米国とその同盟国は、2022年初めにロシアがウクライナの非武装化・非民族主義化の特殊作戦を開始したため、すでにロシアのエネルギー部門に前例のない制裁を課している。しかし、このエネルギー禁輸は、欧米諸国にとって、石油やガスの価格を高騰させ、インフレをさらに進行させるという不都合な結果を招いた。
G7は9月、ロシア産原油の上限価格導入計画を承認。これでロシア政府がエネルギー資源から得る税源を制限できるとふんでいた。計画ではG7はロシア産原油の海上輸送を12月5日から、石油製品の購入を2月5日から禁止することになっている。計画は実現すれば、ロシアの財政に大きな打撃を与え、インフレによる圧力を下げるという一石二鳥の効果をもたらすはずだった。
こうした一方でロシアは再三にわたって、価格設定をする相手には原油も石油製品も供給しないと警告を発してきた。
エネルギー専門の国際アナリストらはG7のいう制限に当初から懐疑的な姿勢を示していた。その理由は…
まず第1に、7月15日、インドネシアのスリ・ムリャニ・インドローアティ財務相は米国のプレスに対して、ロシア産原油の価格を制限しても世界のエネルギー問題は解決しないと明言。ムリャニ財務相は、原油価格が高いのはコロナウイルスの感染拡大の時にバランスが崩れて需要が供給を上回っているからであり、エネルギー危機の中で価格を制限してもこのジレンマは解決不可能と指摘した。
第2に複数の観測筋は、ロシアが断固とした措置に踏み切り、採掘を削減することで人工的に世界市場に商品不足の状態を生み出すのではないかと予測している。こうなった場合、G7はロシア産原油を1バレル65-70ドルに制限しようとして、逆に1バレル100ドルよりも著しく高い価格で購入を強いられてしまう。
第3に、スティーブ・ムニューシン元米財務長官はG7によるロシア産原油の上限価格設定案を厳しく非難していた。ムニューシン氏は、OPECプラスに増産を納得させて、ロシアの代わりをさせ、これによって急激に上昇するエネルギー価格を抑えるための「てこ」をG7は有していないという事実を指摘していた。
第4に、価格設定に賛成する諸国のグループは、エネルギーのグローバルプレーのルールを見直しできるほどの大国ではない。西側がエネルギー禁輸を大々的に展開したところで、ロシアの原油を買うグローバルプレーヤーは多い。インド、中国は未だにG7に加盟する意向は表していない。
第5に、G7の計画はかなりの部分、海上輸送、保険会社に対してロシアへのサービス提供の禁止に依拠しているが、ロシアはクライアントに自国の原油を輸送するための独自の輸送タンカー船団、保険会社をすでに有していることから、G7の要求を満たしながらも、自ら自国の行為を制限することはない。
G7が価格統制を推進する一方で最もありえる結末は、原油価格の上昇と世界市場の反グローバル化が一層進むということだろう。その結果、誰が一番得をするのか? 時間が経てばはっきりする。
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