記者会見での、外相の発言を御紹介する―
「ラヴロフ外相とは有意義な意見交換をする事が出来たと、満足している。私からは領土問題を取り上げ、その中で昨今の北方四島をめぐるロシア側の一方的な言動についても、日本の立場を明確に伝えた。その上で、プーチン大統領の訪日に向け、2013年4月の安倍総理訪ロの際に、日ロ両首脳が出した共同声明に基づいて、双方に受け入れ可能な解決策を作成する議論を行ってゆく必要があるという話をし、そして本日の外相間での議論をフォローアップする形で、10月8日に次官級の平和条約締結交渉を杉山外務審議官と、モルグロフ外務次官との間で実施する事で一致した。
ここで今回の岸田外相のモスクワ訪問について、ロシア最高経済学院の日本専門家、アンドレイ・フェスュン氏の意見を御紹介したい。
フェシュン氏は、次のように指摘している―
「南クリルは、我々にとっては、まず経済的観点から重要なのだが、日本にとっては、何と言っても政治面が大切だ。まず第一に、極めて経済的な面について言えば、小クリル列島を含めた島々の一つを領有すれば、200海里の排他的経済水域は拡大する。非常に広い豊かな海域で、そこには魚たちの巨大な産卵場があるばかりでなく、希少金属のレニウムも眠っており、それを露天掘りで採掘できる可能性がある。
また軍事的な面で言えば、もし日本に島を渡した場合、米国の潜水艦にクリル列島への道を開き、彼らはオホーツク海に自由に入れるようになってしまう。
モスクワでのロ日外相会談を総括した記者会見で、ラヴロフ外相は「平和条約問題をめぐるロシアと日本の間の隔たりは大きい」としながらも「双方は、相互関係における鋭く緊張した諸問題を避ける事はない。我々は相互に受け入れ可能な解決の道を探って行くつもりだ」と強調した。
模索の道が、どんな方向で進み、どれほど長くかかるかは、二国間関係の全体的空気と、それぞれの側が持つ歩み寄りの心積もり次第だろう。