【視点】台湾の平和のための「戦う覚悟」は戦争を近づけるのか

© 写真 : Office of the President Republic of China(Taiwan)蔡英文総統と会談する麻生副総裁
蔡英文総統と会談する麻生副総裁 - Sputnik 日本, 1920, 09.08.2023
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台湾海峡の平和と安定を維持するためには、強い抑止力を機能させる必要があり、そのために、日本、米国、台湾が「戦う覚悟」を見せることが必要である。台湾を訪問した自民党の麻生太郎副総裁はこのような認識を明らかにした。
日本の政治家によるこうした発言はどのような危険を孕んでいるのか、また日本の政治家らは中国に対し、今、どのような新たなメッセージを発しているのか、「スプートニク」が専門家に取材した。
ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所、日本研究センターのワレリー・キスタノフ所長は、麻生氏の発言は間違いなく中国から大きな非難を浴びることになるだろうと指摘し、次のように述べている。

「日台関係史(1972年の断交後)において、与党の現副総裁がこのような訪問を行ったことは一度もありませんでした。しかも麻生太郎氏は安倍首相時代、外相を務め、また過去には総理大臣だったこともある人物です。つまり、政治家として大きな影響力を持っているのです。

 そこで今回の麻生氏の台北訪問は、現在の台湾情勢の下で、「重要な意味」を持つ前例のない出来事だと言えます。すなわち、麻生氏はこれまで日本の政治家たちがより曖昧にしていた日本の政策の方向性を示したというわけです。

 特に今、中国は台湾をめぐってますます攻撃的な態度をとっています。中国は大陸と台湾との統一を目指していると宣言し、必要があれば武力を行使する可能性も除外しないとしています」

米兵士(アーカイブ) - Sputnik 日本, 1920, 18.07.2023
【視点】台湾有事に際し、日本は参戦不可避か
言い換えれば、日本は米国と同様に、紛争に向けた動きが強まっていると考えているのである。

「2027年に中国の習近平国家主席は4期目就任を迎えます。習近平氏は、それまでに、他の候補者の前で、台湾統一を自身の外交努力の主要な成果として発表しなければならないのでしょう。中国政府にとって、これは今、もっとも重要な問題です。というのも、米国はナンシー・ペロシ氏の台湾訪問以降、台湾に対する支援を強化しているからです。そこで日本も、米中間で台湾をめぐる戦争が起こった場合、日本が参戦せざるを得なくなるという考えにより傾きつつあるのです」

しかも、台湾の安全は日本の安全であるという事実をより強調するようになっている。もっとも、こうした考え方を初めて口にしたのは、亡くなった安倍首相である。というのも、台湾はかなり以前から、中国抑止のための手段として使われてきたからである。つまり、地域の安全を分割することはできず、台湾は日本自身の安全に対する「鍵」なのだとキスタノフ氏は述べている。

「とりわけ日本政府は、もし台湾が平和的な手段によって中国大陸に統一されたとしても、台湾海峡および台湾とフィリピンを隔てるバシー海峡を中国が管理下に置くことになることに懸念を抱いています。これらの海峡を経由して、中東やその他の国から、およそ90%のエネルギー資源と60%の食糧が日本に運ばれているからです。

 日本のさまざまな問題をめぐる状況が、台湾情勢に大きく左右されているのです。もし中国が必要だと見なせば、この地域での日本の『酸素の通路を遮断する』こともあり得るからです。ですから、日本の政治家からは、軍事力の行使を含め、中国抑止の必要性に関する声が高まっているのです。そして日本はこれに向けて積極的に動いており、そのことは、国家安全と防衛戦略に関する最近の文書にも反映されています」

総統府で会談した麻生副総裁と蔡英文総統 - Sputnik 日本, 1920, 08.08.2023
【まとめ】麻生副総裁、蔡英文総統と会談 台湾有事の阻止で一致
そうした文書の中で、中国は事実上、日本の安全を脅かす主要な軍事的脅威であり、最大の危険であると位置付けられている。そしてこれを理由に、日本は国の防衛力を精力的に増強―攻撃兵器を配備し、防衛費をGDPの2%にまで増額し、与那国島を含め、台湾に近い島々の防衛を強化している。
つまり、日本は現在、中国に平和を呼びかけるだけでは不十分だと考えているのである。そして麻生太郎氏は、今、中国からの軍事的脅威について、また中国抑止の必要性について公に口にするようになったのだとキスタノフ氏は指摘している。一言でいえば、日本政府はラテン語の警句「Si vis pacem, para bellum=平和を望むのであれば、戦争への備えをせよ」を実践しようとしているのである。
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