確かに内閣支持率は目だって落ちたが、それでも受け入れ可能なレベルであり、民主党政権の2年目のときよりはずっと高い。これには日本人が首相が常に入れ替わるのに疲れたこと、政治的な安定が必要とされていることも影響していると思う。
このため、安倍氏が退陣すれば内閣支持率は一層落ちただろうことを考慮せねばならない。しかも自民党内には安倍氏に対抗できる強いライバルはいない。それは派閥政策がほとんどゼロに帰したからだ。派閥は複数の政治家らの周りにクラブのようなかたちで出来たが、それは自民党の人事には影響を及ぼさないのだ。
安倍氏は党内の人間とは相談せずに自分ひとりで多くの決断を行っている。これはもちろん不満を呼んでいるが、見方を変えると、代替がなく、自民党内に強いリーダーがいないことから党は安倍氏の周りに集まるようになったという印象を受ける。自民党内では自民党政権が強固なので、安倍氏と安倍内閣の人気が高いと考えられている。だが安倍氏にとってこれは最後の任期であり、その後、自分の後継者を探さねばならないことから、政権争いは新たに燃え上がるはずだ。このときに経済政策の失敗が随伴すれば、日本は大きな政変を迎えることになる。」
Q:自民党政権の安定に脅威となっている最も複雑な経済問題は何か?
第2の問題は、国内の消費需要。日本は依然として国外の需要に焦点をあてており、ここではどうしようもない。構造改革の問題もある。これはアベノミクスの3番目の矢で、民間への国家予算からの財政支援を減らす目的で行われているものだ。さらに、国の財政の健全化という問題もある。つまり国の赤字を減らし、資金を節約することだが、この面で安倍氏はあまり成功していない。」
Q:安倍首相の防衛政策は自民党内閣の立場にどう影響するか?
「 この影響は二重の矛盾したものとなる。一方で日本社会にはやはり、平和主義的な感覚が優越している。日本人は米国の国益のために死にたいとは思っていない。ここにこそ、日本社会の中で安倍氏に反対する気運はまさにここから強く湧いている。
だが、客観的傾向もある。これは日本が国際舞台に政治大国としてだけでなく、軍事大国としても出て行くため、米国の弱体化、中国の強国化のなかで自国の防衛により大きな関心を向けざるを得ないという状況をさす。
ここでは安倍内閣の防衛政策が質的に前進するにも避けられないし、私が思うに、日本社会の一部はこれを理解してもいる。これを物語るのが、反対運動がこれだけ高いレベルで展開しているにもかかわらず、安倍内閣は全体としては立場も支持率もキープしている事実だ。防衛政策の観点からは安倍氏を脅かす要素は少ない。客観的プロセスがある。自民党が政権につこうが、他の政党がつこうが、連立になろうが、日本全体のベクトルは変わらないだろうからだ。」
Q:中国との対立深化が安倍氏の支持率に打撃となる可能性はあるか?
A:「 私なら、中国の反応はあまり気にしない。世論向けのプロパガンダ的なものもあるからだ。中国は常に、軍国主義が復興しているとして日本を批判しているが、こうした批判は日本が比較的平和主義的政策を採っていた時代にもあったことだ。ここにはイデオロギー的モチーフがある。だが、本質的な方面をとると、全体の傾向としては中国は強国化にむかっており、日本と中国の格差は縮まりつつある。だが今のところ日本は自衛隊の技術的装備で勝っており、こうした状況は当分続くだろう。だが中国自身はこれに冷静な姿勢を示している。」