【視点】世界的なガス備蓄 飛躍、ユートピア、それとも万一に備える保険?

日本はロシア抜きで世界のガス問題を解決する方法を知っているとされる。ガス不足を回避する(そしてまたこの貴重な資源の価格を安定させる)ために必要なのは、世界的なガス備蓄を構築すればいいだけだという。日本の経済産業省は、本日(18日)東京で開かれるLNG産消会議で同案について協議する予定。スプートニク通信は、これをロシア抜きで実現するのはどれほど可能なのか、また概してどれほど現実的なのかについて専門家と議論した。なぜならこの策略は非常に単純だからだ。
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日本が米国の戦略石油備蓄と同様の世界的なガス備蓄の構築を提案しているのは偶然ではない。
しかし、それではなぜ誰もこれについてこれまで考えなかったのだろうか?または、重大な理由があるのに世界のガスハブの案を意図的に拒否しなかったのだろうか?例えば、その米国自体が。
投資企業「Instant Invest」の金融市場・マクロ経済分析担当ディレクターのアレクサンドル・ティモフェエフ氏によると、答えは明白だ。なぜなら世界的なガス備蓄に関する日本の構想は単に実現不可能なものだからだ。

「米国の備蓄は全世界ではなく、まず国内の価格を安定させることを目的としている。したがって、米国には主要な天然ガスの集積地『ヘンリーハブ(Henry Hub)』があり、そこでは実際に余剰が蓄積され、価格を安定させている。ただし、米国の国内市場に限られている。全体として、(ガス価格の変動を避けるのに役立つガス備蓄がすべての国にあるという)日本の考え方は理解できる。そしてそれは実際に機能している。日本にも独自の戦略備蓄があるが、米国とは違って日本はガスを輸入することしかできず、独自のエネルギー資源やその生産能力を持っていない。また米国は輸出国でもあり輸入国でもある。これは本質的な違いだ。したがって、世界的なガス備蓄の構築というグローバルな案の形での日本政府の提案はかなりユートピア的に見える」

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ティモフェエフ氏は、その経済的な理由を挙げている。それは、液化天然ガス(LNG)を購入したい国はたくさんあるが、(主な受益者としての)販売国は現時点で事実上米国1国しかないというものだ。
「米国は自国のLNGでうまい具合に稼ごうとしている。したがって、日本は米国に彼らの利益に反して行動することを提案している。また米国では国内市場と海外市場の価格には相関関係がない。そのため米国人にとっては国内市場では価格が安く、国外市場では価格が高いことが得なのは明らかだ。この構図はロシアでも機能している。海外市場での価格が高ければ高いほど良い。したがって、米国または別の国が自国の経済的利益を損なうような行動を取ろうとするかどうかは非常に疑わしい」
それではなぜ日本はこのような明らかに非現実的な提案をして、このテーマを取り上げたのだろうか?
ティモフェエフ氏は日本政府の動機について、その国内問題の一連の理由から理解できるとの見方を示している。

「世界的なガス備蓄についていかなる決定も下されることがないのは明白だ。一方、日本政府は、ロシアとの対立時に、結束した西側諸国との将来的な議論を期待してこの案を発表した。なぜなら日本は、対ロシア制裁発動前はガス分野におけるロシア政府との協力にかなり満足していたからだ。それはまず、サハリンプロジェクトへの日本企業の参加によるおかげだ。しかし特別軍事作戦が始まると、日本の立場は非常に脆弱になった。それは米国がロシアとのあらゆる経済関係の停止を要求する可能性があるからだ。したがって、世界的なガス備蓄をめぐる日本のイニシアティブは、私には日本政府によるある種の『狡猾な手口』のように思われる。つまり、西側諸国がロシアとの協力において全面的な禁輸措置を導入した場合に備えて、世界のガス価格についてせめてなんらかの身の安全を事前に確保して保険をかけようとしているのだ。そのため、日本がロシア産エネルギー資源からの完全な脱却という避けられない選択に直面した場合、これは日米の一種の取引の始まりとなる。またサハリンプロジェクトへの参加を間接的に維持した日本企業に対する二次的制裁の場合もそうだ」

なお、ティモフェエフ氏は、世界的なガス備蓄に関する日本の案が実際に機能するための前提条件は一切ないとの見方を示している。
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