コンサルティング会社「McKinsey & Company」のナミット・シャルマ氏は次のように述べている。
「『ノルドストリーム』(ロシアから欧州へ天然ガスを供給するパイプライン。現在は供用停止中)が来年に再開しなかったら、欧州のエネルギー不足は悪化の一途をたどり、資源の節約もより一層厳しくなるだろう」
ロシアはというと、このシナリオではアジアで別の買い手を見つければいいだけなので、ほとんど失うものはないという。
第2のシナリオはロシアの対抗措置による「エスカレーション」。ロシアがウクライナを経由するガスパイプラインの栓を占めると、EUは年間で数百億立方メートル規模のガスを失うことになる。そうなれば欧州は石油のときと同じようにロシア産ガスの上限価格の設定という形で追加の対抗措置を取ることになりそうだ。
だがそうした場合、クレムリン(ロシア)は石油減産を求めて石油輸出機構(OPEC)諸国に掛け合い、損益を相殺するというオプションもある。すでに10月にはOPEC+がバイデン米大統領の期待を裏切り、ロシアに有利な減産に舵を切ったことも忘れてはならない。
第3のシナリオは最も極端なもので、ロシアがトルコを経由するパイプラインやノルウェー経由のガス供給を止めるというもの。これによって欧州は年間700億立方メートルのガスを失うことになり、経済的には2023年に2兆5000億米ドル(365兆円)、2024年に2兆ドル(292兆円)の経済的損失を被ることになる。
西側諸国は自らの発動した対露制裁によって、深刻なエネルギー不足や高インフレに悩まされており、労働者階級である一般国民にしわ寄せが及んでいる。だが現在のところ、無益な対露制裁合戦をやめて真に国民の生活を第一に考えるリーダーは西側諸国には現れていないようだ。
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