パンデミックにも負けず 外国人による国際日本語作文コンクールの受賞者発表

日本で第3回「世界の日本語学習者『日本語作文コンクール』」の結果が発表された。今回、コンクールには66ヵ国から9000人超が応募した。同コンクールを主催したのは大森和夫・大森弘子夫妻、朝日新聞社が後援。大森和夫氏は朝日新聞の元記者で、妻の弘子氏は日本語教材の編集者だった。現在、大森夫妻はリタイヤメント・ホームで暮らしているが、アクティブなライフスタイルを送っている。1989年から両氏は、年齢や国籍を問わず誰でも参加できる多彩なコンクールを開催している。
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今回のコンクールの参加者は2つのテーマからいずれか1つを選択するよう求められた。出題されたテーマは、「『日本のこと』で、『あなたの国』に伝えたいこと、は何ですか?」と「『あなたの国のこと』で、『日本人』に知ってもらいたいこと、は何ですか?」だった。コンクールの1等賞には、ベトナムのチャン・トゥー・チャンさんとミャンマーのレイレイピューさんの2人が選ばれた。2等賞は、中国、台湾、エジプト、ポーランド出身の4人と、キルギスの首都ビシュケク在住のロシア人ガリーナ・ヴォロビヨワさん(71)ら計5人が受賞した。ヴォロビヨワさんはビシュケク国立大学の元助教授で博士、また、キルギス共和国日本語教師会のメンバーでもある。

ヴォロネジの年金生活者たちは日本語を学び、建築家たちは日本のプロジェクトを待ち焦がれている
彼女の作文のテーマは「日本の長寿」だった。ヴォロビヨワさんによれば、日本人の寿命には食事や身体活動、医療水準だけでなく、人生に対する目的意識、恒常的な学習意欲や向上心、社会貢献なども影響を与えているという。作文の中でヴォロビヨワさんは、ビシュケクではじめて日本語を習った荻原幸子先生について回想している。荻原先生は現在、東京で暮らしており、87歳だが現役で外国人に日本語を教えている。また、ヴォロビヨワさんには神戸で暮らす83歳の友人もいる。この友人は長年パナソニックで働いてきたが退職後に声楽を習い始め、コンサートに出演してロシアの歌なども披露しているという。ヴォロビヨワさんは作文の中で「あるとき、私は神戸の高齢者たちによる歌のコンサートに行き、自分の友人や他の参加者たちの歌声を聴きました。コンサートに向けて準備していた最中に参加者の1人がガンで亡くなってしまったそうです。コンサートでは彼が歌っている姿がビデオで公開されました。そしてその後、出演者全員が一緒に彼が歌うことになっていた歌を歌いました。このような人たちの思いに私は感動させられます」と紹介した。

パンデミックにも負けず 外国人による国際日本語作文コンクールの受賞者発表

ヴォロビヨワさんが日本語の勉強をはじめたのは46歳の時。ヴォロビヨワさんと夫はロシア中部の都市エカテリンブルク(当時はスヴェルドロフスク)の数学・工学研究所で働いていた。1974年に夫妻は休暇を使ってキルギスを訪れたが、この国の美しさと自然に心を奪われ、当時ソ連の一部であったこの共和国に移り住むことにした。1995年、ヴォロビヨワさんはキルギス・日本センターの日本語の4年コースを受講することにした。コース終了後、彼女はこのコースで日本語を教えることになった。それから数年後、ガリーナさんはキルギス共和国日本語教師会の会長になった。また、キルギス国立大学の日本語学科で助教授として教鞭をとった。2005年にヴォロビヨワ夫妻は、教材『漢字物語』を執筆し、漢字の歴史や正しい書き方、構成要素について分かりやすく解説した。また2014年、当時65歳だったヴォロビヨワさんは、東京の政策研究大学院大学博士号(論文博士、日本語教育研究)を取得した。

2017年には、言語学の伊藤広宣教授との共著で、著書『人生をかけた日本語教育-実戦と研究をつなぐ二人の対話』を出版した。


コンクールの2等賞、3等賞、努力賞の受賞者には6月30日までに学習奨励金と賞状が送られ、1等賞の表彰式は新型コロナウイルスの終息が宣言された後、開催される予定だという。表彰式は大森夫妻が暮らす東京のリタイヤメント・ホームで行われる。

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