日経新聞によると、台湾再統一のため武力行使も辞さない構えを見せている中国に対抗するため、米バイデン政権は米国製兵器の台湾での共同生産をめぐる初期段階の協議に入ったとされている。携帯型防空システムや弾薬を念頭に置くとしており、関係者の1人は「米国の防衛企業が技術供与をして台湾で武器を製造したり、台湾でつくった部品を使って米国で生産したりする案がある」と明かしたという。
一般的に米政府が兵器売却を承認し、引き渡しまでに数年~10年かかるケースが多いと同紙は指摘。だが、米軍は27年にも中国が台湾侵攻能力を獲得すると分析しており、既存の兵器売却プロセスでは生産、手続きが十分に間に合わない可能性がある。このため、共同生産という形で兵器供給のオプションを加え柔軟に対応したい考えだ。
米国のこうした動きの背景には、現在のウクライナへの兵器供給の遅れがあるのかもしれない。
米国を中心とする北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、ウクライナにおけるロシア軍の特殊軍事作戦開始後、ウクライナに対し多連装ロケット砲「HIMARS(ハイマース)」や各種ドローンなどを異例のスピードで提供してきた。だが、ウクライナ側が求める主力戦車や対空防衛システムなどの供給は間に合っておらず、ゼレンスキー大統領も「必要な武器の10パーセントしか受け取っていない」と主張し、西側からさらなる軍事支援を引き出そうと躍起になっている。
米国政府はこのごろ、ウクライナへの防空ミサイルシステム「NASAMS(ナサムス)」の供与を加速させると表明。だが、ナサムスの供与は7月には発表されていたのに未だに実現していない。米紙「ワシントンポスト」も、「米国政府が比較的長い供与のプロセスを変更するという動きはみられない」としている。
米国はウクライナへの軍事支援に関する多国間議論の場を設けて、同盟国にも協力を求めている。だが、欧州のNATO加盟国の備蓄不足、財政的負担など問題が山積しており、米国の国内生産、輸出だけでは対応しきれなくなっているのが現状であろう。
台湾の共同生産はこうした問題の突破口になるのであろうか。また、世界の紛争地帯に「首を突っ込む」米国の兵器支援の成功例となるのか、注目されている。
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