穀物合意 現状と今後の展開

【解説】穀物合意、きょう期限迎える 再開には様々な課題

ウクライナ産穀物やロシア産肥料・農産物などの輸出を定めたいわゆる「穀物合意」がきょう17日、期限を迎えた。スプートニクは昨年7月の合意成立から1年間で達成されたこれまでの実績や、現在の課題についてまとめた。
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穀物合意とは

2022年7月、国連とトルコの仲介で、「黒海イニシアチブ(通称・穀物合意)」が成立した。合意は主に2つの協定からなっている。1つはウクライナの黒海沿岸の港から穀物を輸出するもの。もう1つはロシア産食料、肥料への輸出制限の解除に向けた国連との合意となっている。協定は人道的性格を持っており、食糧不足に悩む最貧国への穀物・肥料の供給を目指していた。

協定は履行されたか

ロシア産穀物などの輸出に絡む制裁解除の協定については、完全には履行されなかった。銀行決済や輸出船の保険適用などの問題は未解決のまま残った。また、科学肥料の原料となるアンモニアをロシアからウクライナへ運ぶルート「トリヤッティ-オデッサ」については、今年6月、ウクライナの工作員が同国内を通過するパイプラインを爆破するテロが起こり、再開は見通せていない。
また、ウクライナ産穀物の輸出に関する協定にも問題が起こっている。当初、合意は最貧国への輸出を念頭に結ばれたが、実際は先進国やより豊かな発展途上国に供給された。
穀物合意 現状と今後の展開
【図説】穀物合意 目的と結果、延長の条件
スプートニクが国連のデータを参照したところ、協定によるウクライナ産穀物の主要な輸出先は欧州連合(EU)諸国だった。この1年間で輸出された穀物全体の38パーセントにあたる、約1240万トンがEU圏に渡った。
また、1国の輸入量として最も多かったのは中国の約800万トンだった。また、スペイン、トルコ、ポルトガル、ベルギー、ドイツ、フランス、ルーマニアなど、比較的裕福な国が輸出先リストの上位に並ぶ。アフガニスタン、イエメン、ソマリア、スーダン、エチオピアといったアジア・アフリカの最貧国への輸出は、全体のわずか2.3パーセントの76万8600トンにとどまった。
これまでにロシアは度々、合意が人道的性格ではなく、商業的性格を持っていると指摘してきた。西側諸国は、より「成功していない」方の協定に関するロシアのいかなる憤りに関しても、「制限は全くない」もしくは「解除は履行される」と口先だけの対応を続けている。
穀物合意 現状と今後の展開
「ロシア産肥料・小麦、ウクライナ産穀物と同じほど世界に必要」 ラブロフ露外相、合意延長の条件示す

今後の見通しは

これまでにロシアのウラジーミル・プーチン大統領は合意延長について、西側諸国は自らの責務を果たそうとしていないと指摘。ロシアが合意から離脱する可能性について言及した。一方、合意内容が実際に履行されれば協定に復活するとも述べている。
昨年10月末にもロシアは一時的に合意への参加を一時停止している。だが、このときは別の理由があった。ウクライナ軍が英国の支援のもと、黒海艦隊や民間船舶を攻撃したためだ。このテロにはウクライナから出港した穀物輸出船から放たれたドローン(無人機)が使われた。その後、露国防省がウクライナから「海上人道回廊は黒海イニシアチブの履行だけのために使われる」と確約を得たとして、ロシアは合意に復帰した。
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