「G20サミットでは、互いに多少の歩み寄りを見せたに過ぎません。しかも、歩み寄りには米国の方が積極的でした。以前は、米国は中国に対して強硬な姿勢をとり、中国は関係のさらなる緊迫化を抑えようとしていました。
今回は、両国ともに、そのような進路がもたらしうるリスクと結果を計算した上で、「ブレーキをかける」ことにしたのでしょう。これはウクライナ情勢の影響であり、また、それにより世界の国際情勢が全般的に悪化したことも一因です。
それでも、中国がアメリカの戦略的ライバルであることには変わりありません。ただ、両国が「不要なエスカレーション」を避けるようになることで、両国の対立がより「ゆるやなか」ものになるというだけです。両国で首脳会談が実施されたという事実と会談結果はポジティブなものですが、それが長期的に続くという過大評価は控えるべきです。
なぜなら、米中の根本的な意見の相違はそのままだからです。つまり、今回の出来事は、両国関係における戦略的転換点を意味するものではなく、戦術的な解決策にすぎないということです」
「両国関係は、ロシア自身に、また、ウクライナでの軍事作戦がどれだけ効果を上げられるかに大きく左右されます。
なぜなら、紛争の理由や評価がどのようなものであれ、結局は、弱い側ではなく強い側と「仲良くする」のが普通だからです。中国は(多くの人が思っているように)一般的な情勢に沿って決定を下すわけではありません。自国の長期的な国益に沿って決定を下すのです。
中国にとって重要なのは自国の立場です。しかも、この戦略は、パートナーや交渉役としての中国の価値を高めるので、中国の行動の余地は広がります。中国が自分の立場を「売る」ことはありません」
「米国が自分は特別だというイデオロギーを決して捨てず、唯一の超大国であり続けようとすることを、中国はよく理解しています。一極世界のルールを維持しようとすれば、必ず、中国の立場や野心と衝突することになります。
ですから、両国の戦略的対立は不可避であり、中国はさらなる対外拡張を追い求めることになります。両首脳がインドネシアで和解的な発言をしたことは、早すぎる衝突を避けるための手段に過ぎません。つまり、決定的な対決をできるだけ長く「先送り」しようというものです。
ちなみに、これは両国ともに必要としていることです。米国にとっては、ロシアと中国を同時に相手にするのは荷が重すぎるのは明らかです。バイデン大統領は、まず、アメリカが「弱い方」だと考えるロシアと決着をつけ、それから中国に本格的に取り組もうとしています」