穀物合意 現状と今後の展開

【視点】テロと武器密売の隠れ蓑 ウクライナに利用された穀物合意

17日に期限を迎えた「穀物合意」で設定されていた海上人道回廊は、これまで度々ウクライナによって、ロシアの軍民インフラに対するテロ攻撃や武器密売に利用されてきた。ロシアの軍事専門家らが、スプートニクに対し語った。
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ロシアは17日、ウクライナ産穀物とロシア産農産物などの輸出を定めた穀物合意について、ロシア側が提示する延長の条件を西側諸国が履行しなかったため効力が停止したと発表した。

軍事目的での利用

ロシア軍退役大佐で軍事専門家のビクトル・リトフキン氏によると、ウクライナは穀物などの輸出のみに使用すると約束していた海上人道回廊を軍事目的で使用していたという。

「武器は民間船で運ばれた。ウクライナ当局か当局に近い者たちが中東やフランスへの武器転売のために、闇市場を積極的に利用していた。フランスでは、実際にウクライナから渡った武器が発見された。それらは元は西側諸国によってウクライナに供給されたものだった。彼らはこれらの兵器の一部を西側諸国へ逆輸入、またはアフリカ、中東に転売したのだ」

ビクトル・リトフキン
軍事専門家
穀物合意 現状と今後の展開
【図説】穀物合意 目的と結果、延長の条件
また、ロシアの独立系軍事シンクタンク「軍事政治ジャーナリズムセンター」のボリス・ロジン氏は、ウクライナの無人機(ドローン)によるクリミア半島への攻撃の一部は安全が保証された海上人道回廊から行われたと指摘する。

「無人機攻撃の一部は穀物回廊が通過する海域から実行された。航行する民間船舶も隠れ蓑として使用された。敵が軍事目的で穀物回廊を使用していることは当初から明らかだった。セバストポリへの攻撃やその他の攻撃で使われた無人機は、この海域から出発するか通過していた」

ボリス・ロジン
軍事政治ジャーナリズムセンター・軍事専門家
17日未明、ロシア本土とクリミア半島を結ぶクリミア大橋に対して、ウクライナの水上ドローン2機によるテロ攻撃があった。露国防省は18日、ウクライナ側がテロ活動の拠点としていたオデッサの船舶修理工場に報復攻撃したと発表した。
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ロシアのオプション

ロシアは西側諸国による露産肥料や農産物の輸出制限解除に関わる協定が履行されれば、直ちに「合意に戻る」としている。それがかなわない場合、黒海での防衛力を高めるために措置をとることになる。
リトフキン氏は考えられるオプションの1つとして、黒海北西海域全体を戦闘地域と宣言することを挙げた。そうなればロシア軍は「1隻たりとも、軍艦だけでなく民間船でもそこへ行くことを許さないだろう」と予測する。
第2のオプションとして、オデッサとニコラエフの港を標的にし、その稼働を停止させる可能性を指摘している。理想的には2都市をウクライナの「バンデライト(バンデラ派の右翼)」政権から解放できれば、クリミア半島や黒海を航行するロシアの船舶の安全を守れるとリトフキン氏は説明した。
一方、専門家らは総じて、穀物合意の停止がロシアの特殊軍事作戦に劇的な変化をもたらすことにはならないと指摘。ロジン氏はドンバス、ザポリージャ方面での激しい戦闘が続くと予測し、「数ケ月以内に黒海北西部で大きな動きが起こる可能性は低い」としている。
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