宇宙の軍事化は、冷戦時代からこれまでの間に大きな進展を遂げた。偵察衛星や通信及びナビゲーション衛星は、信じられないくらい増えたし、それらを製造し打上げるコストも下がった。GPSやグロノスといった衛星測位システムが確立した事で、爆弾やミサイル、砲弾は、安価になって大型化し高い精度を持つようになった。最も単純で安上がりの戦術無人機を除けば、通信衛星なくして、無人機を用いる事など事実上不可能である。宇宙の軍事化は、偵察衛星の開発から始まったが、今やそれは主役の座を降りて、様々な方向性のうちの一つに過ぎなくなっている。
衛星を破壊するための兵器は、すでに冷戦期に、ソ連と米国によって作りだされている。しかしそうしたシステムは、かなりの数、大量に生産されるといったことはなかった。当時、宇宙空間における軍事力は、それほど重要ではなかったからだ。一方、戦略的安定にとって対人工衛星兵器の展開から生じるリスクは、非常に大きなものだった。というのは対衛星兵器の使用あるいは、その大規模な実験でさえ、それは、核ミサイル攻撃の初期段階と容易に受け止められる可能性があったからだ。
その結果、主要な軍事大国であるロシア、中国そして米国は、人工衛星に対抗するための手段作りに積極的に取り組んでおり、間もなくそれに新たな国々が加わってくる可能性が極めて高い。中国は特に、そうした兵器システムに大きな注意を向けており、高度静止軌道上で人口衛星を破壊する事の出来るシステムを最初に保有する国になりそうだ。
中国軍は、米国は、人工衛星を広く用いて作られた自分達の通信・偵察・管理システムに極めて大きく依存していると見ており、サイバーアタックや無線電子妨害、そして宇宙に配備されているものも含めた、情報手段への攻撃などによって、米国の情報インフラの攪乱を目指している。
ロシアそして米国自体でも、軍は、同じ方向で動いている。米国は、宇宙に武器兵器を配備するための技術を発展させてゆく中で、他の国々に先んじたが、彼らは、ロシア及び中国において地上に基地を置く対人工衛星攻撃システムが発展しつつあることに危惧の念を抱いている。
状況は、今後10年間でさらに複雑化するかもしれない。ロシア、米国、中国に続いて、インドやイラン、イスラエル、北朝鮮、さらには恐らくブラジルやパキスタンも、宇宙での競争に参加すると見られるからだ。こうした国々は、活発な宇宙開発及びロケット打ち上げプログラムを持っている。いくつかの国は、そうしたものの軍事利用は、困難な軍事的政治的状況にプラスをもたらす基本的な要素であると捉えている。すでにいくつかのタイプの運搬用ミサイルや人工衛星を製造したイランの成功は、この国の潜在力が決して無視できないことを物語っている。