バベッジ氏は、インド太平洋地域で大規模な戦争が発生する可能性が、現在、第二次世界大戦以降で最も高いと指摘している。その引き金(トリガー)となるのは、中国による台湾侵攻である可能性がある。中国の習近平国家主席はすでに、台湾と中国本土の統一を「実現しなければならない」と明言しており、中国政府の軍事力、経済力、産業面は十分に強力であり、台湾を占領して、この地域の覇権を握る米国に直接挑戦することができると同氏は警告している。このような背景から、米国は台湾を守る準備ができているというバイデン大統領の約束は、極めて思慮に欠けたもののようにみえる。
戦略アナリストであり防衛プランナーであるバベッジ氏は、中国が米国とその同盟国が介入する数時間前に空、海、サイバースペースから電光石火の攻撃を仕掛け、台湾の重要な戦略標的を掌握する可能性が高いと指摘している。こういったことは、2021年にアフガニスタンで米国がタリバンに明け渡した時のように素早く起こると同氏はみている。
バベッジ氏は、この地域における米国の同盟国も攻撃を受けることになると指摘する。世界最大の海軍とアジア最大の空軍を擁する中国は、日本・韓国・フィリピンに駐留する米軍、そして西太平洋の米国領にいる米軍とその同盟国を攻撃できる1350発以上の弾道ミサイルと巡航ミサイルを保有している。
中国はサイバースペースにおいても米国よりも優位にたっているとバベッジ氏はみている。戦争になれば、中国はサイバースペースを利用して通信を妨害し、偽情報を流し、米国社会に混乱、分裂、不信感を植え付けることが予想される。そうすることで、中国政府は米国の衛星と、それと関連のあるインフラを攻撃することができるという。
現在のウクライナ紛争で明らかになったように、米国は先端兵器の生産で中国を上回ることはできない。バベッジ氏は、ウクライナ政府への軍備供与により、米国の主要な軍事システムの在庫は枯渇しており、その補充には何年もかかる可能性があると指摘している。
さらに、米国経済は中国の資源や製造品に大きく依存しており、その多くは軍事的な用途に使用されている。米国の消費者は、電子機器から家具、靴に至るまで、安価な中国製の輸入品に依存している。しかし、これらの商品を輸送する航路は中国によって管理されている。バベッジ氏は、中国による台湾侵攻が成功すれば、米政権は台湾製の世界最高水準の半導体やその他の重要部品へのアクセスが奪われることになると警告している。このような事態になれば、米国内にある多くの商品の在庫はすぐになくなり、多くの企業が閉鎖され、米国人は一部の商品を配給で得るという状況に直面する恐れがある。
同氏によると、中国との戦争を防ぐ最善の方法は、米国の外交・国内政策の弱点に対処し、より強力な封じ込め政策を構築することであるかもしれないという。しかし、これを行うには時間がかかる。それまでは、米政権は挑発行為を避け、中国政府との丁寧な対話を維持することが重要であると同氏は結論付けている。
スプートニクは先日、中国の外交担当トップの王毅氏(中国共産党中央外事工作委員会弁公室主任)が、ドイツのミュンヘンで米国のアントニー・ブリンケン国務長官と会談した際、台湾海峡の安定を維持するために米国ができることについて発言したと報じた。
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