるという意見が散見される。確かに日本の人口は減少しつつある。しかし、この問題に関しては、この結論に同意することはできない。というのも、2018年、18歳から26歳までの人口はおよそ1100万人で、そのうちの550万人が男性であった。その後、自衛隊の採用年齢が26歳から32歳までと拡大され、応募できる人の数がやや増加した。550万人の男性から、9200人を自衛官として採用するのが難しい原因は、一体どこにあるのか。
しかも、自衛隊はかなり積極的に女性自衛官も採用しているのである。また2020年以降、防衛省は幹部の定年を延長した。たとえば、1佐はそれまで56歳だったのが、2021年からは57歳に延長されている。今、挙げたような措置を併せれば、自衛官の採用にそれほど大きな問題はないように思われる。召集をかければ、日本は200〜300万人規模の軍を創設する可能性がある。一方、大日本帝国軍の人員は1941年に175万人、1945年には610万人であったが、1941年の人口は7270万人で現在の57.9%だった。
「防衛白書」には、自衛隊員の応募と採用に関する詳細なデータが掲載されている。そのデータは、応募・採用の区分、部隊の種類に分けて、応募人数、採用人数が示されているが、なぜか合計数は書かれていない。一方、2019年から2021年にかけての同じデータは、驚くべきことに、
すべての区分の合計が示されているのである。
| 応募者数 | 採用者数 |
2019 | 94547 | 15504 |
2020 | 84754 | 14947 |
2021 | 84682 | 13280 |
つまり、2019年に採用されたのは、応募した人のうちの16.3%、2020年は17.6%、そして2021年は15.6%というわけである。
自衛隊での勤務、あるいは防衛大学校などへの進学を志望している100人のうち、実際に自衛隊に入隊できるのは平均でわずか16人なのである。
これは、自衛隊入隊の倍率がかなり厳しいものであり、平均で84%もの応募者が、自衛官の候補に採用されないということを意味する。言い換えれば、自衛隊に入るのは簡単ではなく、その倍率は難関大学と同様、6.3倍だということだ。たとえば、世界最高の大学で上位10位に入る東京大学の倍率は2022年、
3.2倍であった。
防衛省は社会に対し、自衛官の採用になぜこれほど厳しい選抜を行うのか説明する必要があるだろう。体力的な面での状態が十分でないというのが理由だというかもしれない。しかし、規則正しい食事と自衛隊員としての生活、定期的な訓練で、体力は大幅に向上させることができる。あるいは、志願者にはしかるべき学歴が備わっていないというかもしれない。しかし、自衛隊には、きわめて複雑なものを含め、さまざまな専門性の進んだ教育システムがあり、入隊してから学ぶことができるのである。何しろ毎年、8万人以上が自衛隊への入隊を希望しているのだ。候補生への条件を少し下げれば、人員不足を補うことができるはずだが、それが行われていないのである。
2022年の予測を見ると、志望者数は増加している。つまり、日本の中には自衛隊への入隊を望む人はいるのに、入れないという状況となっているのである。これが導き出せる唯一の結論である。
もう1点、指摘しておきたいことは、近年、岸田文雄首相は日本と中国との対立を招くような防衛政策を取っている点である。日本は中国抑止を目的としたさまざまな協定に参加している。しかし、もし地域で紛争が起こった場合、中国人民解放軍と事実上、1対1で対峙することになるのはまさに自衛隊なのである。
台湾軍は、勝つ見込みもなく、自国を守るのに必死であり、韓国軍は、増強しつつある北朝鮮軍との戦いにかかりきりになる。地域には米軍部隊は少なく、これが増強される可能性は、少なくとも、今すぐはない。そこで、自衛隊は、人員数が10倍で、兵器や装備でも圧倒的に優勢な中国軍と激突する可能性があるということである。こうした状況で、自衛隊への採用条件を厳しくし、人員不足を招いていることは、日本の防衛力の低下とみなすことができる。
そして疑問は一つ、それは何のためなのかということである。