【特集】日本のロシア料理店オーナー 「心からもてなし、おなかいっぱい御馳走するのはうちの家族の習わしなんです」

© 写真 : Twins田中ダイアナ(ザヤルナヤ)さんと斎木エレーナ(ザヤルナヤ)さんも
田中ダイアナ(ザヤルナヤ)さんと斎木エレーナ(ザヤルナヤ)さんも - Sputnik 日本, 1920, 22.09.2023
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神奈川県川崎市多摩区。世田谷区と隣接する、この場所にこの夏、8月20日にロシア料理とスラヴ料理のレストラン「Twins」がオープンした。 両方の料理はとてもよく似ているが、違いもある。そういうところはレストランのオーナーシェフである双子の姉妹、田中ダイアナ(ザヤルナヤ)さんと斎木エレーナ(ザヤルナヤ)さんも同じだ。 二人ともウラジオストック出身で、20年以上日本に住んでいる。スプートニクは、姉妹の一人田中ダイアナさんに、現在の日露関係が困難な状況の中、どのような経緯でレストランを開くことにしたのか、語っていただいた。
スプートニク:レストランを開くことは長年の夢だったのですか、それとも思いつきでオープンとなったのでしょうか?
田中ダイアナさん:姉と私にとって自分たちのレストランを開くことは長年の夢でした。というのも、姉の夫は東京の中心部に自分のフレンチレストランを持っていたんですが、亡くなってしまって。私たちにはそのレストラン業を再開したり、新たにオープンしたりする時間も機会もなかったので、この夢は延び延びとなっていました…。もしかしたら、今はこのようなレストランを開くのには最適な時期ではないかもしれません。でも私たちの食文化は多様で何世紀もの歴史を経てきた、とても稀有なロシア文化を現しているものでしょう。どんな政治情勢でも前へ進んでいくことができると判断しました。ロシア料理は文化の一部です。文化は政治に左右されるものではありません。文化は保存され実現していくものです。
スプートニク:東京には十数軒のロシア料理レストランがあります。 ロゴフスキーやチャイカのような老舗もあるし、新しい店も出てきていますから、それと競合を迫られますよね。「Twins」のならでは魅力は何でしょうか?
田中ダイアナさん:私たちはロシア料理の伝統にこだわっています。姉の夫は料理の秘密をたくさん彼女に伝授しました。 彼はフランスで勉強した料理のプロでした。実はロシア料理とフランス料理には共通点が多いのです。姉の夫は彼女にキノコのスープの作り方、ビーフストロガノフをフランス料理とロシア料理の手法を合わせてどう作るか、魚の塩の振り方などを教えました。主な食品である肉、野菜、サワークリームは注文するかお店で購入します。ただ、サワークリームは生クリームで薄めないとロシアのサワークリームの味には近づきません。日本のサワークリームはロシアのと違って濃厚だからです。ビーツやハーブのような特別なものは、ロシア人の仲間が自分の畑で栽培しているものを使っています。自分たちで栽培しているものもあります。日本では多くの野菜が自然の風味をほとんど失っていますが、その代わりに品質は高いです。 店ではベリー添えのブリンチキ(ロシア風パンケーキ)、ケーキなど、デザートも出していますが、あまり注文されません。でも、みんなうちのブリンチキは好まれますね。
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スプートニク:「Twins」という名前は、あなたとお姉さんが双子であること、それともロシア料理とスラヴ料理が双子のようであることを意味してますか?
田中ダイアナさん:はい、「Twins」は双子という意味です。でも私たちはもっと深い意味を込めています。私が思うことは、すべてのスラヴ文化は、私と妹のようなものです。それぞれに特徴がありますが、共通点もあります。そして私たちは、世界で何が起ころうとも、共通のスラヴ文化を根に持つという私たちの関係が途絶えることはないと信じています。また、日本にいる私たちのコミュニティーにはとても才能がある人々がいます。 歌やダンスをする女の子がいます。詩を書く女優もいて、彼女と一緒に詩の夕べを開きたいと思っています。女性の画家もいて、店の壁には彼女の作品がかけられているんですけど、お客さんの目を惹くようで、誰が描いたのかとよく聞かれます。こんな風に、私たちはロシア料理だけでなく、ロシア文化も広めていきたいです。
スプートニク:レストランでは誰が働いていますか?
