【特集】ロシアから日本へ旅行者が急増!日本観光ブームの裏で何が起こっているのか、業界関係者に徹底インタビュー

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日本、観光(アーカイブ写真) - Sputnik 日本, 1920, 20.07.2023
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日本政府観光局が19日に発表した6月の訪日外国人は207万3300人で、コロナが拡大した2020年の2月以降、はじめて200万人を超えた。また、2023年上半期の累計は1071万2000人に達した。ロシアからも、観光で訪れる人が増えている。ロシア旅行産業協会は6月の段階で、日本行きパックツアーの販売は激増しており、2019年のコロナ前の水準まで回復していると発表した。日露関係が悪化し、モスクワ=東京間の直行便も途絶えているのに、なぜロシア人は日本へ向かうのか?本当に旅行者はそこまで増えているのか?関係者に話を聞くと、意外な実態が見えてきた。
モスクワで、日本を含むアジアの国々への旅行を斡旋している「Ask me about Asia」プロジェクトの創設者で代表のユリア・シャポシニコワさんに話を聞いた。シャポシニコワさんによると、もともと日本旅行の人気は安定的で、リピーターも多かったが、現在の需要はコロナ前よりも大きいと感じているという。

「例年、(紅葉を見るため)秋に人気が高まり冬には落ち、春は桜目当てのお客さんでいっぱいになる、というパターンでした。ところが昨年秋から今年5月末にかけては、ずっと旅行者が行き続けていました。多いのは家族連れや、40~50代の、経済的に余裕のある人たちです。彼らは自分のビジネスを持っていたり会社でも高い地位についていたりするので、わりと時間が自由になり、2週間くらいかけて3~5都市をまわる人が多いです。

コロナ前の話ですが、最短記録としてはチャーター機で4日間だけ日本に行った人もいました。私たちは、東京や京都という定番の都市以外をツアーに組み込み、多様な日本を見てもらうようにしています。箱根、金沢、浜松、倉敷、広島、長野などです。また、温泉旅館を行程に含むようにしています。温泉という素晴らしい文化を知るとともに、温泉そのものがとても美しいので、その美的なデザインを楽しんでもらいます。」

このような旅行が実現できているのは、日本の観光ビザを問題なく取得できているからだ。シャポシニコワさんは「ヨーロッパ方面と違って、無理難題やいちゃもんをつけられることは全くありません。在ロシア日本大使館領事部には、大変感謝しています」と話す。提出書類にさえ問題がなければ、きっちり期限内にビザを取ることができる。また、これまではモスクワから中東経由で日本へ飛ぶことが多かったが、中国の航空会社のモスクワ便復活により、北京や上海を経由して日本へ行く人が急増している。
さて、観光客の呼び込みに対して日本と全く別の戦略をとっているのが、ロシアに制裁しているはずの韓国である。シャポシニコワさんは両者の違いを指摘する。
「弊社では韓国やシンガポール、香港なども扱っています。これまで韓国は存在感が薄くて旅行先の候補に挙がることは少なかったのですが、このタイミングで韓国は、国策として非常に多くの広告費を割くようになりました。今、日本政府観光局のモスクワオフィスは、残念ですがマーケティングやキャンペーン等の通常活動ができないでいます。その一方、韓国は予算を増やし、日本の強力なライバルとして浮上してきています。とはいえ日本に行きたい人の方がまだまだ多いです。」
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訪日ロシア人観光客数が急回復 コロナ前の水準に近づく
日本では、コロナ禍による旅行業界の人手不足により、様々な問題が起きている。VIPクラスのロシア人旅行者にオーダーメイド旅行の手配を行っている、「Inari travel」社長のセルゲイ・ストリグノフさんに、どのようなミスマッチがあるのか教えてもらった。

「VIPの方たちは、人数だったり行先だったり、直前に何か変えることが多いですが、ハイヤーの数が少ないので、そういった要望に柔軟に対応できないこともあります。車があっても運転手がいないことも。4月は旅行者が多く、5月は広島でG7サミットがあり、車は本当に少なかったです。でも今は7月で、これといった国際的な行事はないはずなのに、それでも車がありません。弊社では信用できるハイヤー会社にお願いしていますが、同業者からは、新規のハイヤー会社では運転手は韓国人や中国人で、教育というかサービスレベルが足りない、とも聞いています。

