金食い虫の米製兵器
中国がウクライナへのドローン輸出を停止して以降、米国は国内軍需企業を探し回ったが、代わりにウクライナに提供できるものは何もないと悟った。米国の防衛産業が製造するドローンの価格は16000ドル(230万円)からなのに対し、中国製であれば2000ドル(29万円)かそれ以下でも調達可能となっている。
さらに報道によると、米国は一部ドローンをウクライナに供与し、数ケ月にわたってテストしたものの、現在ではそれらを備蓄に戻すことに決めたという。問題の核心はその「優れた性能」がウクライナの厳しい戦場では発揮できなかったことにあると指摘されている。
元米国防総省職員で現在は議会の諮問委員会「国家・国土安全保障に関するEMPタスクフォース」の専門家を務めるデイビッド・T・パイン氏によると、米国の防衛産業は長年にわたり兵器の「質」にこだわってきた。一方で、ロシアや中国は「量」と「機能性」に重点を置いてきたという。
「米ソ冷戦後期、米国はより高価でハイテクな兵器の製造に注力し、幅広い分野でソ連に対する質的優位性の獲得を目指した。一方、ソ連の兵器は米国の質的優位を補っても有り余るほどだった。ロシアは米国の技術に追いついてきたが、『量より質』という冷戦時代のメンタリティが米国には残っている。これが例え製造コストが高くても、よりハイテクな兵器を作り続けている理由だ」
パイン氏はさらに、ロシアは米国より「調達費、製造費、人件費が安い」ことから、コストパフォーマンスの面では秀でていると指摘している。
ロシアは米ドローンにどう対抗するか
ロシアの電子戦システムや対空防衛システム、戦闘機などは北大西洋条約機構(NATO)のドローンに新たな課題を突きつけている。パイン氏はロシアの電子戦能力は「依然として世界最高レベル」と指摘。米国はウクライナとともに対策を講じているが、それでも電子戦での妨害に成功する割合は8割程度に達するという。
一方、電子戦装備で無力化できなかった場合、対ドローンシステムでの撃墜が可能だ。これには歩兵戦闘車「BMP-2」「BMP-3」「BTR-90」などに搭載された対ドローンミサイルシステム「パンツィリS1」が含まれる。
さらにロシアは大型の戦闘・偵察ドローンを迎撃する能力も実証した。3月には黒海で通信機を切ったままの状態の米ドローン「MQ-9(リーパー)」がロシア領空に接近。露戦闘機「Su27」が出撃し、兵器の使用や接触なしに墜落させた。
米空軍が公開した映像では、Su27がリーパーに対し燃料投下を行っている様子が映っており、これによりエンジンが停止し墜落したとみられている。8月初旬にもリーパーが露領空に接近する事案があったが、露軍機が緊急発進すると、すぐにきびすを返している。
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