ロシア開発のCOVID-19ワクチン「スプートニクⅤ」は国内での承認から1か月足らずで、今日、9月4日、世界で最も権威の高い医学誌「ランセット」に、ロシア内外の社会待望の最初の2フェーズの治験結果が公表された。掲載された結果は、外国人専門家の批判に答え、待望の回答をはっきり示すものだ。ロシア人研究者が開発し、世界で先駆けて登録されたコロナウイルスのワクチンは病気治療に有効であるだけでなく、安全であることも証明された。
「9月には動物実験の結果があますところなく掲載される予定です。サル、ゴールデンハムスター、遺伝子改変マウスへの投与実験は100%の有効性を示しました(サル、ゴールデンハムスターへの投与結果は臨床試験の実施前に出ている)。4万人の被験者に対してすでに開始された、登録後の臨床試験の結果は、10月から11月にも掲載されます。」
安全性が確証されたワクチン
ガマレヤ国立疫学微生物研究センターが出した主要な帰結のひとつとなるのが「スプートニクⅤ」の安全性だ。第1、第2フェーズの治験の結果、いずれの被験者にも深刻な悪い現象は認められなかった。すべてのワクチンがこうした良い結果を出せているわけではない。ワクチンの中には深刻な悪い作用の発生率が25%に達しているものまでみられる。
長期的な免疫
「ランセット」には「スプートニクⅤ」の効果の学術的な証明が掲載された。例えば長期的な免疫確保は2段階接種というユニークな技術のおかげで100%得られている。
ガマレヤ国立疫学微生物研究センターのドミトリー・ログノフ副所長はワクチン接種者全員に100%のケースでCOVID-19感染を完全に防ぐために十分な体液性、細胞性免疫応答がみられていると確証している。
「接種被験者の抗体レベルは感染し完治した人の1.4~1.5倍になりました。比較のために言うと英アストラゼネカの接種被験者の抗体レベルは実際の感染から回復した人のものとほぼ同じです。」
ガマレヤ国立疫学微生物研究センターは、スプートニクⅤワクチンの治験のコンテキストでは被験者全員に陽性T細胞と CD8陽性T細胞が形成されていることを確認している。 これらの細胞はコロナウイルスに感染した細胞を見つけ出し、抹殺することができる。
ワクチンの効果は100%
2種類のベクターを利用する手法は、ガマレヤ・センターの研究者らによって開発されたユニークな技術であり、ロシアのワクチンは世界中で開発されているアデノウイルスベクターに基づく他のワクチンとは一線を画している。さらにアデノウイルスベクターに基づくワクチンは、メッセンジャーRNA(mRNA)を利用したワクチンなどの他の技術に比べて明らかなメリットがある。
ロシアの新型コロナウイルス感染症のワクチンは完成し、承認された。第2相の臨床試験が終了し、これらの結果は国際基準に則り8月に発表する。報告書には、ワクチンに関する詳細な情報や、いくつかの第三者機関による試験で示された正確な抗体レベル、新型コロナウイルスのスパイクを攻撃する最も効果的な抗体を特定するガマレヤ・センター独自の試験の結果が記載される予定である。さらに報告書では、臨床試験の被験者が新型コロナウイルスに対して100%の免疫力を獲得していることを示していく。また、通常だと新型コロナウイルスで死亡するゴールデンハムスターを用いた研究結果も報告書に盛り込む。この研究では、接種後のハムスターが致死量に相当する感染を受けても、100%の確率でウイルスから身が守られ、肺の損傷が起こらなかったことが明らかになっている。ワクチンは承認され、我々はさらに3ヶ国で国際的な共同臨床試験を実施する。そして、9月までにワクチンの量産を開始する予定だ。
ガマレヤ国立疫学微生物研究センターのドミトリー・ログノフ副所長は、
「接種した人に、アデノウィルスに最近感染した人にさえも有効な免疫応答を100%確保する最適で安全な量が選定されました。このことは、確証されていないプラットフォームで開発された新ワクチンの意義を低めるものです」と語っている。
2種類のベクターによるユニークな技術
アカデミー学者のアレクサンドル・ギンツブルク氏の語る「スプートニク V」の特徴とはこれが5、26と2つの血清型の2種のアデノウイルスを用い、2度接種を行うことにある。今日この2段階接種はコロナウイルスに対する免疫を著しく強化できるファクターとして多くの専門家に認められている。ただし2度の接種で同じベクターを使用する場合、免疫システムは防御システムを始動させ、2度目の接種で薬剤をはねのけてしまう。「スプートニクⅤ」では2度目のベクター接種がそうした中和効果を回避するため、こうした問題は完全に解決されている。
ガマレヤVSアストラゼネカ
「ロシア開発の『スプートニクⅤ』ワクチンの第1、第2フェーズの治験に参加し、2度の接種を受けた被験者の数はアストラゼネカの2度の接種の被験者数を4倍上回ります。」
唯一安全な技術
先週、米国食品医薬品局(FDA)は現在の感染状況の中で、ワクチンの承認を急ぐ可能性を明らかにした。つまり、1万人の被験者に対する第3治験の実施の必要性を排して承認を出すということになる。同様のアプローチの可能性を英国政府も 口にしている。この際、米英の2国のレギュレータらは、緊急承認の可能性があるのは有効性、安全性が証明できたワクチンに限られると指摘している。ロシア人専門家らの見解では、こうした要求にこたえることのできる薬剤はそう多くはない。
「ランセット」掲載は「最終回答」
ロシア直接投資基金のドミトリエフ総裁は医学誌「ランセット」に臨床試験結果が掲載されたことは「2019年8月のスプートニクⅤ登録後、ロシアに向けられた問いに対する、このラウンドでの最終的な回答」だと説明している。
「これでロシアも国際社会に対し、いくつかの問いを投げかけることができます。我々はチンパンジーアデノウィルスもしくは メッセンジャーRNAをベースとしたワクチンの長期的な効果、発がん性リスクや不妊治療への影響がないことを証明する公式データの発表を呼び掛けます。さらにアストラゼネカがなぜ、好ましくない副作用が出た場合の法的責任の回避を強要しているのか、その理由も知りたいところです。」