「つまり、米国の現在の主な課題は、同地域における海上での軍事作戦に向け、同盟国に準備させることです。これと平行して、豪州に巡回駐留する米軍部隊や駐韓米軍の海軍部隊の増強も行われています。そしてアジア太平洋地域における米国の主要なパートナー国である日本でも、当然ながら、同様の動きが起こっています。とりわけ沖縄にはこの地域でもっとも大規模な米海軍が展開しています。したがって、日本領内での対艦ミサイルの増強は、中国との大規模な戦争への準備として、今後、地域を軍事化していくための当然の一歩です」
「米国はミサイル防衛の増強に数十億ドルを拠出するつもりはないでしょう。なぜなら効果的な成果が期待できないからです。米国は、いまや中国はあらゆるミサイル防衛を突破することができる極超音速武器を開発できる最新の技術を持っていることを理解しています。中国政府の発表を信じるなら、中国はすでに極超音速兵器の実験を成功させています。つまり、米国にはもうミサイル防衛に資金を投じる意味がないのです。
現在、米国は(ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問もそうであったように)中国との政治上の地域紛争に重きを置くようになっています。しかし、同時に、こうした行動はお互いの軍事力の示威を伴うものであり、そのためには、実際の衝突が起こったときのための対艦ミサイルが必要なのです」
「しかも、軍事紛争は複数の場所で展開する可能性があります。1つ目は対中国、つまり台湾周辺です。2つ目は、米国が、対ロシア戦線として、(両国に何らかの軍事行動を挑発し)日本を現在のウクライナと同様の役割で利用することができるクリル諸島周辺です。そして3つ目は中国と日本の間でいまなお係争中の領土問題(尖閣諸島)の激化を挑発することです。しかも、米国が地域情勢を急激に悪化させようとすれば、簡単に爆発する領土問題というものは、アジアのほとんどの国に存在します」
「中国は潜水艦の建造を積極的に進め、艦上機を製造し、太平洋上での軍事力を拡大しています。また、ますます多くの中国の艦船が世界のさまざまな海上で演習を行うようになっています。最近では、中国とロシアが東シナ海で、合同軍事演習『海上連合』を成功裡に行いました。
中国の艦隊は強力で、核弾頭を運搬する能力を有しています。そこで米国は、中国と『個別の戦略軍事紛争』を行うことを避けようとするでしょう。しかし、中国を地域紛争に巻き込めるとすれば、それは別問題です。
他でもないこうした目的のために、米国には日本と韓国、地域のその他の国が必要なのです。つまり、米国のシナリオでは、 それらの国々が中国を積極的に『刺激』し、中国がその国に対して何らかの攻撃を行うよう仕向ける必要があるのです。
一方、米政府は、この地域紛争を将来的な中国への政治的圧力に利用しようとしています。つまり、これは現在、米国がウクライナでロシアに対して用いている戦法とまったく同じです。米国はこれによって成果を得ることができると考えており、今度はそれをアジア太平洋地域で、中国に対して実行するつもりなのです」
「勝利の王冠を手にするのは、極超音速兵器を発射する技術を獲得した者です。というのも、『ツィルコン』のようなロシアのミサイルは、数十機の爆撃機、多くの兵士を搭載した建造費100億ドルもする米国の空母を簡単に沈めることができるからです。
そこで米国はすでに海上での軍事戦略を見直し始めています。よりコンパクトな機動性の高いステルス艦(レーダーや赤外線などに探知されにくい)の製造への移行です。これは空母と異なり、騒音もなく、気づかれにくく、その上でかなり効果的な長距離攻撃システムを装備することができるのです」
「対艦ミサイルは常に進化しています。最近は、移動式の地上施設で使われることが多くなっています。しかし、艦船に設置された発射装置、海上、海中など、あらゆる種類のミサイルが成功裡に発射されています。しかもかなり長距離の目標を撃墜することができるのです。
かつては空母が戦闘地に爆撃機を運び、その爆撃機を飛ばして軍事目標を爆撃していましたが、現在は(長距離ミサイルを多数搭載した)比較的小さな艦船を必要な場所に派遣して、以前、空母が行っていた役割をうまく果たしています。しかも、空母よりも(より少ない費用で)より大きな損害を与えることができるのです」
「なぜなら、米国にはまだ極超音速ミサイルの技術開発のための時間が必要だからです。今のところ、まだ米国はこれを開発できておらず、現時点では中国と大きな軍事紛争を始め、この国と『張り合う』ことはできないのです。
さらに、中国との衝突の時期は、ウクライナ紛争の結果にかかっています。もし、この紛争がロシアに有利な形で終われば、米国は中国との対立をかなり後に先延ばしするでしょう」