また、高級ホテルのコンシェルジュに頼んでも、経験が浅い人だったり、何かを問い合わせても、通常なら回答は遅くても24時間以内に来るところ、2、3日かかることもあります。レストラン一つにしても、今年の春はロシア人のみならず外国人のお客さんがとても多く、VIPはみんな一番良い店に行きたがるので、なかなか予約が取れません。」

ストリグノフさんのお客さんは、時間を節約するためヘリコプターをチャーターしたがる。ドバイやヨーロッパ、アメリカなどでは一般的でも、日本では難しい。
「そもそも観光用のヘリの数が少なく、値段が張るうえに、80年代~90年代の古いものばかりで、修理中で使えないこともあります。ロシア人は日本=すごい国のイメージがあるので、皆さんショックを受けてしまいます。例えば京都に泊まって香川県の直島に日帰りで行きたいという方がいました。新幹線だと岡山まで行き、そこから港まで1時間くらいかけて行って、さらにフェリーに乗らないといけませんが、ヘリなら40分で行けます。高野山から京都まで、車なら2時間、ヘリなら30分です。移動時間を短縮したいというニーズはとても大きいです。」
また、VIPクラスの旅行となると、中国の航空会社は選択肢に入らなくなる。ストリグノフさんによれば、安いことは安いが、お客さんの求めるサービスレベルに達さない、というのがその理由だ。
シカ - Sputnik 日本, 1920, 04.06.2023
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新型コロナのパンデミックの影響で 奈良公園のシカの「おじぎ」の回数が減少
このように様々な問題はあるものの、最終的には、おおむね多くの人が満足して帰っていく。最近、シベリアの町オムスクに住む企業家のビクトル・シクレンコさんは、会社の友人らと8人で、日本に2週間滞在した。

「大使館の方に、ビジネス目的で行くのではないですか?と何度か尋ねられましたが、純粋に観光旅行でした。ビザもスムーズに発行してもらえました。私たちはウズベキスタンを経由して東京に飛び、ミニバンをレンタルして、途中で色々な町に滞在しつつ京都を目指しました。私たち全員にとってこれが初めての日本でした。

日本で一番驚いたことは、全てが隣り合っていることです。例えば現代的なビルと、小さな庭がついた築100年かと思うような一軒家が隣り合っていたりします。東京でさえも緑が多く、空気がきれいでした。日本のエコロジーは素晴らしいレベルです。木や石で作られた、よく手入れされた寺社、お城も私たちを驚かせました。今は世界中に日本食レストランがありますから、日本料理とはこういうものだろうというイメージはあったのですが、実際試してみるとすごく気に入りました。日本食というのは実に多様であり、私たちが思っているほど高価ではありませんでした。しかも各地で味、風味が違いました。

日本では何をするにも正確で規律正しく、丁寧で繊細で、何かを押し付けられるということがありませんでした。他の外国でよくあるように、観光客目当ての場所で、両替を迫ってきたり、押し売りしてきたりする人はいませんでした。サービスも行き届いて非の打ち所がなく、ロシアで発行した銀聯(ユニオンペイ)カードで支払うことができたので驚きました。ロシア嫌悪、ロシア・アレルギーにも、一度も遭遇しませんでした。日本の人々は、我々がどこから来たのか全く気にしていないように思いました。」

ここまで主にツアー旅行についてお伝えしてきたが、日本政府観光局によると、今年1月から6月の間に訪日したロシア人の数は16200人で、2019年上半期(55940人)と比べると7割も少なく、同年との月ごとの比較では20%から40%の間にとどまっている。つまりは個人やビジネス目的での訪問、文化交流などが激減したと考えられる。日本航空は2024年度夏季ダイヤから羽田=ドーハ線を新規開設する。モスクワとドーハでの乗り継ぎの利便性によっては、さらに日本へ行く手段の選択肢が増えるかもしれない。シャポシニコワさんによると、今秋はもちろんのこと、来年の春の予約もどんどん入っているという。日本ツアーの人気は、堅調そうだ。
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