田中ダイアナさん:姉と私、そして私たちの子どもたちです。姉には2人、私には1人の娘がいます。みんなバイリンガルで、私たちをとてもよく助けてくれます。開店後の最初の3週間は休むことなく、ノンストップで土日も働きました。今はシフト制で、レストランの営業時間は12:00から15:00までと18:00から23:30までです。料理は交代で作りますが、姉がシェフです。とても優秀なアシスタントもいますし、手伝ってくれる友人もいます。例えば、一番問題だったのは、テナント料がとても高いなか、適正な場所を見つけることでした。これには友人が協力してくれました。賃貸を決めて、改修工事をしている間には、内装のアイデアが自然に生まれました。壁にはプロの画家である姉が自分の描いた絵を飾りました。それでとてもスタイリッシュになりました。内装全体、壁画、ロシア人画家が描いた絵、ナプキンやエプロンなど、すべてがロシア民族様式です
© 写真 : Twinsお店の仕事をザヤルナヤ姉妹シェフの娘たちが手伝ってくれている
お店の仕事をザヤルナヤ姉妹シェフの娘たちが手伝ってくれている - Sputnik 日本, 1920, 21.09.2023
お店の仕事をザヤルナヤ姉妹シェフの娘たちが手伝ってくれている
スプートニク:日本の人にロシア料理がうけるかどうか、不安はありませんでしたか? どんな人がお店にいらっしゃるのでしょう?
田中ダイアナさん:もちろん不安はありました。こうした政治情勢の中でレストランを開くリスクもわかっていました。 オープンは8月20日で、何の宣伝もしていなかったのに、改装中にすでに、ここに何ができるのかなと関心をもってくれている人がもう、いらっしゃいましたよ。そして今、オープンして間もないですが、すでに常連客がいます。初めてロシア料理を食べたという人も多いです。一日に2回も食べにきてくださる日本の方も複数おられるんです。そうした中のおひとりにロシア料理のファンですかと訊くと、いいえ、あなたの店で初めていただきましたとおっしゃられて。また私たちとロシア語で会話する女性客も2人おこしになられています。 学生時代にロシア語を学ばれたんだそうで、今でもロシアに対して思いやりのある態度を持っておられます。お年寄りも若い人も来ます。なので日本でロシア料理の人気がないということはないです。開店以来、関心のないお客さんは一人もおられませんでした。皆さん、とてもおいしいと言ってくださいます! 最初はお世辞でそういってくださるんだと思っていましたが、もしそうなら、日本人だったらもっと適切な言い方をするはずでしょう。でも、そうした言葉には率直さが感じられます。 まだオープンして間もない頃、ある日本人が『ロシアのレストランは料理の量が少ないし、値段も高いから嫌いだ』と言われているのを耳にしました。私たちはいらっしゃるお客様、ひとりひとりを自分の家に来てくださったお客さんとして迎えているんです。お客さんを心からもてなして、おなかいっぱいになるまで御馳走するというのはうちの家族の習わしなんですよ。 私たちのレストランの料理の量は決して少なくありませんし、これは難しいことですが、値段も高くならないようにしています。
© 写真 : Twinsペリメニ
ペリメニ - Sputnik 日本
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ペリメニ
© 写真 : Twinsピロシキ
ピロシキ - Sputnik 日本
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ピロシキ
© 写真 : Twinsパンケーキ
パンケーキ - Sputnik 日本
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パンケーキ
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パンケーキ
スプートニク:あなたとお姉さんはお二人ともどうして日本に来ることになったのでしょうか?
田中ダイアナさん:私たちはウラジオストック出身です。そして、姉と私はとても似たような運命をたどっています。姉は1997年に結婚して来日し、私も2002年に来日しました。 母はウラジオストックに残ったんですけど、ふたりとも結婚して幸せだったし、日本にいるおかげでお互いの距離が縮まったことを嬉しく思っていました。でも姉の夫が亡くなり、私たち夫婦が結婚9年目で別居することになったとき、私たちはロシアに戻ることを考えました。でも、日本で教育を受けている子どもたちを勉強から引き離したくはなかった。子どもたちは自分たちに第二の祖国があることを知っています。
© 写真 : Twinsザヤルナヤ姉妹の娘たち
ザヤルナヤ姉妹の娘たち - Sputnik 日本, 1920, 21.09.2023
ザヤルナヤ姉妹の娘たち
私たちは日本がとても大好きです。子どもたちは大人になれば、もう自分でどこで暮らすかを決めるでしょう。 私たちが持っている良いところはすべてロシア文化から受け取ったものです。 日本の方がたには私たちを通じて、ロシア料理や文化を通してもっとロシアを理解してもらいたいし、ロシア人には日本を理解してもらいたいのです。2つの民族を結び付け、お互いが知りあい、理解し合うことを助けること。たぶん、これがここに住んでいる私たちロシア人のミッションじゃないかしら。私たちが目指すのは交流であって、分け隔てることじゃないんです。
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