それでも日本の農産者らは関税撤廃で市場に安価な輸入農産物が押し寄せれば、日本の農産品には価格競争で勝ち目はないと懸念を示している。農産者には懸念を抱く根拠がある。なぜならば日本政権は農産品への関税を維持すると約束したにも関わらず、結果的には2328品目のうちその81%にあたる1885品目の関税が撤廃されることになったからだ。工業製品では関税が撤廃されるのは6642品目となる。
「ルールを決めてもそれを実行していく上で細かいところは決めてないですし、何年後までに何々という数値目標のようなものも、段階もはっきり決めてないですから、運用しながら細かく微調整をしていくことになると思いますね。これは日本の政府がよくやることですが、例えば今回のTPPで日本の米農家ですとか、酪農家とか、フルーツなどを作っている農家とかが影響を受けるのは当然なんですけれども、そういう農家が影響を受けたときに、日本政府はこれまでやってきたことから考えると、おそらくそこでなんらかの補填的措置を採るわけですね。
たとえば具体的に言えば米農家が今回のTPPで何か損害を蒙るようなことがあれば、その米農家に対する補助金を上げるとか、そういう国内政策で対応していくことがこれまでの日本政府のやり方ですので、TPPという合意そのものが出来たから後は全部ほったらかしということにはならないと思います。TPPの微調整と、それから国内の影響を受ける業界といいますか、団体に関する補助金政策などによる保障、補填を行っていくと思います。
このことによって例えば日本の農業とか、場合によっては保険業界、医療とかも影響を受けると思うんですけど、それが具体的にどのようになっていくかは分からないと思うんです。特に現在アベノミクスの成果もわからないなかで、これから円高になるか、円安になるか…。円高になれば輸出、輸入でまたぜんぜん違う影響がでてきますから、その変化とTPPの影響というのは来年でさえ、おそらく分からないと思います。これが日本経済の中でどういう影響をもたらすかというのは分かりにくいですね。特に誰が得をして、誰が損をするかも分からない状態だと思います。
文章はわかりますけど、行うことがあまりにも大きいので…。例えば以前であればこれがオレンジだけの交渉とか、牛肉だけの交渉とか、そういう個別の交渉だったわけですよね。けれどもTPPというのはかなり包括的な、あらゆるものをいっぺんに決めるということなので、影響力があまりに大きくて、個々のことが想像しにくいということです。」
「国と国の間ではかなりの意見の食い違いがあった。というのも取引上のバリアを撤廃するのはいつも万人に利益があるとは全く限らないからだ。米国の中でさえ批判は存在する。米国の自動車メーカーからはすでに声明が表された。米国は日本の自動車に国内市場を開かざるをえないだろう。そうなれば米国のメーカーには利益はない。
ノーベル経済賞受賞者のジョセフ・ユ-ジン・スティグリッツ氏は、TPPは大企業を強化するだろうが、中小は苦しむことになるとの見方を示している。他のエコノミストらは、経済が発展している国にはTPPは有利に働くが、発展度の低い国には損だと指摘している。もちろん万人の視線は中国に注がれている。中国が参加していないということは、TPPは反中国的な方向性を持っているからだ。」
安倍首相は、TPPに中国が参加すれば戦略的な意味を持つとの見方を示している。安倍首相自身は日本政府内でTPPの準備、締結問題の本部を自ら率いる構えを表している。安倍氏はこの合意に弾みをつけるため、特に農業関連ロビーなど自国内の大きな政治勢力との対立を余儀なくされた。安倍氏はTPPを、麻痺した日本経済を加速させるため、必要不可欠な構造改革を行う可能性だと触れ回った。すなわち、TPPからの効果は安倍首相にとっては決定的な意味を持つものとなるはずなわけだ。だが、日本の農民にとてどういった効果が発揮されるかは依然として疑問のままだ。