【視点】ロシアの極東は日本に狙われているのか それとも日本政府はなぜ自ら危険な仕事を引き受けているのか

ロシアのニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記は、アジアに短距離および中距離ミサイルを配備するという米国防総省の計画に日本が参加することは、極東にさらなる安全保障上の脅威をもたらすとの見方を表明した。スプートニクは、こうした懸念はどの程度妥当なのか、またロシアは日本側からの脅威を取り除くためにどんな措置を講じるのかについて専門家たちに話を聞いた。
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アナトリー・コーシキン氏(歴史学博士、東洋大学教授、大阪経済法科大学客員教授)によると、ロシア側のこうした声明は予想できたという。

「その理由は、日本が極めて警戒心を抱かせる軍事化への路線を示しているからだ。これに先立ち、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が日本は軍事大国のメンバーに返り咲きつつあり、米国の核兵器を自国の領土に配備する方向に向かっているという声明をすでに発表している。これは日本政府が以前に表明した核兵器を持たない、つくらない、持ち込ませないという非核三原則に明らかに反することになる。また日本政府は独自の核兵器を保有するという計画を持っている可能性があり、日本は核兵器を製造するためのあらゆる能力を有している。したがって、そのような兵器のサンプルがすでに日本に存在する可能性を排除することはできない。さらに日本政府は、あらゆる約束や合意に反して中国、北朝鮮、ロシアといった近隣諸国を射程に収める米国製の短距離および中距離ミサイルを日本領内に配備する意向だ。ご存知のとおり、この3か国は現在、日本および米国の安全保障に対する脅威とされている。なお、短・中距離ミサイルは通常ミサイルとしても核ミサイルとしても使用できる。したがって、ロシア安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記が表明したロシアの懸念は十分に妥当である。米国には将来の紛争に直接参加する国として日本と韓国が必要なのだ」

アナトリー・コーシキン
歴史学博士、東洋大学教授、大阪経済法科大学客員教授
そのためコーシキン氏は、米キャンプデービッドで最近開催された日米韓首脳会談について、これはアジア太平洋地域における対立が激化の一途をたどるという事実を確認したとの見方を示している。
米国、「露中の脅威」を口実に日本を軍国主義化=パトルシェフ氏
ロシアの軍事専門家で防空部隊博物館の館長を務めるユーリー・クヌートフ氏は、その軍事力に関する外交政策概念を日本はほぼ完全に見直したとの考えを示している。

「日本政府は同国製の武器の輸出を解禁する意向だ。さらに日本は現在、海外での自衛隊の使用制限に疑問を抱いている。またクリル諸島の返還を強く求める声がますます高まっている。特にロシアが現在ウクライナ紛争に関与していることが関係している。したがって米日韓による定期的な軍事演習を考慮すると、アジア太平洋地域の状況は確かに安定とは程遠い。そして中国に対する脅威も、ロシアに対する脅威も存在している。

短距離および中距離ミサイルについては、日本はそれらのミサイルを自国領内に配備できるだけでなく、中国やイスラエル、インドと同等の製造能力も持っている。そのためロシアも短・中距離ミサイルの生産へ回帰する必要がある。ただし従来型のミサイルではなく、地上発射装置を備えた極超音速ミサイル『キンジャール』または『ツィルコン』をベースとした中・短距離極超音速ミサイルだ。これは極東の安全保障の観点から、ロシアが抱える多くの問題を解決するだろう。ロシアはすでに極東に効果的な防空システム『S-300V4』を配備している。S-300V4は、日本が米国と開発しようとしている最も有望なミサイルを迎撃することができる」

ユーリー・クヌートフ
ロシアの軍事専門家、防空部隊博物館の館長
クヌートフ氏はまた、ロシアは攻撃を撃退する防御的な立場をとるだけでなく、敵のミサイル配備場所を攻撃する能力も持つべきだと指摘している。

極超音速ミサイルをベースとした短・中距離ミサイル生産への回帰は現在モスクワにとって必要不可欠なものだ。しかも米国や日本とは異なり、ロシアには『キンジャール』と『ツィルコン』がある。ツィルコンはこれまで水上艦艇から発射されていたが、今や地上のプラットフォームから発射できるようにすればいいだけだ。これは極東におけるロシアの安全保障にとって最もポジティブな解決策となるだろう。なぜならツィルコンは敵のミサイルが発射される前にそれを破壊することができるからだ」

ユーリー・クヌートフ
ロシアの軍事専門家、防空部隊博物館の館長
【視点】キャンプデービッドで開かれた会談 偶然の会合か新たな同盟か?
『ナショナル・ディフェンス』誌のイーゴリ・コロチェンコ編集長は、今の日本は軍事面で急速に近代化していると指摘している。

「これは現首相の岸田氏が選択した外交政策路線と関係しており、日本と米国の緊密な連携、協力関係がみられる。岸田氏はリトアニアの首都ヴィリニュスで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議にも参加した。また米政府は現在、そこで日本が重要な役割を果たす東方NATOという形で西側の軍事同盟の原型をつくろうとしている。もちろん米国は、ロシアと中国に対する日本の軍事力を考慮してこれを行っている」

イーゴリ・コロチェンコ
『ナショナル・ディフェンス』誌編集長
コロチェンコ氏は、日本領内に短・中距離ミサイルシステムを配備する計画について、実現される可能性が高いとの見方を示している。
「このシナリオはただあり得るだけではなく、おそらく実現されるだろう。そしてこれはロシアと中国に向けたミサイルシステムが日本列島に配備されることを意味する。しかしそれは北朝鮮の脅威への備えや、中国の軍事力に対抗するという『偽りの口実』の下で行われるだろう。したがって日本は事実上、米国の現実的な空母となりつつあり、もちろんロシアにとっても脅威となる。また日本の自衛隊は、ずいぶん前からすでに本格的な軍隊だ。さらに国のドクトリンのレベルにおいて日本は現在、第二次世界大戦後に日本政府が自主的に承認した制限を放棄しつつある。したがって日本がインド太平洋地域で主要な軍事大国に様変わりすることは、すでに事実である」
イーゴリ・コロチェンコ
『ナショナル・ディフェンス』誌編集長
この傾向はロシアにとって全くもって好ましいものではない。また日本が南クリル諸島(北方四島)の領有権を主張していることも忘れてはならない。
【視点】ドミノ効果はインド太平洋地域での核軍拡競争を誘因
したがってコロチェンコ氏は、これもロシア政府が現在の状況を真剣に分析する要因の1つだと指摘している。

「まず、日本の新たな軍事力の観点からその対抗策を考えてみると、それはいくつかある。1つ目は、太平洋艦隊の強化と再装備だ。そこには核・非核のしかるべき攻撃システムを備えた特定の目的のための原子力潜水艦やディーゼル潜水艦といった本格的な水中コンポーネントの製造が含まれる。またロシア国境の防衛拠点としてのクリル諸島の本格的な整備も考えられる。その他、ロシアは中国と協力して日米の積極的な軍事活動を封じ込めるだろう」

イーゴリ・コロチェンコ
『ナショナル・ディフェンス』誌編集長
この目的のためにロシアと中国は同地域で航空機による合同パトロールをすでに実施している。ロシア航空宇宙軍の戦略爆撃機と中国空軍の爆撃機が合同パトロールを行っている。
「したがって露中の合同演習が規模を拡大、強化されることは明らかであり、収集したデータの連携も必要だ。そこにはアジア太平洋地域の情勢の展開予測も含まれる」
イーゴリ・コロチェンコ
『ナショナル・ディフェンス』誌編集長
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