成長の速度と経験、どちらに軍配が上がるのか
「何よりも、これは艦船に関してです。フリゲート艦、巡洋艦などはもっとも近代的な性能を備えています。米国はこれほど『テンポの早い成長』に対処することはできないのではと危惧していますが、米国にも大きな利点があります。それは豊富な戦闘の経験です。
一方の中国には、海上での戦闘の経験は事実上ありません。加えて、米国の海軍部隊には10の空母打撃群があり、中国の部隊よりも強力です。さらに、米国はいつでも予備役を召集することができます。現段階で、中国が保有しているのは空母2隻だけで、もう2隻はまだ試験の段階にあります。
つまり、現在、『戦闘能力の争い』においては、圧倒的に米国側に有利な状況です。というのも、空母打撃群というのは、空母だけでなく、原子力潜水艦を含めたその他の随伴する船をも指すからです。
これはかなり強力なものであり、米国がこれを機動させた場合、中国が勝利を収めることは難しくなるでしょう」。
極超音速空母「キラー」
「米国には現在、それに対抗できるものが何もありません。」
「対立には2つのシナリオが考えられます。1つ目のシナリオ(台湾問題の解決法の一つ)は島をすばやく占領するというものです。しかし、それは、米国(あるいは台湾自身)が中国に対し、冷笑主義的にそのような行動を挑発するという不可抗力においての場合です。中国は主要な目的をもって向かうでしょう。それは米国にこの紛争に(積極的な参加国として)『介入させない』ということです。
もう一つ、考えられるシナリオは、島の周辺に疲弊した地域の米国(とその同盟国)の部隊を配置し、台湾を長期的に(中国海軍から)封鎖するというものです。他でもないこのシナリオ(ウクライナ紛争のタイプ)は中国にとって不利なものではありますが、こちらも米国の挑発があれば、そうなる可能性があります」。
ロシアと中国のタンデム体制
「これはロシアと中国が海上での戦略的な協力関係を強化させていることをはっきりと物語っています。事実上、これは(正式には形成されていないものの)、地域における両国の海上同盟を意味します。現在、日本がロシアに対して厳しい立場をとっていること(対露制裁)を考慮すれば、ロシア・中国のタンデム体制を強化する要素として、そこに北朝鮮を組み入れる可能性も除外できません。
中国、ロシアの軍事力に、核ミサイルプログラムを順調に実現している(最近の実験でも披露されている)北朝鮮が加われば、地域で米国と張り合うことができます。しかも、海上では中国にやや軍配が上がります。というのも、『占領』する上で重要な役割を果たすのは、空母ではなく、(中国がより多く保有する)艦船だからです。そんなわけで、米国との対立があった場合、やはり60:40の割合で中国に有利に傾くでしょう」。
3番目の当事国:台北の現状
「彼らは意図的に紛争に参加することはありません。しかも民主党が政権についている時代は終わりに近づいています。2023年は次の選挙まであと1年という年になります。選挙の後、台湾の方針が転換する可能性もあります」。
勝者が誰になるかはわからない
「中国は近代化プログラムを加速化し(2035年から2027年に前倒し)、この問題に重点的に取り組んでいます。これまで、アジア太平洋地域におけるパワーバランスは長期にわたり米国が独占していましたが、それが実際、少しずつ中国側に傾いています。
しかし、結局、この『争い』が最終的に誰の勝利に終わるのかを予測することはできません。なぜなら、いずれにせよ、米国の軍事力は強大で、また現在、地域への注目度がますます大きくなっています。米国は同盟国と積極的に協力を行なっており、何より、日本、韓国との協力が増し、このことはもちろん、地域の緊張を『高めて』います。しかし、中国は忍耐力を発揮しています」。
戦略的休止をとる中国
「かつて鄧小平が指摘していたように、『才能を隠して、内に力を蓄える』のです。中国は、おそらく、今、この言葉の意味を再解釈しています。地域における情勢悪化は、『台湾問題』を含め、現在、中国にも不利なものです。なぜなら、深刻な経済的影響を伴うことになるからです。中国の経済成長率は低下しており、今、そのような状況を許すことはできません。加えて、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響、またこれまでにないほど厳しい制裁を受けているロシアの例もあります。中国は自国経済に対し、そのような試練を招くような真似は絶対にできないでしょう」。