対立が高じて、今や右翼過激派がウクライナ内務大臣の辞任を求めて無期限抗議行動を開始した。21日、彼らはキエフ中心部で集会を開いた。そこで「右派セクター」のドミートリイ・ヤロシュ代表は、「革命の新段階」と、政府不支持をめぐる住民投票に向けた準備を行うことを宣言した。
丹精込めて育て上げたウクライナの「民主」政権の崩壊を前にして多くの西側政治家たちは緊張の面持ちだ。ウクライナメディアは、「右派セクター」は間もなくウクライナに新たなマイダンを始める、と報じている。しかしウクライナにクーデターが起こる可能性はあるだろうか。また、政府が右翼過激派に大規模譲歩をする可能性はあるか。そして、「右派セクター」の「反乱」の背後に、ウクライナ国境の一部を支配しようとする希求以外の何があるのだろうか。
ウクライナ西部の緊張は非常に高まり、米国のウクライナ大使ジェフリー・パイエット氏が現地を訪問するまでになった。しかし、本当にそこで事態が深刻なら、米国大使に何が出来るというのか。抗争は局地的なものであり、ウクライナ政府、一義的には警察の問題なのだ。米国大使の紛争への直接介入は、明らかにやり過ぎだ。
私の見方では、大使は自らのプレゼンスによってウクライナ西部に名誉をほどこし、「右派セクター」の発言に重みをもたせようとしているのだ。何しろ彼らとウクライナ大統領およびウクライナの腐敗した役人および貪欲なオリガルヒこそ、ウクライナ大衆を愚弄するために、ワシントンは当てにしているのだ。架空のニンジンをぶら下げることで民衆の手綱を握るためには、ポロシェンコ大統領が必要なのである。「ポロシェンコ大統領は合法的に選挙された大統領である」というわけだ。「右派セクター」は鞭という役割だ。民衆のあいだに恐怖をあおり、暴力によって様々な形態の「分離主義者」を防止するための鞭なのだ。そして役人とオリガルヒについては、これは避雷針である。民衆に、やれ「汚職との戦い」だ、やれ「効果的な人事政策」だ、やれ「垂直統治の強化」だとデモンストレーションし、絶えず変化し続ける状況の中で目先を変えさせるための避雷針なのだ。
クリミアのロシア編入とドンバス蜂起でこの米国の戦術は破綻した。というのも、ウクライナ南東部の親ロ分離主義者のほかに、ウクライナでは、地域分離主義が満開に開花したのである。そして大衆を「全国が選挙した」大統領のまわりに結束させるためには、何らかの超効果的なものを考え出さなければならなかった。そこで悪名高い「ロシアの脅威」が持ち出された。
まる1年というもの、「血に飢えた分離主義者」および「ロシアからの侵略者」に対する脅威の煽り立ては、ほぼ完全に機能した。しかし不運であった。EUはウクライナ戦争の激化を望んでおらず、ロシアはキエフ政権との抗争に参加しようとしない。中でも重要なのは、キエフが、自分たちのはじめたこのドンバス戦争は、たとえNATOの支援があっても、勝利することは出来ない、と理解しはじめていることだ。だから、ウクライナを経済的な破綻から防ぐために、戦争ではなく、垂直統治を強化することに集中する必要があるのだ。
米国のコンサルタントたちによる「革命を前に進める」努力をポロシェンコ大統領がますますサボタージュするようになった今の状況で、ワシントンはどうするべきか?彼をよりよくコントロールする方法として最も簡単なのは、新たな脅威をつくることだ。それが今回は、「制御不能な」「右派セクター」というわけだ。キエフで集会が行われ、ウクライナ大統領が脅迫されていることの理由は、こういうことなのだ。
ポロシェンコ大統領の支持率がさがり、民衆が怒りをつのらせている今、国務省はどうするべきか?一番簡単な方法は、民衆をこわがらせることだ。しかし民衆はもはやロシアをこわがることをやめてしまった。では新たな脅威が必要だ。そういうわけで「右派セクター」が、その部隊をキエフに送り込もうと画策している様子をデモンストレーションしているのである。しかし「右派セクター」は、米国の特務機関の子供である。国務省によって維持されている組織なのである。それはすなわち、国務省の完全な管理下にあることを意味する。私は、「右派セクター」が米国大使からポロシェンコ大統領放逐命令を出されることは、これまでもなかったし、ウクライナ債務不履行直前までないだろうと確信している。
© Sputnik / Vitaly Podvitskiやはり手を嚙んだウクライナの「飼いワニ」
やはり手を嚙んだウクライナの「飼いワニ」
© Sputnik / Vitaly Podvitski