これについて戦略技術分析センターの専門家、ヴァシーリィ・カーシン氏は、憤慨や驚きには値しないとし、その理由として南クリル諸島では法に違反したことも、非常事態や扇動も行われていないとして、次のように語っている。
それでも南クリル諸島は係争領域であり、確固とした防衛がなされねばならない。というわけで、ロシアにようやくリソースが現れると、こうした長年置き去りにされてきた問題が着手されるようになってきた。クリル諸島の部隊は再軍備され、施設と設備が手入れされ、特別な建設が行われるなどされている。もし、ソ連崩壊後の経済が正常に運んでいたら、すべては徐々に進んだだろうが、そうはいかなかったため、2008年から2009年代までの間はロシアの防衛にとっては事実上何も行われなかったに等しかった。だが今、国に資金が現れ、南クリル諸島になんらかの大きな軍事活動が必要とされる幻想が生まれた。実際はこれは最小限度の行為で、目的はクリル諸島の軍事ポテンシャルが完全に退化するのを食い止め、軍に通常レベルのサービスを保障することだ。 しかも、旧弊したソ連の兵器を交換する時も可能性も到来した。こうしたプロセスは南クリル諸島だけではなく、ロシア軍全体で起きていることだ。」
Q:ロシアの防衛能力にとって南クリルの持つ意味はどれほど大きいか?
Q:最悪のシナリオを想定すると、戦闘行為、武力で南クリル諸島を強奪しようということになるか?
「南クリル諸島に配備されているロシア軍は、これら諸島は何らかの突然の攻撃や特殊作戦またはピンポイント攻撃などで強奪することは不可能ということを保証している。
諸島にいるおびただしい数の近代的武器を装備したロシア軍部隊を解体するには巨大な軍事作戦、軍力が必要であり、その間にロシア側は結集し、報復が行えてしまう。しかもロシアは核大国であり、何らかの状況になれば、自国の領土保全のために核を使うことは幾度も口にしてきた。だがこれは南クリル強奪作戦のリスクを激しく引き上げるものだ。この島への攻撃はロシアとの全面戦争を意味する。私は日本といえども米国といえどもこんな道は選ばないと思う。」
「そうだ。だが日本側は、私の判断では強奪など考えてもいないと思う。このため南クリルにおけるロシア軍の兵員増強は極めて実現性の低いカタストロフィー的状況のシナリオが起きた場合に保険をかける手段といえる。しかもこの保険は日本人に向けたものというよりは米国に向けたものだ。米国人は時に思いもかけない行動に出て、ロシアのこうした場所や他の弱い場所を噛み付こうとするからだ。一言でいえば係争地域はしかるべく守られていなければならないということだ。」