ザポリージャ原発問題
ザポリージャ原発はウクライナ南部のドニエプル川左岸にある欧州最大級の原発。ロシアのウクライナにおける特殊軍事作戦の開始直後からロシア軍の統制下となっており、ドニエプル川を挟んでウクライナ側と対峙する最前線に位置している。ロシア国防省によると、原発は7~8月にかけて複数回にわたってウクライナ側からの砲撃を受けている。
ロシア側は一連のウクライナ側の原発への攻撃を「核惨事をもたらしかねない原子力テロ」と呼び、IAEAによる公平な調査と報告を求めている。一方でウクライナ側は攻撃を否定し、ロシア軍の統制下にある原発をロシア軍が自ら攻撃していると辻褄が合わない主張を展開している。
安保理でゼレンスキー大統領が演説、露は反発
24日の安保理会議でオンライン演説したゼレンスキー大統領は次のように述べ、お決まりのロシア批判を繰り返した。
「原発の状況をいち早くIAEAの査察団のコントロール下に置くべきだ。そしてロシアは無条件に核によるゆすりをやめて原発から出ていくべきだ」
そもそもロシア代表のネベンジャ国連大使は、ゼレンスキー大統領が異例の安保理演説を行うこと自体に反発していた。今回の演説は「安保理の原則と慣習に反する」として強く抗議し、参加国に現状を直視して議論するよう求めた。演説実施には安保理理事国計15か国のうち米、英、仏など13か国が賛成。ロシアが反対し、中国は棄権した。
また、ネベンジャ大使はIAEA査察団の現地常駐に関しては反対しない意向を示した。
フランス・マクロン大統領 仲裁外交をアピール
一方、ザポリージャ原発への査察団派遣をめぐり、フランスのマクロン大統領が25日にIAEAのグロッシ事務総長とパリのエリゼ宮(大統領官邸)で会談を行うことが明らかになった。
「ロシアに妥協してはいけない」と公言しているマクロン大統領だが、ザポリージャ原発の問題に関してはロシア、ウクライナ、IAEAの間に立ち仲裁外交に尽力しているといえよう。今月16日にはゼレンスキー大統領と、19日にはプーチン露大統領と相次いで電話会談を行い、ザポリージャ原発問題を議論している。また、査察団派遣に関して専門家レベルで協議したのちに、再びプーチン大統領とコンタクトを取るとしており、25日のグロッシ事務総長との会談もこうした活動の一環とみられる。
長引く対露制裁による国内物価の高騰などで仏国民の不満は高まっており、マクロン大統領の支持率は37パーセントに急落している。仲裁外交を内外に積極的にアピールすることで人気を高めようとする思惑も透けて見える。
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