【解説】日本における安保政策の転換期

© AFP 2023 / JIJI Press «Patriot» PAC-3
 «Patriot» PAC-3  - Sputnik 日本, 1920, 21.12.2022
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12月16日、日本政府は、国家安全保障戦略に大きな修正を加えた。政府は臨時閣議で、「国家安全保障戦略」など、現実に即したより高い防衛力を達成する方向性を示した3つの基本文書を承認した。岸田文雄総理大臣によれば、地域および世界の安全保障をめぐる状況が急激に悪化しているのを背景に、現在の日本の防衛力が十分でないことは明白である。日本は反撃を可能とするが、先制攻撃は行わないとしている。
新たに承認された文書では、日本を取り巻く国々が質的にも、量的にもミサイル技術を大幅に向上させている点が指摘され、よって、日本に対するミサイル攻撃は現在、「明確な脅威」であり、日本は現在保有しているミサイル防衛システム以外の防衛手段を必要としていると記されている。
これを目的として、日本は、米国から長距離巡航ミサイル「トマホーク」を購入し、現在、自衛隊が保有する12式地対艦誘導弾の射程を延伸し、また新たな兵器の開発を活発化する計画である。
一方、攻撃抑止の手段として、日本政府は、日本に対し直接攻撃があった場合、または「友好国」に対する攻撃が行われ、それが日本の存続に対する脅威となった場合、反撃する権利を認める。
さらに新たな文書には、日本は、仮想敵国に対する先制攻撃は行わないことが明記されている。
加えて、文書には、宇宙、サイバーなどの領域での能力を強化する意向が記されている。

このような決定が下された動機とは?

おそらく、反撃能力に関する決定は、2022年に明らかに加速化した北朝鮮の弾道ミサイルの発射と、中国船の日本領海への侵入を考慮し、かなり以前から検討されていたものと思われる。
しかし、2022年8月に行われたナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問を受けて、中国の軍事演習があまりにも活発化していることが、さらにこの決定を後押しした可能性も排除できない
これらの演習では、弾道ミサイルの発射が行われ、ミサイルは日本の排他的経済水域に落下した。
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日本の防衛費は中国と米国よりもはるかに少ないが、日本政府はその増額を目指している

日本政府は、自らの課題を遂行するためには、2023年度からの5年間で43兆円必要だとの見方を示している。
防衛費は、「NATO基準」を参考に、GDP2%の達成に向け、少しずつ増大する。
2021年の日本の防衛費は540億1240万ドル(3兆4029億円)、中国は2930億3520万ドル、米国は8000億6720万ドルであった。
岸田総理は、防衛費の4分の3を、歳出改革などでまかなうとしている。
そして残る4分1については、法人税、復興特別消費税、たばこ税の増税分を財源に充てようとしている。
NHKが10月に実施した世論調査によれば、回答者の55%が防衛費の増大に賛成すると答え、反対と答えたのは29%だった。
今回の決定について岸田総理は、「戦後の安保政策を大きく転換するもの」と名づけている。
一方で、総理は、この対応は憲法や国際法、国内法の範囲内のものであると強調した。
また非核三原則や専守防衛の堅持、また平和国家としての日本の歩みは今後も不変だとしている。

国家安全保障戦略は法ではなく方向性

今回の日本の閣議決定について、モスクワ国際関係大学東洋研究学部のドミトリー・ストレリツォフ学部長は、「スプートニク」からの取材に応じた中で、「日本は小さな一歩一歩で、完全なる軍事大国になろうとしている」と指摘し、
最近の国家安全保障戦略の変更は、そのことを確証していると述べている。

「最近、日本の周辺ではきわめて不穏な状況が出来上がっています。そこで日本政府は、中国、北朝鮮、ロシアという3方向から押し寄せてくる脅威に対抗する必要に迫られています。

その全体的な不安が、世論にも影響しています。そしてさまざまな世論調査で、日本国民も、日本も国益を守るためにより厳しい立場に立つべきだという考えに傾きつつあります。このことは、政府が防衛強化に向けて進んでいくための作業を大幅に軽減するものです。しかし、国家安全保障戦略というのは、法ではなく、将来に向けた方向性を定めるものです。そしてこれはかなり長い時間を要するものです。

現在、日本の防衛費は、韓国、フランス、ロシアの軍事費と同等です。もし今後5年で日本の防衛費がGDP費2%に達するとすれば、これは世界で3番目に大きい規模になります。

しかし実際にそれを実現することができるかどうかは時が示してくれるでしょう。日本では2022年3月31日に終了する2021会計年度の『国の借金』はGDPの2.6 倍以上となる1241兆円を超えます。この2年で、国の借金が増大しているのは、新型コロナウイルスによる医療および社会分野での追加拠出によるものです。新たな安保戦略ではいくつもの課題が据えられていますが、どれほど達成できるかは今のところ不明です」

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米国は戦略改定を歓迎

日本政府が安保3文書を改定したその日、米国務省は公式サイトにこの決定について歓迎すると表明、
「これは日米同盟の能力を再構築するものであり、インド太平洋地域および世界の法に基づく秩序を守るものである。日本の戦略は重要な整合性があり、同じ考えを持つ同盟国や友好国とのより緊密な関係は共通の利益と価値観の保護と問題解決に最重要な意義を持っている」と指摘した。
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