「ロシアには米国とヨーロッパを核ロケットで30分以内に完全に破壊する能力がある。その反対(編注:米国もロシアを同様に破壊できる)もだ」
マスク氏は15日、自身のツイッターにこのように投稿。北大西洋条約機構(NATO)が戦略爆撃機の演習を行うというニュースを受け、ロシアと米国・NATOの軍事緊張をの高まりを懸念を表した。
マスク氏は米国の実業家でありながら、一部の政治家のようにウクライナ情勢に絡み闇雲にロシアを批判するだけではない。奇をてらっているように思える反面、ときに現実的で建設的な歯に衣着せぬ発言が注目を集めている。これまでに、クリミアをロシアの一部として残し、5日までにロシア編入の手続きが完了した4地域については国連の監視下で住民投票をやり直すというウクライナ紛争の解決ビジョンを提示している。
マスク氏の発言に注目が集まっているのは、ただ単に億万長者で価値観、視点が真新しいということだけが理由ではないだろう。英紙フィナンシャル・タイムズはこのごろ、ウクライナはマスク氏が手掛ける衛星インターネットサービス「スターリンク」への大きく依存していると指摘している。
「スターリンク」は「スペースX」の衛星インターネットサービス。衛星地球の軌道上の通信衛星と地上の小型アンテナで電波をやり取りすることで、通信インフラが整備されていない地域でもインターネット接続が可能になる。マスク氏はウクライナの前線地域では他の通信手段が「完全に壊滅」しているとしており、ウクライナ軍にとっては「スターリンク」が頼みの綱となっているという。
これまで「スターリンク」のウクライナへの展開はなかば「慈善事業」として行われてきた。運営費の8000万ドルについてマスク氏は、自身の「ポケットマネー」から拠出したと述べている。
ところが、マスク氏は9月、米国防総省に書簡を送り、「スペースX」は「以前のように『スターリンク』の仕事に資金を提供し続けることはできなくなった」と通知。書簡には、ウクライナ政府と軍のためにサービスの資金調達を引き継ぐように国防総省への要求も含まれていた。
現時点で今後のウクライナでの「スターリンク」の展望は不明だが、フィナンシャル・タイムズ紙は「こうした依存はウクライナの大きな脆弱性だ」と指摘している。サービスが停止されれば、ウクライナ軍司令部は前線からの情報を効率的に受け取れなくなり、部隊間の効率的運用ができなくなる可能性もある。もちろん、マスク氏は一実業家ではあり直接的に軍事支援を行う立場にはないものの、その影響力は過小評価できないのだ。
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