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この法律を制定しようとの提案は、「過労死」のケースを未然に防ぐことなどを目的としている。日本は、恐らく、1987年以降にそのような死亡例の統計が公表されている唯一の国だ。ただ、社会では、公式の数字は過小評価されたものだと考えられている。過労死を食い止めること以外にも、安倍首相は、労働時間の短縮が労働生産性を向上させることに役立つとの期待を示したが、実際にどのような形で役立つのかについては説明していない。これまでに多種多様な措置、例えば、毎週金曜日には少し早い時間に職場を去ることを許可したり、電通が夜10時の消灯や残業基準の引き下げに着手したりといったことが行われたが、然るべき効果はもたらされなかった。
だが、統計と現実は別物である。1990年代の後半以降、日本における臨時雇いの従業員の数は増大し、一部の分野ではほとんど40%に達している。このような従業員のうち、大多数がパートタイムで働き、1時間単位で給料を受け取っている。このことが、全体では1日あたりの労働時間の長さが短くなりつつあるとの幻想を作り出している。一方で、臨時雇いの従業員による労働に対して、常に相応の賃金が支払われているということでは全くない。そのため、被雇用従業員にとっての残業とは、仕事中毒というよりは、追加収入を得たいという願いなのだ。
日本とほとんど同時に、最長労働時間を1週間あたり68時間から52時間にまで制限する法律が、韓国でも承認された。ところが、この新たな試みについて皆が喜んでいるというわけでは全くない。一部の人々は、設定されているよりも長い時間働くことを企業が強制し続けるものの、違法行為になるとの理由で残業手当の支給については継続しないという事態を懸念している。他の人々はと言えば、残業時間が総じて制限されることに不満を抱いている。
残業は日本に固有のものではなく、若き「アジアの虎」たち、つまり、経済が急成長を遂げつつあるアジア太平洋地域諸国にも、西洋世界にも、広範な性格は帯びていないものの、特徴的なことである。そして、様々な国々で、それぞれの過労死が起きていると、ロシア高等経済学院(HSE)労働法学部のエレーナ・ゲラシモワ准教授は考えている。
労働時間の長さを短縮する構想は、中国でも現れた。中国社会科学院は、2030年までに週4日労働制に移行することを提案している。この際には、1日あたりの労働時間の長さを8時間から9時間に拡大させることが予定されている。この提案は、同院会員らによって実施された全国的調査を受けて唱えられた。この調査の結果、中国人の休養時間は米国人やドイツ人の半分で、また、休養に割り当てられる時間は短くなり続けているということが明らかになっていた。
ロシアでは、1日あたりの労働時間を1時間短縮しようとの提案が、社会の最も大きな支持を得た。この提案は、「ロシア公共イニシアティブ」のウェブサイトで公開投票のために掲載されている。もし、2019年3月までにこの提案が10万票を集めれば、法案となって議会に持ち込まれるチャンスを得る。今のところ、この構想に賛成票を投じた人の数は3万人余りとなっている。
同時に、仕事に対する態度は、東洋と西洋では互いに異なっている。日本で出来上がった、同僚たちよりも早い時間には家路につくことが許されない習慣(この習慣は秘密の規則となっている)を、どのようにして変えるべきなのだろうか?そして、人が自発的に残業を行っており、仕事を無給で遂行していく準備ができている場合、残業を拒否することをその人に対してどのように強いることができるのか?この人がそうする理由は、もし勤務時間中に課題をこなせなければ、問題が専ら自分自身に潜んでいると確信しているからなのだ。