【視点】米海軍 艦船の修理の必要に迫られる

CC BY-SA 3.0 / Jelson25 / Aerial Bremerton Shipyardピュージェット・サウンド海軍造船所
ピュージェット・サウンド海軍造船所 - Sputnik 日本, 1920, 06.06.2023
サイン
2023年3月、日本の造船所で米軍の艦船の修理を提案したのは、ラーム・エマニュエル駐日米国大使である。そして現在、横須賀基地の造船所で、米海軍第7艦隊の艦船の修理が行われている。この作業には日本の請負業者と作業員が参加している。そして、原子力空母と潜水艦を除く米海軍のあらゆる艦船が、修理のために日本に送られることが想定されているほか、日本の造船所で米海軍のための補助船を建造する可能性についても検討されている。

修理にも色々ある

最初に軍艦の修理にはさまざまな種類があることを述べておく。修理と一言でいっても実に色々あり、それにより必要となる設備も異なる。
たとえば、ロシアでは、船の修理は29種類に区分され、それが6つの大きなカテゴリーに分けられる。航海間の修理、ナビゲーションの修理の2つは乗組員と海軍基地の船舶修理工によって行われる。これは故障箇所を修繕し、船舶の航行状態を維持するために、海上の航行と航行の間に部品の交換を行ったりするものである。
一方、ドック修理というのは、船底部分のチェック、清掃、塗装、そして破損の修理や穴の封印などを行うものである。このタイプの修理は、船舶修理工場のドックや海軍基地のドックで行われる。たとえば、米海軍第7艦隊は横須賀基地に独自のドックを持っている。メンテナンス、中規模の修理、緊急修理は船舶修理工場で行われ、この作業には艦船の設備の解体を伴う。この修理を行う際、艦船は修理が終わるまで、現役から予備艦隊に移される。この修理作業では、機械、設備、兵器の点検、故障した部品や機材、船体部分の交換も行われる。ときに、修理の際に、新たな兵器や設備が設置されるなど、改良が行われることもある。
このように、船舶修理工場で行われる船の修理というのは、大変な作業であり、かなり困難で長期的なものである。これまで米軍はこのような艦船の修理を自国の造船所で行なっていた。しかしこの修理を外国の造船所に移すというプロセスが始まったのには、大きな理由がある。
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米国の造船所では対処できない

あらゆることから判断して、米海軍の軍事技術力にはかげりが見られる。
まず、米海軍に属する多くの老朽化した造船所が改修のために閉鎖されている。次に、必要な作業を行うための修理の設備や技術が不足している。
修理が終わっていない艦船の規模は金額にして18億ドルに上っている。これはきわめて大きな額である。比較のために書くと、2021年、米海軍の船舶の航行および戦闘能力と装備の維持にかかった費用は740億ドルであった。この事実だけを見ても、米国の造船所が米艦隊から注文を受けた作業を対処できていないことがわかる。
そこで、米海軍はすでに、艦隊の艦船を修理するため、外国の造船所を利用している。2022年4月には、インドとの間で合意を結んでおり、2022年8月には、米海軍の貨物弾薬補給艦チャールズ・ドリューが、小規模な修理を行うため、インド・チェンナイのカトゥパリ工場に運ばれた。また2023年3月にも同じ工場で、補給艦マシュー・ペリーの修理と改修が行われた。
今のところ、インドの造船所で修理が行われているのは、艦隊の補助船であり、艦船というよりも民間船であるが、米海軍の船舶修理の需要は高まる一方である。

艦隊の「共食い」

複数の情報によれば、艦隊の船の稼働状況はこの10年で非常に悪化し、それにより船は修理の必要性に迫られることが多くなっている。
たとえば、新型戦闘機F-35B を搭載できる8隻のワスプ級揚陸艦は以前よりも頻繁に故障するようになっている。2011年の故障件数は1隻当たり平均11件だったのに対し、2021年には61件となった。これは戦闘能力を下げるような故障である。
米議会附属会計検査院の調査によれば、151隻の艦艇のうち、深刻な故障の数は2011年には1隻あたり平均22件だったのが、2021年には36件にまで増加した。
このような故障の増加は、船舶の老朽化と摩耗によって説明することができる。しかし、時宜よくメンテナンスと修理をおこなっていれば、たとえ古くても、艦船の戦闘能力を維持することは可能である。
しかし、会計検査院の資料には、米海軍はいわゆる「共食い」を実践していると指摘されている。これは艦隊の倉庫の予備の部品がかなり不足している条件の下、ある船舶の修理をするために、別の船から部品を外し、使用するということを意味する。こうした修理の仕方をしている例は2011年から2021年にかけて、艦隊全体で6回増加、いくつかの階級ではさらに多くなっている。
米海軍艦隊は、激しい劣化や設備や船の故障につながる事実によく直面している。それは任務や演習で酷使されていること、また嵐や海上事故などによって損害を被っていることなどである。しかし、簡単に修理できるようなものですら、部品がかなり不足していることから修理されないままになっている。
船が航行に出なければならないときの急ぎの修理は、「共食い」の手法で行われる。そうして船舶は少しずつ、本格的な修理を必要とする状態に行き着くのである。
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米軍将官の無能さ

米海軍司令部は芳しくない展望に直面している。中国との戦闘が起これば、米艦隊の大部分が修理を待たなければならない状況となるのである。米海軍には293隻の艦船があるが、そのうちいつでも戦闘を行える船は75隻以下である。そこで、修理のためにあらゆる造船所を用いるというアイデアが浮かんできたのである。日本でも、韓国でも、インドでも構わないというスタンスである。とにかく修理さえできれば良いのである。
なぜなら、船舶修理工場の壁に係留された艦隊で戦争に勝つことはできないからである。いうまでもなく、これは危機的状況であり、世界、とりわけ太平洋地域における米軍の軍事力を根本的に損ねるものである。
米国は艦隊がなければ、全てを失うだろう。一見、技術的なものに思われるこの問題は、より大きな、あるいはグローバルな政治的変化をもたらす可能性がある。さらに、こうした損失を艦隊にもたらしたのは敵でもなければハリケーンでもなく、自国軍の艦船のメンテナンスや修理をきちんと行ってこなかった司令部自身なのである。
たった一度の「共食い」も危険なことであり、船舶の管理が不十分であることを物語っている。しかし、米軍艦隊ではそのような現象が何年にもわたって起きており、「共食い」は全ての等級の船に対し、行なわれている。日本の造船所がこの問題解決において米海軍を助けることはできないだろうと予測する十分な根拠がある。それは、問題の根本は、米艦隊の司令部の無能さにあるからだ。
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