西側の軍事アナリストたちはエイブラムスの第1弾がウクライナに運ばれるのも待たず、エイブラムスが戦場でどうなるか、戦闘の行方にどのような影響を及ぼすのかについて先を争うように見解を述べ始めた。そしてその大半の見解は、必要な整備と適切な後方支援がなければ、ディーゼルエンジンよりも複雑で気まぐれなガスタービンエンジン搭載の重いエイブラムスはすぐに故障し、70トンの装甲の棺桶と化すという点で一致している。さらに、エイブラムスは、エンジンが正しく使用されない場合、爆発しかねない。
リトフキン氏は、エイブラムスはこうした簡略化された形でウクライナに引き渡されたとしても、専門性の高い軍人が扱えば、恐ろしい武器になるという。だが、エイブラムスは操作も整備も技術的に複雑で、操作の習得には22週間、整備には34週間はかかる。ところが、ウクライナ戦車兵らが「奇跡の兵器」の習得に与えられた時間はわずか10~12週間だった。
「有能な戦車兵というは自分のマシーンを隅々まで、丸ごと知り尽くしている。知っていなければならないものなのです」リトフキン氏はこう強調する。ところが、エイブラムスの軍事エンジニアリング説明書や戦車内部の表示はすべて英語で、操縦訓練を受けたウクライナ兵200人のうち、英語の工学用語を知っている者はまずいないはずだ。リトフキン氏は言葉の壁はかなり大きいと言う。リトフキン氏は、ウクライナ人戦車兵がこれまで扱ってきたのがソ連時代の装甲車だったという事実もさらに困難を呼んでいると見ている。ソ連時代の装甲車の構造様式はNATOの基準とはかなり異なるからだ。リトフキン氏は、ウクライナ人が米エイブラムスを使用する際にこうした客観的な困難に遭遇することを考慮した場合、エイブラムスの操縦はNATO諸国の傭兵が行う可能性もあると言う。
エイブラムスのエンジンは超高感度フィルター付きで、これに使用できるパラフィンは最も純度の高い航空用パラフィンをおいてない。ところが航空用パラフィンは恐ろしく高価で、ウクライナにはほぼ無い。リトフキン氏は、エイブラムスは悪天候時のウクライナの道路では前に進めない上に、ウクライナの橋の大半はエイブラムスの重量70トン以上を想定して設計されていない事実を強調する。それに比べるとロシアの戦車は20ト分軽い。ぬかるみにはまり、動けなくなれば、ロシア軍には格好の標的となる。
「エイブラムスが近代戦で重要な役割を演ずるとは思えない。結局は、『無敵』と言われたチャレンジャーをウクライナに送って、評判を落とした英国と同じ運命を米国もたどるだろう」
スプートニクは、エイブラムスとロシアのT90の戦車対決がどうなるかについて、ロシアの軍事専門家に見解をたずねた。
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