【視点】カナダはナチス戦犯を裁くことができない=ナチ・ハンター

膨大な数の民間人の血にその手を染めたナチス親衛隊(SS)「ガリツィア(ガリーツィエン)」に所属していたウクライナの退役軍人ヤロスラフ・フンカ(98)が、カナダ議会でスタンディングオベーションを受けた。その行事には、カナダのトルドー首相とウクライナのゼレンスキー大統領が出席していた。この出来事は世界中で激しく批判され、カナダのアンソニー・ロタ下院議長は議会でナチス犯罪者の称賛を主導したとして謝罪に追い込まれた。
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ナチス戦犯を追跡する「ナチ・ハンター」で、サイモン・ヴィーゼンタール・センターのエルサレム支部を率いるイスラエルの歴史家、エフライム・ズロフ氏は、スプートニクのインタビューに応じ、なぜカナダという現代の西側国家で恥ずべきナチスに敬意が払われたのかについて説明した。
「ホロコーストの犯罪を犯し、ナチスに協力した何百人、あるいは何千人もの人々がカナダに移住できたことは周知の事実だ。そしてカナダだけではない。少なくとも1万人のナチス戦犯が米国に逃れ、さらに何千人もの人々がオーストラリア、英国、ニュージーランドで隠れ家を見つけた」
有名な「ナチ・ハンター」のズロフ氏によると、ウクライナの協力者、フンカが所属していた武装親衛隊の師団「ガリツィア」は、ポーランド東部とガリツィアでユダヤ人やポーランド人の虐殺に積極的に関与し、特に民間人に対して残虐な行為を行ったという。
「第二次世界大戦中にウクライナ民族主義者たちを率いてナチス・ドイツに積極的に協力したステパーン・バンデーラとロマン・シュヘヴィチが、今日、ウクライナの英雄になったのは非常に悲しいことだ」
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ズロフ氏は、ナチス共犯者たちの犯罪が見過ごされている理由について説明した。同氏によると、西側諸国で暮らしている人たちは、ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺で地元の協力者たちがどれほど恐ろしい役割を果たしたかを完全には理解していない。ナチス親衛隊の懲罰部隊は、エストニア北部のタリンから黒海近くのオデッサまでの地域でユダヤ人問題を「解決」したという。

「これらナチスの共犯者たちは、2年足らずで150万人を殺害した。それらは主にユダヤ人だった。リトアニアだけでも、地元の協力者たちがそこで暮らしていたユダヤ人22万人のうち21万2000人を殺害した。なお、そのうちの90%は自宅で射殺された」

ズロフ氏は、特に恐ろしいのは、ナチス占領下にあったウクライナ・ソビエト社会主義共和国の領土でドイツに協力し、ユダヤ人とその他の少数民族の大量虐殺に関与したバンデーラとシュヘヴィチが、現在ウクライナで英雄化されていることだと強調した。ズロフ氏は、1941年7月にシュヘヴィチが指揮するナハチガル大隊がヴィーンヌィツャ近郊で最大3万5000人を射殺し、同年9月にはナハチガル大隊のウクライナの民族主義者らが、キエフにあるバビ・ヤールで約3万4000人のユダヤ人を処刑したことに言及した。同氏は、赤軍が到着するまでに、ウクライナのナチス共犯者たちはヴォリーニとガリツィアでポーランド人の大規模な民族浄化を実施し、その結果、女性、子ども、お年寄りを含む少なくとも8万8700人が殺害されたと語った。
ズロフ氏は、なぜカナダは同国に逃亡したナチスの殺人者たちを裁かないのかという質問に対し、カナダに住むナチス政権の犯罪容疑者250人の名前を記載したリストをカナダ政府に個人的に提供したものの、公正な処罰は行われなかったと答えた。同氏によると、カナダの裁判所は、刑法において実行行為の犯罪性を排除する状況の一つである「命令の実行」を引き合いにして、戦犯の嫌疑を晴らす万能な方法を発見したという。
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ズロフ氏は、英国とオーストラリアではナチス戦犯を裁判にかけることができず、ユダヤ系ウクライナ人のゼレンスキー大統領はナチス戦犯の崇拝を支持していると不満を述べた。

「国家は自分たちに都合の良いストーリーを望んでおり、自分たちのストーリーが実際はあまり幸福なものではなかったり、あるいは、あまり良いものではなかった場合には、別のストーリーを作り上げる。これがまさに今日ウクライナで起こっていることだ。彼らが国民的英雄に祭り上げている人々は大量殺人者だが、ナチスの共犯者らがユダヤ人を殺害し、ポーランド人を殺したことを誰も気にしていない」

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