夏季以外の大会開催に現実性はあるのか
五輪延期に関する安倍首相とバッハ会長の電話会談が行われた後、東京の小池百合子知事は下された決定について記者団の質問に応じた。
さらに、前回の夏の東京五輪(1964年)は秋に開始されており、つまり、気候条件としてはさらに好ましいものだった。しかし、石坂友司准教授によれば、日本には同様の決定を受け入れる度量がなく、ここでは決定的な影響力として米国の都合が見てとれる。
「これはもう日本には決定権がほぼない状況なようです。アメリカのNBCのテレビの放映権がかなり影響力を持っているために、アメリカの4大プロスポーツの決勝がないとか、盛り上がっていない時期、夏場がちょうどその時期なので、そこにちょうどはまってくれるとアメリカ的にはオリンピックをこううまく消費できて楽しむことができるという、オリンピック自体がそういうスタンスなのです。ですから日本としては夏にはやりたくないという気持ちを持っていても、実際はNBCの影響でそこを変えるのは日本的にはすごく難しいと思います。ですから延期になって、春口でいけるのか?というと、それもまたアメリカの放送局が一番決定権を持ちますので、同じように夏の雰囲気になってくると思います。」
非常事態宣言は五輪を「救済」できたか
以前、日本政府は、新型コロナウイルスの発症例の増加がもっとも顕著であった北海道で非常事態体制をとった。19日、実施措置の実行期間の満了後、ウイルス抑止のために取り組まれた措置が効果的であったことが明らかとなった。現在、北海道の新たな発症数はほぼゼロに等しい。このことから疑問がわいてくる。日本では五輪を目前に、ウイルス拡大の脅威が発生した時点で、ただちに全国的に緊急事態体制を一時的に導入する価値はなかったのだろうか。こうしたイニシアチブは国内の完全な安全を保障し、なにより、予定通りに五輪を開催する可能性を維持することになったのではないか。
無観客での大会実施は可能か
現在、五輪開催の延期はどのくらいの先になるのかという点では、さまざま多くの意見がある。2024年の大会実施が好ましく、それにより以降のすべての五輪を4年ずつ先送りするという観点がある。このことは、新型コロナウイルスの危機から回復するのに世界には時間が必要だということを示している。さらに、こうした決定は、選手たちにフランスで開催される次の夏の五輪に向け、予定通り、3年ではなく4年間という期間で準備をすることができることとなる。しかし、万が一、日本に選択肢がなく、大会が確実に来年の夏までに実施されなければならないという場合はどうか。その場合、もし新型コロナウイルスの拡大の問題がまだ収束していなかったなら、無観客での大会開催はあり得るのか。
日本は五輪のために新型コロナウイルス対策でのこれまでの対応を変更するべきか
「そこは専門ではないんですけれど、やはりきっちりと検査をして、どういうリスクがあるのかというということを知ることは大事だと思います。ただその検査をして陽性であることが必ずしも重症につながるわけではないので、そこの不安と病院を麻痺させないというところを、どうバランスを取ればいいかという話になります。多分、日本にいらっしゃるとわかると思いますけれど、日本人はそのバランスを取るのが、なかなか難しいことです。多分、逆に、検査をしてしまうとものすごい不安感が煽られたりとか、あるいは陽性反応が出た人に対して差別的な扱いをしたり、といったことが少し懸念される部分があります。たまたま今の死亡者数でいうとそれほど多くは出ていない状況ですが、これもどちらに転ぶかわからなくて、今、花見によく行っている人が出てきていますけれども、大したことはないと思って、皆が警戒を怠ってしまうと、一気にイタリアやスペインのモデルになってしまう可能性もあるので、そういう意味ではどこかで検査をする場所があれば、陽性が出た時に自粛する人は自粛するという形を取りやすくなると思います。それがまだできていないので、なんとなく政府から言われた通り待機したり、大丈夫だと言われたから外に出たり、というようなことを繰り返しています。やはり科学的にどう考えるのかという点から専門家の意見を取り入れたいです。」と石坂教授は強調した。