「人為的な」危機の原因は制裁だが、それには「触れない」
「つまり、理由は複数あるのです。しかし全世界において理由は一つ、それはもっとも厳しい電力危機の引き金となった対ロシア制裁です。一方で、日本のメディアは電気料金の高騰は対ロシア制裁と直接関係ないとしており、エネルギー資源の危機は、何より、全体的な地政学的に不安定な状態が強まったためだと説明されています。
(世界で緊張を引き起こしている)要素の中として挙げられているのは、コロナウイルスによるパンデミック、米中の対立、ウクライナ紛争などです。
つまりこれらすべてが重なったことが原因だとしているのです。このように、世界のエネルギー市場の不安定さを生み出している本当の第一の原因は『あいまいにしたまま』なのです。電気料金高騰の問題は、ネガティブなものとしつつも、地域的なものではなく、日本人を含めた世界のプロセスに『打撃を与える』ものとして『提示して』いるのです」。
全世界を襲う危機
「救命浮輪」は日本の近くのサハリンにある
「現在、事実上、全世界がエネルギー資源の高騰により文字通り『恐怖に包まれて』います。しかし日本は、(米国の同盟国でありながら)ロシアとのガス供給契約を破棄しなかった数少ない国の一つです。米国がいかに努力しようと、日本企業は日本に『重要なエネルギー源』を提供してくれる『サハリン1』と『サハリン2』のプロジェクトから撤退しないと決めました。危機的状況にある日本の国民にとって、これは非常によいニュースです。幸いにも、日本の経済学者たちは実用主義的だったというわけです。
ですから、近い将来、ロシア産ガスの供給量がさらに増加したとしても、わたしは驚きません。というのも、(西側寄りで、反露的な論調の)日本経済新聞ですら、ロシアのエネルギー資源を拒否することは理性的ではないとの見解を示しているのです。これはガス不足のためだけではなく、カタール産の液化天然ガスの輸送費が大幅に高騰していることにもよります」。
リスクも価格も上昇
「かつて、ガス運搬船は台湾海峡を通過して『航行』していましたが、紛争が起きた場合には、それを回避することになります。一方、マラッカ海峡では今でも海賊が出没しています。これは、あらゆる意味において、『荒れた海』であり、そのためガス運搬船の保険料はどんどん上昇しています。加えて、時間的な要素もあります。というのも、輸送には2週間ほどかかるのです。しかし、サハリンのエネルギー資源は実質2日で日本に輸送することができます。従って、当然ながら、時間と費用の節約ができるわけで、これは日本の経済にとってかなり重要なことなのです」。
かつてのパートナー国は「引っ張りだこ」:日本に供給する余裕などない?
「カタールはすでに自国産のガスを今後何年かにわたり中国に売るという契約を結びました。欧州諸国にはほとんど何も残らない状況です。これは多くのことを意味します。そこで日本は今、未来のエネルギー安全保障について考えなければならなくなりました」。