マイナンバーシステムは2016年に導入されたが、様々な批判や疑問が相次いでおり、すぐには人々に受け入れられなかった。人々は、個人情報のデータベースが作られることで、それらの情報が第三者によって悪用されたり、情報が漏洩するかもしれないとして懸念を表したのである。また多くの人々が、個々の市民に番号をつけたデータベースが作られることで、様々な機関に全国民、そしてすべてを監視、管理する可能性を与えるものになると考えた。
しかし、マイナンバーカードはその年の1月から、税金の計算、社会保険の支払い、住民基本台帳の管理、災害の際の捜索や支援提供などで積極的に使われるようになった。そのとき、政府機関はすでに、このカードの用途をさらに広げていく計画であると発表していた。そして今、2024年秋までに、国民はマイナンバーカードに健康保険証を紐付けなければならないとされている。マイナンバーカードを持っていない人には証明書が発行されるが、これは毎年、更新しなければならず、またその場合は治療費も多めに払うことになる。
データの漏洩というのはデジタルデータだけでなく、紙のカードでも起こりうることであるが、なぜ日本人がこの計画にこれほど反発を感じるのはなぜなのだろうか。
歴史研究家で作家、日本研究者でもあるアレクサンドル・クラノフ氏は、情報漏洩に対する懸念だけではなく、日本が伝統的に「紙」文化の国ということも背景としてあると指摘する。
「日本の人口の1/3がIT技術とはほとんど関係のない高齢者たちです。彼らにとって、デジタルというのは理解できないものであり、感情的に受け入れられないものです。彼らはこれは自分の手に負えないものだと恐れ、もし保険証のデータが電子カードに移されるときに何か手違いがあれば、それを訂正するのにも時間がかかり、手続きも面倒だと考えているのです。日本のITシステムはかなり独特で、複雑です。例えば、多くの出品者が自分で楽天に登録することはできません。そのためにはヘルプが必要になるのです。
そして日本では、技術的に進んだ国ではほとんど使われていないファックス機がいまだに使われています。これは日本人は情報窃盗などのサイバー犯罪を恐れているのではなく、便宜性というものを重視しているのことを意味するのだと考えます。というのもこの新たなシステムは納税者の資金で行われるのであり、人々は、物価も税金も高くなるのに、なぜこんなことをするのか理解できないのです」
マイナンバーカードは、事実上、機能を拡大した国内用パスポートのようなものである。
ロシアの主要なIDカードは今でも、国内用パスポートであり、外国に行くのには外国用パスポートというものが別にある。健康保険証について言えば、ロシアでは義務医療保険というものがあるが、これが2015年にデジタルとなった。また個人と企業を対象とした任意医療保険もあるが、こちらには義務医療保険よりもはるかに幅広い医療サービスが含まれている。
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