「日台関係史(1972年の断交後)において、与党の現副総裁がこのような訪問を行ったことは一度もありませんでした。しかも麻生太郎氏は安倍首相時代、外相を務め、また過去には総理大臣だったこともある人物です。つまり、政治家として大きな影響力を持っているのです。
そこで今回の麻生氏の台北訪問は、現在の台湾情勢の下で、「重要な意味」を持つ前例のない出来事だと言えます。すなわち、麻生氏はこれまで日本の政治家たちがより曖昧にしていた日本の政策の方向性を示したというわけです。
特に今、中国は台湾をめぐってますます攻撃的な態度をとっています。中国は大陸と台湾との統一を目指していると宣言し、必要があれば武力を行使する可能性も除外しないとしています」
「2027年に中国の習近平国家主席は4期目就任を迎えます。習近平氏は、それまでに、他の候補者の前で、台湾統一を自身の外交努力の主要な成果として発表しなければならないのでしょう。中国政府にとって、これは今、もっとも重要な問題です。というのも、米国はナンシー・ペロシ氏の台湾訪問以降、台湾に対する支援を強化しているからです。そこで日本も、米中間で台湾をめぐる戦争が起こった場合、日本が参戦せざるを得なくなるという考えにより傾きつつあるのです」
「とりわけ日本政府は、もし台湾が平和的な手段によって中国大陸に統一されたとしても、台湾海峡および台湾とフィリピンを隔てるバシー海峡を中国が管理下に置くことになることに懸念を抱いています。これらの海峡を経由して、中東やその他の国から、およそ90%のエネルギー資源と60%の食糧が日本に運ばれているからです。
日本のさまざまな問題をめぐる状況が、台湾情勢に大きく左右されているのです。もし中国が必要だと見なせば、この地域での日本の『酸素の通路を遮断する』こともあり得るからです。ですから、日本の政治家からは、軍事力の行使を含め、中国抑止の必要性に関する声が高まっているのです。そして日本はこれに向けて積極的に動いており、そのことは、国家安全と防衛戦略に関する最近の文書にも反映されています」