プーチンとトランプの首脳会談。多くの予測が飛び交う中、確定要素は少ないまま・・・

7月16日にヘルシンキで開催される予定の米露首脳会談で何が期待されるのか?多くの予測が飛び交う一方で、確定要素は減るばかり。しかし、それは表面的なものである。
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首脳会談の準備のためにモスクワを訪問した国家安全保障問題担当大統領補佐官のジョン・ボルトン氏は記者会見で、首脳会談は実施されること自体がすでに成功であると述べた。このような極めて慎重な予測が生まれたのは、露米関係には首脳会談に影を落とす問題が山積みだからだ。

それはロシア人外交官の大量国外追放であり、在米ロシア連邦在外公館の差押えであり、ウクライナへの対戦車ミサイル「ジャベリン」の供与であり、定期的に実施されるロシア企業、政治家、企業家に対する制裁拡大であり、モスクワとワシントンの直接軍事衝突の脅威を生んだシリアでのシリア政府軍への大量ミサイル攻撃である。

このほか、二国間にはシリア、イラン、北朝鮮、ウクライナ問題において原則的な相違があることは明らかだ。

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戦略兵器の分野では、緊張緩和時代の最重要文書である中距離核戦力全廃条約が脅威にさらされている。新START条約の延長も不確定要素が多い。それと同時に、アメリカは、新軍事予算を見る限り、核ミサイルポテンシャルの改良と拡張を行う意向であり、ジョン・ボルトン氏もモスクワでそのことに言及した。同時に、アメリカの直近のドクトリン系文書はすべて、特に国家安全保障戦略、防衛戦略、核ドクトリンにおいては、ロシアを事実上、中国と並んで「米国の安全保障と繁栄を損ねる長期計画を意図的に立てる」勢力と定めている。

さらには、直近の大統領選挙にモスクワが介入したという反ロシアキャンペーンも止まない。クレムリンはそのような事実はないと関与を否定しているが、トランプ大統領はこの問題に関する上院委員会とアメリカ諜報機関の結論に文句なく同意した。

つまり、トランプ大統領が自分の政策は前任者であるバラク・オバマ氏よりもずっと反ロシアであると言っているのは決して誇張ではないのだ。そんな中、政治学者の間では「冷戦2.0」が始まったのか、はたまた、まだ何かが悪化する可能性があるのかで論争が行われている。

一方で、トランプ大統領は依然として、大統領選挙キャンペーン中と同じように、ロシアとロシア大統領との関係改善を望んでいると発言している。7月10日、欧州歴訪への出発前に「ロシアとうまくやれるといいと思う」と述べている。

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もちろんモスクワもまんざらではない。少なくとも、キューバ危機以来、露米関係のアジェンダの基礎をなしてきた戦略的安定性に関する対話にクレムリンは関心を抱いている。モスクワは二大核保有国が二国間関係だけでなく、「ホットスポット」においても、共通原則を議論し、確認することが必要だと考えている。
しかし、これらはすべて一度の首脳会談で決着の付く問題ではなく、現在のトランプ大統領にはもっと重要な問題があるのも事実だ。

アメリカ大統領は、自身も出馬を予定している2020年の大統領選挙を見据えている。大統領選挙に向けた最も重要なステップとなるのが今年11月に予定されているアメリカ議会の中間選挙だ。これが、トランプ大統領が外交活動を活発化させている大きな理由である。

彼は11月の選挙で、いわゆる「ロシアの選挙介入」スキャンダルを完全に克服しなければならない。最悪の場合、「ロシアのハッカー」問題が11月の共和党の勝利の可能性を下げる可能性がある。この問題をトランプ大統領がどう解決するのかは未だ不明だ。しかも、プーチン大統領にも、相手はヒラリー・クリントン氏とバラク・オバマ氏であるが、同様の主張がある。例えばニューヨークタイムズが伝えたところによると、アメリカ諜報機関は第二次世界大戦後、中央情報局(CIA)が設立されたときから、ロシアを含め、外国の政治プロセスや選挙に介入する秘密作戦を定期的に実施していたという。

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このテーマがサイバー安全保障における両国の協力という形で纏め上げられる可能性も十分にある。サイバー安全保障に関する合意は、ベトナムのAPECサミットの際にも両国首脳が立ち話で議論している。

選挙を控えたトランプ大統領が明らかに関心を抱くもうひとつのテーマが、大統領の婿であるジャレッド・クシュナー氏が精力的に取り組んでいるパレスチナ問題での「世紀の取引」である。これは第二次世界大戦の末期から続く問題で、これまでどのアメリカ大統領にも紐解くことはかなわなかった。しかし、これは政治的栄光の問題というよりも、むしろ、来たる選挙での親イスラエル・ロビーからの支持の問題である。親イスラエル・ロビーはすでにトランプ氏の勝利に大きく貢献しているのだ。

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「世紀の取引」の詳細は明らかにされていないが、イスラエルにも、サウジアラビアをはじめとするアラブ諸国にも妥協が求められるだろう。トランプ大統領はイランとの核合意から脱退することで、すでにこれらの国の意向にこたえる姿勢をみせた。アラブとイスラエルの最大の不和の種とも言えるイスラエルには、これ見よがしにアメリカ大使館が移転された。しかしまだ、中東のもうひとつの権威、プーチン大統領の支持が必要だ。

米露首脳会談をひかえ、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とパレスチナのマフムード・アッバス議長がモスクワを訪問した。これは、プーチン大統領が双方の姿勢を注意深く研究し、自国の姿勢を決めようとしていることを示しているが、ロシアの姿勢が必ずしもトランプ大統領の考えと一致するとは限らない。トランプ大統領には、北朝鮮との取引が行き詰まり始めた今、ボルトン氏が言うように、結果がないのでは話にならず、当然、結果を出すことが求められる。

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