ロシアと日本 鋭く緊迫した問題も避けずに問題解決模索の道を

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岸田外相の「思いがけない」モスクワ訪問が、ロ日関係にここ最近出来上がっていた否定的は傾向を打ち破る事を、その目的としたものであったことは明らかである。両国関係は、ずっと以前から続く南クリルの領有をめぐるロ日間の争いにより複雑なものとなっていたが、最近日本が西側の対ロシア制裁に加わった事で、状況はさらに悪くなった。

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冒頭で、今回の岸田外相の訪問を「思いがけない」ものと言ったのは、外相のモスクワ訪問をめぐる駆け引きが、ここ何週間も続いていたからだ。これは8月の、メドヴェージェフ首相に始まるロシアの閣僚達の南クリル(日本で言う北方領土)への訪問に関係している。当時ロ日双方は、南クリルの領有問題をめぐり厳しい態度を示し、強硬な発言を互いに浴びせた。岸田外相は、アファナーシェフ駐日大使を呼び、メドヴェージェフ首相の訪問に深い遺憾の意を表し「日本人の気持ちを傷つけた」と抗議した。そうした背景から、岸田外相のモスクワ訪問は、無期限延期になったと思われていたのだった。しかし日本側は、それでもやはり、決定を下した。モスクワでの記者会見で、岸田外相は「今回の訪問が、プーチン大統領の日本訪問につながるものとなるよう期待している」と述べた。

記者会見での、外相の発言を御紹介する―

「ラヴロフ外相とは有意義な意見交換をする事が出来たと、満足している。私からは領土問題を取り上げ、その中で昨今の北方四島をめぐるロシア側の一方的な言動についても、日本の立場を明確に伝えた。その上で、プーチン大統領の訪日に向け、2013年4月の安倍総理訪ロの際に、日ロ両首脳が出した共同声明に基づいて、双方に受け入れ可能な解決策を作成する議論を行ってゆく必要があるという話をし、そして本日の外相間での議論をフォローアップする形で、10月8日に次官級の平和条約締結交渉を杉山外務審議官と、モルグロフ外務次官との間で実施する事で一致した。

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ラヴロフ外相「日米の防衛協力は「核」の相貌を示し始めている」
今回の私の訪ロにより、事実上、中断していた平和条約締結交渉を再開した。また今後の政治対話として、国際会議等の機会を積極的に活用し、首脳・外相間の直接対話を継続してゆくとの方針を確認した。なおラヴロフ外相を日本に招待した。今回の訪問は、日ロ関係を一歩前に進める上で、有意義なものになったと感じている。」

ここで今回の岸田外相のモスクワ訪問について、ロシア最高経済学院の日本専門家、アンドレイ・フェスュン氏の意見を御紹介したい。

フェシュン氏は、次のように指摘している―

「南クリルは、我々にとっては、まず経済的観点から重要なのだが、日本にとっては、何と言っても政治面が大切だ。まず第一に、極めて経済的な面について言えば、小クリル列島を含めた島々の一つを領有すれば、200海里の排他的経済水域は拡大する。非常に広い豊かな海域で、そこには魚たちの巨大な産卵場があるばかりでなく、希少金属のレニウムも眠っており、それを露天掘りで採掘できる可能性がある。

また軍事的な面で言えば、もし日本に島を渡した場合、米国の潜水艦にクリル列島への道を開き、彼らはオホーツク海に自由に入れるようになってしまう。

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ラヴロフ外相と岸田外相の記者会見(動画)
最後に政治的な面では、日本に島を渡してしまえば、我々の立場が正しくない事を認めることになる。しかし、これは正しくない。我々は、第二次世界大戦の結果、クリルと南サハリンを取り戻した。日本は、大まかに言ってしまえば、第二次世界大戦で自分達が侵略者であったことに対する罰を受けたのだ。日本は、ヤルタ会議そしてポツダム合意とサンフランシスコ平和条約の決定によってクリルの島々と、サハリン南部を失ってしまったのである。

モスクワでのロ日外相会談を総括した記者会見で、ラヴロフ外相は「平和条約問題をめぐるロシアと日本の間の隔たりは大きい」としながらも「双方は、相互関係における鋭く緊張した諸問題を避ける事はない。我々は相互に受け入れ可能な解決の道を探って行くつもりだ」と強調した。

模索の道が、どんな方向で進み、どれほど長くかかるかは、二国間関係の全体的空気と、それぞれの側が持つ歩み寄りの心積もり次第だろう。

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