「この映画は、日本の変化の中にいる若者たちの日常を描いた物語です。この作品が、国も文化も言語も違う人たちにどう届くのだろう、その反応を知りたいという、純粋にその気持ちでやって来ました。初の一般上映が終わったとき、お客さんが声をかけてくれ、(言葉がスムーズに伝わらない中でも)なんとか思いを伝えようとしてくれました。『センシティブ』(繊細)という言葉が何回か聞こえて、自分たちが大事にしていた部分を汲み取ってくれた、ちゃんと伝わっていたんだ、自分たちの映画が届いたんだと思ってすごく嬉しかったです。上映が終わって会場で拍手が起こった時は、感動しました。」
「映画祭は、一人でも多くの方に見てもらうために必要な場所。この場を通すことで、作品がより広がるきっかけになります。そして、映画はみんなで作っているものですが、自分の作品や世界、自分の作りたいもの、信じているものを認めてもらえたという事実が、これから先映画を作るにあたって、とても自信になります。『あなたの映画の世界、視点を、そのまま続けていいんだよ』と、背中を押してくれる場所だなと思いますね。」
「最初は夢を見ているようで、実感がありませんでした。でも、映画を大きなスクリーンで見て、お客さんが感想を直接伝えてくれ、言語や文化を超えてこの映画が届いていけることを実感して、その日は安心してよく眠れました。お客さんの中に、自分の父親のことや生活のこと、友達のことをとても考えた、と言ってくれた人がいたのが、印象に残っています。自分もそういったことで悩んだりもするので、そういう部分は共通しているんだなと感じました。
僕としては芸術や音楽作品など、表現するものに対して『評価』は必要ないと思っています。ただ、映画祭というのはひとつの基準であり、基準をつくることで、より良い作品が生まれやすくなり、作品の届く範囲も広がっていくと思います。特定の映画祭での評価が絶対ではありませんが、ひとつの基準があることで、そこを目指したり、また次のチャンスに繋がる、そういうものだと思っています。」
「どこも新鮮で、建物や緑を見ているだけで楽しいです。話には聞いていましたが、地下鉄のエスカレーターが本当に速いです(笑)劇場もたくさんあり、芸術が身近な場所だと感じました。叶うことならこの町で、この町に生きている人たちの物語を撮ってみたいです。公園のベンチや並木道、オープンテラス、路地裏も含めて面白いです。自分の中でモスクワは、ちゃんと『生活』がある町だと感じました。町歩きしながら作品が撮れるんじゃないかと思います。」
「選び方は人によって違います。2、3分見ると、最後まで見る価値があるかないかは分かるものですが、私はいつも最初から最後まで見ることにしています。というのは、1回だけ、私の同僚がある映画の最初の10分と最後の10分を見て、選ぶ価値なしと判断したことがありました。しかし他の映画祭でその映画を見たら、非常に調和が取れていたんです。間を飛ばしたりしないで全部見るのは、その経験をふまえているからです。
私は2019年に日本を訪問しました。なぜこの映画を推薦したかというと、日本の文化、日本の精神、そのものが映し出されていると思ったからです。日本の現代社会の雰囲気を小説や詩のように反映しています。これをモスクワで見せることは重要であると思いました。この映画祭は伝統的に、若い才能を見出すことに重きを置いています。この方針は今後も続けられるべきです。この映画祭は後に世界レベルの巨匠となる人を輩出してきました。若い人にチャンスと機会を与え、そしてその後、どうキャリアを発展させていくかを見ていきたい。世界の映画界のもっと大きい舞台で活躍して、その才能を世界で最初に認めたのはモスクワ国際映画祭だったということになってくれたら嬉しいです。」