資産水増しの疑い
この訴訟は米ニューヨーク州検察のレティチア・ジェームス検事長が2022年9月に提訴したもの。トランプ氏のほか、長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏、次男エリック氏と長女のイバンカ氏も会社の経営に関わっていたとして訴えられた。
原告の検察側は、トランプ元大統領が所有する会社「トランプ・オーガナイゼーション」が、より有利な貸付金や保険契約を得るために不動産の価値を故意に歪曲し、収支報告に関する法律に違反したと主張している。この結果、トランプ一家と会社の資産は22億3000万ドル(3325億円)から36億ドル(5365億円)に水増しされたとしている。これには有名なトランプタワー(ニューヨーク州)やマー・ア・ラゴ(フロリダ州)の邸宅も入っている。
事実上の敗訴
ロイター通信などによると、被告のトランプ氏側は、資産価値は様々な理由で時間とともに変化するもので、疑いに根拠はないと主張。検察側の訴えを退けるよう求めた。
だが、裁判所は検察側の訴えを認め、トランプ氏の法的責任を認める考えを示した。また、トランプ氏の保有する企業がニューヨーク州でビジネスを行うための許可を取り消し、企業解散に向けた管財人を指定するよう命じた。
決定を受け、10月2日から訴訟の公判が始まり、判決は12月に下るとみられている。トランプ氏は事実上の敗訴がすでに決まっており、審理での主な焦点は賠償金額になるという。
トランプ氏はSNS上で声明を発表し、「これは魔女狩りで、とても不公平だ。こんなのは米国ではない」などと主張した。トランプ氏側は裁判所の決定を不服として異議申し立てを行う予定。
大統領選への影響は
一方、これはあくまで民事訴訟で、今年春以降に一連の起訴があった4件の刑事訴訟との直接の関連はない。最終的な判決でトランプ氏の敗訴が確定しても、禁錮刑や公民権の停止などの刑罰は課されない。
刑事事件のほうでトランプ氏は、これまでに4回計91件の罪状で起訴されている。内訳は元ポルノ女優への口止め料支払いなどをめぐる事件で34件、機密文書保管をめぐる事件で40件、米議会占拠事件をめぐる事件で4件、2020年大統領選の結果を覆そうとジョージア州幹部に圧力をかけたとされる事件で13件となっている。
仮にすべての罪で最大の量刑を課せられれば、その刑期は700年以上に達するともいわれている。一方でCNNによると、トランプ氏が有罪判決を受ければ大統領選への投票はできなくなる。だが憲法上、有罪判決を受けても大統領選への立候補は可能で、当選すれば自ら恩赦を出したり、司法省に圧力をかけるという選択肢もある。
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