調査が行われたのは、日本海、オホーツク海、ベーリング海、そして太平洋の北西部にあるロシアの排他的経済水域の漁場だ。2015年だけでも極東水域の漁場では、ロシアの太平洋漁業海洋学科学調査研究所(TINRO)の船7隻が、放射線状況を監視し、大気、水、魚の放射線測定が6500回以上行われた。
極東水域と太平洋北西部で様々な種類の魚の放射性物質の調査が行われた結果、セシウム137とストロンチウム90の含有量は、許容レベルよりも低く、人間の健康にとって危険ではないことが示された。
「移動せず常に一つの場所に生息している魚をとって分析しても意味はありません。しかし日本の岸からロシアの岸まで常に移動しているサンマやサケ、ニシンなどの回遊する魚は監視する必要があります。なぜなら魚は海のきれいさのバロメーターだからです。そのため、モニタリングの実施は必ず必要だと思います。フクシマの周辺もチェルノブイリと同じようにまだ立ち入り禁止区域が設定されています。原発の廃炉問題があるうちは、海洋の動植物のモニタリングを世界中の海洋で続ける必要があります。特にもちろん、日本の水域と我々の極東水域の周辺で実施する必要があるでしょう。実のところ、日本は自国の経済水域には入らせてくれません、もし日本の人々がもっと開放的で、ロシアの学者たちが水や魚、無脊椎動物のサンプルを採取するのを許してくれたなら、私たちは同水域の海洋生物たちの状態をもっと正確に認識できるはずです。なお最新の調査ですが、TINROの発表は、韓国人や沿海地方に住む人たちを安心させるはずです。なぜならタラとマダラのサンプルから検出された放射線物質の含有量は、韓国の衛生規範が定める許容レベルの100分の1より低い、1パーセント弱だったからです。」
ラコフ氏によると、放射線のみが海洋生物を脅かす最も恐ろしい要因ではないという。あらゆる水利施設の建設の方が、岸からそれほど遠くない海域に生息する漁業の対象となる魚たちに否定的な影響を与えるという。水利施設の建設は、まず海底の蓄積物を破壊し、汚染物質を除去して水をきれいにし、魚類などの餌となっているプランクトンを殺してしまうのだ。