ウクライナ上空の制空権をめぐる闘い

【解説】ウクライナに供与されるF-16  この戦闘機ができることは何?ウクライナ政府が要請したのはなぜ?

ジョー・バイデン米大統領は広島G7サミット開催時に、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、ウクライナ人パイロットに米国製の第4世代戦闘機「F-16」の操縦訓練を行う計画について説明した。ロシア政府はこの動きを非難し、軍事戦略においてこれらの措置を「考慮に入れる」と警告した。スプートニクは、ここ最近で最も議論されているF-16の特徴についてお伝えする。
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ウクライナへのF-16供与の可能性に関する詳細は、依然として不明瞭な状況だ。バイデン政権は、米国自身が供与するかどうかについての情報を提供しておらず、イタリアやポーランドなど北大西洋条約機構(NATO)の主要加盟国のいくつかは供与しないことをすでに表明している。
メディアはウクライナ政府が中東の米国の顧客からF-16を譲り受ける可能性を否定的に報じているが、中東では同機が欧州全体よりも多く配備されている。推定125機のF-16を保有しているデンマーク、ノルウェー、ベルギー、オランダは、新たな米国製の戦闘機「F-35」を納入するスペースを確保するために、ウクライナに「寄付」する可能性がある。
EUのジョセップ・ボレル外相は、ポーランドを含む多くの国々が、ウクライナ人パイロットに対するF-16の操縦訓練を開始したと明らかにした。米国メディアが入手した米空軍の報告書によると、訓練に要する期間は約4カ月で、これは想定されていた18カ月を大幅に下回ることになる。
ウクライナ上空の制空権をめぐる闘い
ウクライナへ供与された米国製F-16は、NATOの飛行場から飛び立つだろう=駐米ロシア大使

ウクライナ空軍にとっての 「理想的な候補者」

ウクライナ空軍とウクライナ陸軍航空隊は、ここ1年半の間に、2022年2月以前の在庫の大部分にあたる固定翼機60機超と回転翼機30機超、さらにNATOの後援者からウクライナに供与されたジェット機やヘリコプターを失って壊滅状態に陥っている。
旧ワルシャワ条約機構の加盟国からNATO加盟国となった国々でソ連製の軍用機の在庫が枯渇する中、ウクライナ政府はロシアとの代理戦争を継続するため、豊富で手頃な価格のジェット戦闘機の新たな供給源を必要としている。
さらに、英国はウクライナに長距離型空中発射巡航ミサイル「ストーム・シャドウ」を供与することを約束している。これは、ウクライナ政府がこのミサイルの輸送機を必要とする可能性があることを意味している。ストーム・シャドウは英仏の戦闘機「トーネード」、英独伊西の「タイフーン」、フランスの「ラファール」と「ミラージュ2000」に搭載するように設計されているが、F-16で使用するためにミサイルを改造することは、ソ連製の戦闘機にミサイルを搭載するよりも容易だと考えられている。
F-16の最大のセールスポイントはおそらく、その豊富な供給数。ジェネラル・ダイナミクス社とロッキード・マーティン社によって製造された同機は1970年代後半に運用され、これまでに4600機以上が製造され、約50年間で世界20数カ国に輸出された。現在、運用されているF-16は1000機を超える。
このように生産数が多いということは、安価な中古機やスペアパーツがたくさんあることを意味する。機体の構造にもよるが、F-16は米国とNATOの納税者に1機あたり1200万ドルから1600万ドルを負担させる機体だといわれている。

核兵器も搭載可能な多用途戦闘爆撃機

F-16は、当初はヨーロッパ、中東、アジアの平原でソ連の戦闘機や爆撃機に対抗し、優位性のある戦闘機として構想されたものだったが、主に防空能力が限られているか、あるいはその能力が存在しない国や非国家主体に対する多用途戦闘機として機能するよう改良された。
ベーシックなF-16には、ドッグファイト用の20ミリM61バルカン砲が搭載され、11カ所のハードポイントに空対空、空対地、対艦ミサイルを搭載することができる。そのミサイルとは、AMRAAM、IRIS-T、パイソン、サイドワインダーなどの対空ミサイル、HARM、JASSM、マーベリック、JSOWなどの空対地ミサイル、さまざまな誘導・無誘導爆弾、ハープーンおよびペンギン対艦ミサイルなどだ。
F-16には、爆発力が最大400キロトンの米国の核爆弾B61とB83も搭載できる。ちなみに、1945年に広島に投下された米国の核爆弾の爆発力は「わずか」15キロトン。
F-16の最高速度はマッハ2.05(時速約2530キロメートル)、巡航速度は時速約930キロメートル。戦闘行動半径は約860キロメートルだが、燃料タンクを落下させ機動性や武器搭載能力を犠牲にすれば、その範囲は最大4200キロメートルを超える。F-16に対する空中給油は可能だが、ウクライナにNATOの給油機が与えられていないことを考慮すると、ウクライナにある空中給油機「イリューシンIl-78」はロシアの長距離攻撃にさらされることになる。イリューシンIl-78は地上に留まっているだけでも容易に被弾する可能性があるのだ。
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「飛び立つことさえできないだろう」 英国の軍事専門家、ウクライナにおけるF-16運用の困難について語る

ロシアにも好敵手がいる

欧米の観察者たちは、1980年代に開発され、2010年代半ばにロシア軍に導入された第4世代多用途戦闘機Su-35とF-16をしばしば比較してきた。Su-35は、先進的なアビオニクス(飛行のために使用される電子機器)など第5世代機の要素を取り入れるべく改良化された戦闘機だ。しかし、F-16のより適切な比較対象はソ連で1980年代に登場したMiG-29だろう。MiG-29の最高速度がマッハ2.25なのに対し、F-16はマッハ2.05。MiG-29の航続距離が2100キロメートルなのに対し、F-16は860キロメートル。MiG-29の実用上昇限度1万8000メートルなのに対しF-16は1万5200メートルと、MiG-29は速度の高さと優れた機動特性を誇る。そして、F-16の一部機種の兵器搭載重量が7700キログラムなのに対し、MiG-29の搭載重量は約3500キログラムと軽く、これは正にMiG-29が制空権重視の軍用機となっている。MiG-29にはもう一つの利点がある。それは、F-16が単発エンジンなのに対し、MiG-29は双発エンジンであることだ。つまりこれは、緊急事態が発生した場合、MiG-29は理論上、友好関係のある空軍基地まで足を引きずりながら戻ってこられる可能性がF-16よりも高いことを意味する。
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